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鼠径ヘルニアの治療と仕事の両立

鼠径ヘルニアの治療と仕事の両立
野村 良平 先生

独立行政法人労働者健康安全機構 東北労災病院 外科部長

野村 良平 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年06月28日です。

記事1『治療と仕事の両立を支援する東北労災病院の取り組み』では、東北労災病院が取り組んでいる両立支援について、その支援方法と取り組みをお伺いしました。

記事2では、消化器外科の代表的な病気である鼠径(そけい)()ヘルニアの治療と仕事の両立について、野村良平先生(東北労災病院ヘルニア外科副部長・内視鏡下手術センター副センター長・治療就労両立支援センター両立支援部長)にお話を伺います。

鼠径()ヘルニアとは、いわゆる「脱腸」であり、足の付け根(鼠径部)の筋膜が薄い部分から、腸管など内臓の一部が飛び出してしまう病気を指します。この病気には、鼠径部に膨らみができ、不快感や違和感を生じる、あるいは痛みを伴うという特徴があります。

症状の初期は、膨らんだ部分を指で押すと引っ込むことが多いですが、放置してしまうと腸が周囲の筋肉に締めつけられ、押しても戻らない状態になることがあります。鼠径部の膨らみはまれに痛みを伴うこともあります。なお、大腸や膀胱(ぼうこう)など、どの部分が飛び出すかによって、現れる症状は異なります。

成人の鼠径ヘルニアを治すには、現在の医療では手術以外に治療方法がありません(2019年5月時点)。当院では病気の特性を判断し、患者さんへの十分なご説明と同意のうえで手術を行っています。手術方法は以下の2種類です。

  • 腹腔鏡下手術

お腹に3か所の小さな穴を開け、そのうちひとつの穴から、細い管の先端にカメラがついた腹腔鏡という器具を入れてお腹の中を映します。映された映像をモニターで確認しながら、残りのふたつの穴から入れた手術器具を操作し、患部を治療していきます。腸管が飛び出し、穴があいた鼠径部の腹壁には、補強用のメッシュをあてがいます。

腹腔鏡下手術は映像を見ながら行うため、症状の出ていない小さなヘルニアの見落としが少ないという特徴があります。また、お腹の傷跡が目立ちにくいうえに、術後は1泊の入院で退院することが可能です。

  • 鼠径部切開法

鼠径部切開は、開腹し、鼠径部の皮膚を切開してヘルニア(のう)*を処理する手術法です。通常、施術中はメッシュをあてがい補強しますが、当院では若年者や妊娠を考えている女性患者さんにはメッシュを使わない鼠径部切開法(Marcy法など)を第一選択としています。メッシュを使用する方法は日帰りも可能であり、使用しない場合は2泊3日から3泊4日程度の入院後に退院いただけます。

*ヘルニア(のう)・・・腹部の筋膜の一部が弱くなることで、腹膜が筋膜を押し上げて、臓器が脱出してしまう部分をヘルニア嚢という。「嚢」とは「袋」を意味する

腹腔鏡下手術と従来からある鼠径部切開手術(鼠径部切開法)のどちらを行うかは、患者さんの症状によるため、その都度判断をしていますが、腹腔鏡下手術は、一般的に傷が小さい・痛みが少ない・回復が早いといったメリットがあるため、当院でも多くの患者さんに行っています。

また、私が担当したなかでの私見ですが、腹腔鏡下手術を選ばれる患者さんは、働いている方やご家族の介護、ペットのお世話などのために、1日も早い帰宅をご希望される方が多い印象を受けます。しかし、鼠径部切開手術も、腹腔鏡下手術と同等のレベルで行っているため、どうぞ安心して手術にお臨みください。

鼠径ヘルニアは両立支援の観点からいうと、比較的早く仕事に復帰することができ、手術後の検査も大きな負担にならない病気です。仕事によっては通院や入院をできるだけ短期間にしたいという患者さんもいらっしゃいますので、手術日程を調節し、仕事への影響を最小限にできるよう、患者さんと話し合いを行っています。

野村良平先生

病気と診断され、治療やご自分の将来が不安になるときこそ、大事な決断はすぐにしないように心がけましょう。「職場に迷惑がかかる」「仕事への自信がなくなった」と少しでも感じたら、当院の医療スタッフにご相談ください。

「両立支援」というサポートを通じて、病気と共にあなたがあなたらしく生きていくことができるよう、精一杯お手伝いいたします。

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    野村 良平 先生

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