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腰部脊柱管狭窄症の治療――手術が必要なケースや実際の手術方法について解説

腰部脊柱管狭窄症の治療――手術が必要なケースや実際の手術方法について解説
青野 博之 先生

おおさかグローバル整形外科病院 脊椎外科

青野 博之 先生

目次
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腰部脊柱管狭窄症は放っておくと進行する可能性のある病気であり、日常生活に支障をきたすほどの症状がある場合には手術が検討されます。脊椎(背骨)の手術は「怖い」というイメージが先行しがちですが、近年では低侵襲(体への負担が少ない)な術式が複数開発されています。実際、おおさかグローバル整形外科病院では、入院期間は長くても2週間ほど、基本的に術後は翌日から歩けるといいます。今回は、同院 脊椎外科 青野 博之(あおの ひろゆき)先生に、手術が必要なケースや、腰部脊柱管狭窄症の手術方法、そして同院が注力している“低侵襲手術”についてお話を伺いました。

下半身の麻痺や膀胱直腸障害が現れているケースでは手術が必要ですが、それ以外の場合は、症状やご希望を踏まえて決定していきます。また、同じ症状であっても、その方の活動量によって困り事は変わってきますので、患者さんの生活様式も考慮のうえ判断をします。たとえば、「10分間歩き続けられない」という症状があったとしても、人によって手術の適応は異なります。50歳の男性の方で営業職に就いている場合、歩き続けられない状態では仕事に支障をきたしてしまいますので、手術をおすすめします。一方、85歳の女性の方で自宅の目の前にスーパーがあり、「痛みはあるけれど、生活をするのに困ってはいない」というようであれば、手術はせず様子を見ても問題ないと考えます。

いずれにしても好んで手術を受ける方はいないわけですから、「手術を受けてでも痛みを取りたい」と思うほど困っている症状があるのであれば、選択肢の1つとして検討するのがよいでしょう。

腰部脊柱管狭窄症は、脊柱管が加齢によって狭くなることが原因で発症します。狭くなった脊柱管が自然に広くなることは基本的にないため、強い症状が現れている場合には手術をして圧迫の原因を取り除きます。手術方法には、除圧術と固定術の2つの術式があり、どちらが適しているかは病状によって異なります。                                                                            

除圧術とは、神経の圧迫を取り除くための手術です。アプローチの方法については、主に直視下で行う従来のオープン法と、内視鏡を使う方法があります。

内視鏡を使った手術は、さらにMEL(内視鏡下腰椎椎弓切除術)という方法と、FEL(完全内視鏡下腰椎椎弓切除術)という方法があり、それぞれは使用する内視鏡径が異なります。なお、FELは傷口が小さい分、体への負担が抑えられるメリットがあるものの、複数の椎間(骨と骨の間)で狭窄が起きている場合には適応とならない場合があります。

固定術とは、神経の圧迫を取り除いたのち、患者さん自身の骨(自家骨)や人工骨を移植し、さらに腰椎をスクリュー(金属のねじ)などで固定する手術です。腰椎変性すべり症を併発している場合など、腰椎の不安定性がある患者さんは基本的にこの固定術が必要となります。

もともと脊椎の固定術は侵襲性が高い治療とされていましたが、近年では技術が発展し、より低侵襲な術式が複数開発されています。腰部脊柱管狭窄症の固定術として行われている術式をいくつか以下で簡単に説明します。

後方腰椎椎体間固定術(PLIF・TLIF)

PLIFとTLIFは、それぞれ腰椎の後方からアプローチする手術方法です。両側の椎体(背骨を構成する円柱状の骨)を切除してケージ(骨移植材料を入れるかための医療器具)を入れる方法がPLIF、対して椎体の片側のみを切除して治療を行う方法がTLIFです。

固定術はもともとPLIFが行われてきましたが、低侵襲化を図る目的でTLIFが開発されました。

低侵襲脊椎側方固定術(XLIF ・OLIF)

XLIFとOLIFという方法もあり、これらは側腹部からアプローチする方法です。XLIFもOLIFも間接除圧といって脊髄(せきずい)神経を直接触ることなく圧迫を解除できる点がメリットです。手術は実施基準を満たす施設でしか行えないですし、また適応となる症例が限られたりする側面はありますが、小さな傷口で済む分、出血が少なく、また感染などの合併症の軽減が期待できる術式とされています。

上記は一部の術式であり、これら以外にもいくつかの方法があります。手術方法については患者さんの病状なども踏まえて適した方法を検討していきます。

前項で説明したとおり、腰部脊柱管狭窄症の手術には数多くの術式があり、また術者によって得意とする術式も異なります。当院ではXLIFやOLIFもご提案可能な環境が整っていますが、私自身は従来から行われてきたPLIFを得意としています。

脊椎の手術は急速に発展しており、新たな術式が次々と開発されてきましたが、大切なのは “患者さんへできるだけ負担の少ない手術を提供する”ことです。どんなに小さい傷口であっても手術時間が4時間も5時間もかかるのであれば、負担が少ないとは言えませんし、逆もまた然りです。小さい傷口かつ短時間で確実に手術を行うことが重要なわけですから、侵襲性が高いとされてきたPLIFであってもこれらをかなえられれば、十分に低侵襲な手術が提供できると考えます。この考えを根底に、私自身はこれまで従来の手術をいかに低侵襲で行うかをモットーに研鑽を積んできました。それゆえ、手術時間や出血量に関しては平均よりも早く少なくできると自負しています。

腰部脊柱管狭窄症に対する固定術は侵襲性の軽減のみならず、当然ながら治療成績の向上にも努めなくてはなりません。このために欠かせないことの1つが“骨癒合(骨がくっつくこと)率の上昇と、その期間の短縮”です。先述のとおり、固定術では骨移植材料を移植する必要がありますが、適切に処置を行わないと療養期間が長くなるばかりでなく、場合によっては再手術が必要になるケースもあります。

このような事態を回避し、早期回復・よりよい予後をかなえるため、骨移植についてもさまざまな工夫を行っています。骨移植といってもその方法は複数あり、私が行う手術では基本的に局所骨(除圧の際に切除した骨)を使用します。一般的に、局所骨は採取できる骨の量に限界があるとされていますが、採取方法を工夫することで十分な量を担保することが可能です。PLIFは両側の椎体を切除する術式ですので、両側にきっちりと十分な骨を詰めることで、骨癒合率の上昇、ひいてはよりよい予後にも貢献できると考えています。

当院で腰部脊柱管狭窄症の手術を受ける場合、手術の前日に入院をしていただいています。術後は、基本的に翌日から歩行が可能です。基礎疾患がある方や、もともと車椅子で生活をされていた方などは入院期間がやや長くなる傾向があるものの、おおむね術後10日~2週間前後で退院されています。

繰り返しになりますが、狭くなった脊柱管が自然と広くなることはないため、「痛くて歩けない」「下半身がしびれている」などの症状がある場合は、一度整形外科を受診いただき、しっかりと検査を受けていただきたいと思います。背骨の手術=大がかりで怖いものというイメージがある方も多いと思いますが、近年では低侵襲な術式が複数開発されていますので、困っているのであればいたずらに我慢せず、選択肢の1つとして手術も検討してみていただきたいと思います。

「どの術式がよいのか分からない」「固定術は受けたくない」という方もいらっしゃるでしょう。お伝えしたとおり、脊椎の手術は術者によって方法などが異なるため、どの術式がよいのか一概に言うことはできませんが、少しでも手術に疑問があるようであれば、セカンドオピニオンを得ることも1つの方法です。複数の医師と話してみて、ご自身が一番納得できる治療を選んでいただきたいと思います。当院では、それぞれの医師がこれまでに培った経験を生かし、よりよい治療を受けていただけるよう努めています。治療について気になることや不安なことがある方は遠慮なくご相談ください。

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