概要
アキレス腱炎とは、過度なスポーツによる負荷などが原因でアキレス腱に炎症が生じる病気のことです。アキレス腱は踵の骨とふくらはぎの筋肉をつなぐ腱であり、アキレス腱炎はランナーによくみられる病気とされています。発症すると運動時にアキレス腱の周囲(踵の上周囲)に痛みを感じるようになりますが、安静にしたりストレッチをしたりすることで自然に改善していくことがほとんどです。しかし、繰り返しアキレス腱に負担がかかるスポーツを行うことで炎症が強くなると安静時にも痛みを感じるようになり、日常生活に支障が出るようになるケースも少なくありません。
また、アキレス腱炎の中には単に炎症が生じるだけでなく、アキレス腱周囲に細い血管や神経が新しく作られていくタイプのものもあります。このタイプのアキレス腱炎は安静にしていても改善しないことが多く、新たに作られた異常な血管を塞栓させるためにカテーテル治療が必要となることもあります。
原因
アキレス腱炎は、アキレス腱に負担がかかるランニングなどのスポーツを繰り返すことで過度な負担がかかり、炎症が引き起こされる病気です。
アキレス腱は踵の骨とふくらはぎの筋肉をつなぐ腱で、ランニングなどのようにふくらはぎを上げたり下げたりする動作を繰り返すと、負担がかかり炎症を引き起こすと考えられています。ランナーによくみられる病気ですが、テニスやバスケットボールなどのスポーツをする方が発症するケースもあります。
なお、アキレス腱炎は年齢を重ねるごとに発症しやすくなることが知られており、肥満、扁平足、高血圧などがあるとより発症しやすいと考えられています。
症状
アキレス腱炎を発症すると、踵の後ろやふくらはぎの下部周囲に軽い痛みを感じるようになります。軽度な場合は安静時に痛みを感じることは少なく、運動を開始すると痛みが生じます。痛みを感じていないときでもアキレス腱を押すと痛みが引き起こされるのも特徴です。起床時を中心にアキレス腱周囲の“こわばり”などを感じることもあり、活動を始めると徐々に改善していくこともあります。
一方、重症化すると安静にしていてもアキレス腱周囲に痛みが続き、腫れや熱感を伴うようになります。このような状態になると通常の歩行をしただけでも痛みが強くなり、日常生活に支障をきたすようになることも少なくありません。
検査・診断
アキレス腱炎はアキレス腱を押すと痛みが誘発されるという特徴があるため、日頃の症状やこのような身体所見から診断を下すことが可能です。そのため、特別な検査が必要ないケースがほとんどです。
しかし、炎症の程度やアキレス腱周囲に異常な血管が作られる難治性アキレス腱炎、さらにアキレス腱炎に似た症状を引き起こす別の病気の鑑別のために、MRIなどの画像検査を行うことがあります。
治療
アキレス腱炎の多くは、原因となるスポーツを中断してアキレス腱に負担をかけないように安静にすることで徐々に改善していきます。一方、痛みが強い場合は鎮痛剤が使用されることもあり、アキレス腱への負担を軽減するための太もものストレッチや筋力強化も症状改善に効果的とされています。
アキレス腱炎はこのような対症療法を行うことで約9割は改善していくとされていますが、対症療法のみでは改善しないケースもあります。このようなケースではアキレス腱の周囲に細い血管や神経が増殖していくことが知られており、最近では増殖した異常な血管を塞栓するための“運動器カテーテル治療”なども行われるようになってきています。
応急処置
ランニング中などにアキレス腱周囲に痛みを感じた場合は無理をせずに運動を中断し、患部を安静にすることが大切です。また、痛みが強いときは、患部を冷やす・弾性包帯やサポーターなどで圧迫する・足をやや高く挙上させるといったいわゆる“RICE処置”で軽減することができます。
予防
アキレス腱炎を予防するには、ランニングなどのスポーツを行うときには無理をせずに少しずつ体を慣らしていくことが大切です。また、無理な運動は控え、痛みを感じたときは運動を中断して安静を維持しましょう。
さらに、アキレス腱に負担がかかりやすいスポーツを行うときは底のクッション性が高い靴を選び、運動前にはふくらはぎや太もものストレッチをすることも発症予防につながります。
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