目的
アドバンス・ケア・プランニングは人生の最終段階において、患者本人の意思を尊重した医療・ケアを行えるようにするために実施されます。たとえば命に関わる病気やけがにおいては延命措置も重要な選択肢の1つですが、Quality of Life (QOL)やQuality of Death(QOD)の視点から、患者本人の人生観や価値観によっては延命措置を差し控えることも考える必要があります。
QOLは一般的に“生活の質”と訳されますが、終末期では“人生の質”とも考えることができます。QODは“死の質”“死へ向かう医療・ケアの質”“よい(よき)死”とされます。このような命に関わる慎重な判断を行うにあたって、アドバンス・ケア・プランニングで患者本人と話し合って得た情報は非常に大切です。
実際に延命措置が必要な状態で、その開始・中止・差し控えを検討する場合は以下のような手続きを踏むことが一般的です。
延命措置の開始・中止・差し控えに関する主な手続き
本人の意思が確認できる場合
患者本人の意思が確認できる状態の場合、医療従事者から本人に対して十分な説明を行ったうえで本人の意見や家族の考えを話し合いで確認し、医療・ケアの方針を決定します。ただし、患者の気持ちは時間の経過や病状によっても変化するため、繰り返し話し合いを行って、その記録を本人と共有しながら方針を軌道修正していくことも大切です。
なお、話し合いには家族も一緒であることが望ましいとされていますが、難しい場合には本人の希望を尊重したうえで、医師や医療従事者などとの話し合い後に家族へ決定事項を伝える場合もあります。
本人の意思が確認できない場合
患者本人の意思が確認できない場合であっても、事前に本人が作成した文書(事前指示書)などが存在し、本人の意思表示があった場合には、それを踏まえて医療・ケアの方針を決めていきます。
また、アドバンス・ケア・プランニングが事前に行われており、家族や医療従事者が患者本人の意思を推定できる場合には、推定される意思をもとに方針を決定し、家族の承諾のもと医療・ケアを実施します。いずれの場合でも、方針の決定には十分な慎重さが欠かせません。
ただし、本人の意思が家族や医療従事者にも推定できず、家族間でも意見がまとまらない場合、あるいは家族がいない場合などには、医療従事者が医療・ケアの方針を判断することもあります。このとき家族がいる場合には、その判断に対して家族の了解を得る必要があります。
なかなか方針が決まらない場合には、さまざまな専門家のアドバイスなどを受けながら、医療従事者と家族との間で、患者本人にとって何が最善か、そのためにはどうしていくのがよいのかを話し合い、合意できる内容を模索していきます。本人の意思が確認できない場合でも話し合いの記録は残しておくことが大切です。
医師の方へ
「アドバンス・ケア・プランニング」を登録すると、新着の情報をお知らせします