しあんちゅうどく

シアン中毒

最終更新日:
2020年08月31日
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2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

シアン中毒とは、シアン化物を口から摂取したり、シアン化水素ガスを吸い込んだりすることで、細胞呼吸が妨げられ、生体のさまざまな機能が障害されることを指します。

シアン化物とは、シアン化物イオン(CN-)をアニオン(陰イオン)として持つ塩の総称で、シアン化カリウム(青酸カリウム、KCN)やシアン化ナトリム(青酸ナトリム、NaCN)などが知られています。シアン化水素ガスとは、シアン化物と同様の毒性を持つ化学物質です。

シアン化物イオンは、細胞内ミトコンドリアのなかのチトクロームオキシダーゼという酵素と結合し、細胞呼吸を阻害します。その結果、酸素に反応する性質を持つ中枢神経系や呼吸器系の症状が早い段階で現れます。具体的な初期症状としては、頭痛めまい、呼吸数の増加(頻呼吸)などが挙げられます。また、無酸素状態となった組織では乳酸が産生されるため、血液のpHが酸性に傾く代謝性アシドーシスが生じます。

シアン中毒の症状は進行速度が早く、死に至る可能性もあるため、速やかな治療が必要とされます。
 

原因

最も多くみられる原因は、シアン化物の摂取とシアン化水素の吸入といわれています。このほか、頻度は少ないものの、高濃度のシアン化物が溶け込んだ液体に浸り、皮膚から吸収されたシアン化物により、シアン中毒が生じた例も報告されています。

また、火災時に生じた煙を吸い込むことが、シアン中毒の原因となることもあります。これは、ビニールやポリウレタン、絹などの窒素含有ポリマーが燃える際に生じる煙のなかに、大量のシアンガスが含まれるためです。ほかには、合成繊維や合成樹脂の原料であるアセトニトリルなどのニトリルや、青酸配糖体を含む植物が生成したシアン化物により、シアン中毒が起こることもあるといわれています。
 

症状

発症早期には、中枢神経系と循環器系の症状が現れるとされています。

初期症状

  • 紅潮
  • 頻脈
  • 頭痛
  • 頻呼吸:呼吸数が増加すること。
  • めまい など

続いて現れる症状

  • 興奮
  • 混迷:中等度の意識障害。外から強い刺激を与えると反応を示すことがある。
  • 昏睡:重度の意識障害。外から刺激を与えても反応を示さない。
  • 無呼吸
  • 全身性痙攣
  • 徐脈:脈が遅くなること
  • 血圧低下
  • 肺水腫(はいすいしゅ):肺胞のなかに毛細血管から滲み出した液体成分が貯まり、酸素の取り込みが障害される病気。呼吸困難などの症状を呈する。 など

また、重症例の場合、以下の症状が認められることもあると報告されています。

  • 固定散瞳:瞳孔が拡大すること。
  • 呼吸機能や循環機能の悪化を伴う意識障害
  • 昏睡
  • 痙攣

皮膚を介してシアン化物が吸収された場合には、全身性の症状を起こすことや、熱傷を生じることがあります。
 

検査・診断

シアン中毒の検査は、シアン化水素と反応して発色する市販の簡易検出キットを用いて行われます。

治療

症状の進行が早いため、速やかな救命処置と対症療法を優先して行います。
 

救急処置

  • 気道確保
  • 100%酸素投与
  • 静脈路確保:輸液のためのルートを確保する処置。
  • 輸液 など

対症療法

  • 代謝性アシドーシスの補正 など

代謝性アシドーシスが完全に認められなくなるまでは、集中治療室での入院となります。

解毒剤の投与について

バイタルサインが悪化していなければ、必ずしも解毒剤を投与する必要はないとされています。
 

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