原因
ペルオキシソーム病は、細胞内に存在する「ペルオキシソーム」と呼ばれる器官に異常が機能障害を起こすことから発症する病気です。ペルオキシソームとは人の生命活動になくてはならない細胞器官のひとつを指します。ペルオキシソームのはたらきには、脂肪酸の代謝やアミノ酸の合成、コレステロールの合成などがあり、幅広く代謝活動を行っています。
ペルオキシソームが正常に形成されるには、第一に細胞質内に存在する(すなわちペルオキシソームの外に存在する)タンパク質が、適切にペルオキシソームの中に運び込まれる必要があります。
ペルオキシソームの表面には「PEXタンパク質」と呼ばれるタンパク質が存在しており、細胞質内のタンパク質が正確に運び込まれるようにするための「住所」のようなはたらきをしています。 PEXタンパク質を介してタンパク質が運び込まれてから初めて、ペルオキシソームは正常な成熟や分裂を行うことができるようになり、その結果として様々な代謝活動を実行できるようになります。
しかし、このPEXタンパク質に関連した異常があるとペルオキシソームの形成・成熟に異常をきたすようになり、ペルオキシソーム病が発症します。このように発症するペルオキシソーム病はペルオキシソームの形成ができない状態であるため、「ペルオキシソーム形成異常症」と呼びます。
そのほか、そもそもペルオキシソームに運び込まれるべきタンパク質が細胞内に認められないこともあります。この場合であっても正常なペルオキシソームが構成されないことになってしまい、ペルオキシソーム病が発症します。このタイプのペルオキシソーム病を「単独欠損症」と呼びます。
ペルオキーム形成異常症と単独欠損症には、さらに原因となる遺伝子や症状に応じて病気が分類されています。ペルオキーム形成異常症で最も重篤な病態を示す「ツェルベーガー症候群」は、PEXタンパク質を産生するPEX遺伝子のなかでも、「PEX1遺伝子」による異常が原因であることがもっとも多いです。ペルオキーム病のなかでももっとも頻度の高い副腎白質ジストロフィーは単独欠損症に含まれますが、ABCD1遺伝子の異常にともない発症すると考えられています。
ペルオキシソーム病は遺伝子の突然変異で発症することがありますが、遺伝性疾患として発症することもあり、「常染色体劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとることが多いです。この遺伝形式では両親は保因者であり、理論上25%の確率でお子さんが病気を発症することになります。ただし、副腎白質ジストロフィーは「X連鎖性劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとります。
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