ぺるおきしそーむびょう

ペルオキシソーム病

目次

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概要

ペルオキシソーム病とは、「ペルオキシソーム」と呼ばれる細胞器官の機能障害により様々な不調をきたすようになる疾患を指します。ペルオキシソームとは人の生命活動に必須の器官であり、この部位が障害を受けるペルオキシソーム病では中枢神経系を中心として全身各部位に様々な不調をきたすようになります。

もっとも重症度の高い「ツェルベーガー症候群」を代表として、ペルオキシソーム病にはいくつかの疾患が含まれていますが、その多くは日本において難病指定を受けています。 重篤な症状を呈することもあるペルオキシソーム病ですが、確立した治療方法が存在していません。集学的な治療を行うにも関わらず乳幼児期に亡くなることもあるため、今後の治療方法の確立が期待される疾患です。

原因

ペルオキシソーム病は、細胞内に存在する「ペルオキシソーム」と呼ばれる器官に異常が機能障害を起こすことから発症する病気です。ペルオキシソームとは人の生命活動になくてはならない細胞器官のひとつを指します。ペルオキシソームのはたらきには、脂肪酸の代謝やアミノ酸の合成、コレステロールの合成などがあり、幅広く代謝活動を行っています。

ペルオキシソームが正常に形成されるには、第一に細胞質内に存在する(すなわちペルオキシソームの外に存在する)タンパク質が、適切にペルオキシソームの中に運び込まれる必要があります。

ペルオキシソームの表面には「PEXタンパク質」と呼ばれるタンパク質が存在しており、細胞質内のタンパク質が正確に運び込まれるようにするための「住所」のようなはたらきをしています。 PEXタンパク質を介してタンパク質が運び込まれてから初めて、ペルオキシソームは正常な成熟や分裂を行うことができるようになり、その結果として様々な代謝活動を実行できるようになります。

しかし、このPEXタンパク質に関連した異常があるとペルオキシソームの形成・成熟に異常をきたすようになり、ペルオキシソーム病が発症します。このように発症するペルオキシソーム病はペルオキシソームの形成ができない状態であるため、「ペルオキシソーム形成異常症」と呼びます。

そのほか、そもそもペルオキシソームに運び込まれるべきタンパク質が細胞内に認められないこともあります。この場合であっても正常なペルオキシソームが構成されないことになってしまい、ペルオキシソーム病が発症します。このタイプのペルオキシソーム病を「単独欠損症」と呼びます。

ペルオキーム形成異常症と単独欠損症には、さらに原因となる遺伝子や症状に応じて病気が分類されています。ペルオキーム形成異常症で最も重篤な病態を示す「ツェルベーガー症候群」は、PEXタンパク質を産生するPEX遺伝子のなかでも、「PEX1遺伝子」による異常が原因であることがもっとも多いです。ペルオキーム病のなかでももっとも頻度の高い副腎白質ジストロフィーは単独欠損症に含まれますが、ABCD1遺伝子の異常にともない発症すると考えられています。

ペルオキシソーム病は遺伝子の突然変異で発症することがありますが、遺伝性疾患として発症することもあり、「常染色体劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとることが多いです。この遺伝形式では両親は保因者であり、理論上25%の確率でお子さんが病気を発症することになります。ただし、副腎白質ジストロフィーは「X連鎖性劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとります。

症状

ペルオキシソーム病の症状は、障害を受ける遺伝子に応じて症状はさまざまであり、神経系を中心とした全身に症状が出現することになります。 最重症のツェルウェガー症候群では出生後早期の段階から症状が出現します。

具体的な症状としては、筋力が弱い、哺乳障害、けいれん、発達の遅れ、けいれん、肝臓の腫れなどを来たし、多くは乳児期に亡くなられます。 もっとも頻度の多い副腎白質ジストロフィーでは、年齢を経てから異常が指摘されることもあります。学業の遅れや学校での落ち着きのなさから発症することがあり、徐々に視力聴力の低下、歩行障害をきたすようになります。

成人で発症するタイプの副腎白質ジストロフィーも知られており、歩行障害、知覚障害、尿失禁、インポテンツなどをきたします。小児のように知能低下を来すこともあれば、知能低下をきたさないこともあります。

検査・診断

ペルオキシソームでは「極長鎖脂肪酸」と呼ばれるタイプの脂肪酸代謝を行っており、ペルオキシソーム病ではこの脂肪酸がうまく処理をできなくなっています。極長鎖脂肪酸の代謝異常が存在する結果として、体内に過剰な極長鎖脂肪酸が蓄積することになります。

そのため、この蓄積した極長鎖脂肪酸を血液検査にて確認することから病気を疑うことになります。 ペルオキシソーム病の一部では脳の形成や構造に異常を認めることもあります。このことを確認するために頭部CTやMRIが行われることもあります。

さらに、患者さんの皮膚を用いて、ペルオキシソームに存在すべき酵素が存在しているかどうかを「免疫染色」と呼ばれる方法を用いて確認することもあります。ペルオキシソーム病では、ペルオキシソームの形成が障害を受けていることから、正常な酵素が減っていることが確認されます。

また、ペルオキシソーム病は原因となる遺伝子異常が知られているため、遺伝子検査遺伝子異常を検索することもされます。

治療

ペルオキシソーム病は、現在のところ根治となりうる治療方法は存在していません。したがって、けいれんをきたす場合には抗けいれん薬を使用するなどの、症状に合わせて対応する支持療法が中心となります。

一部のペルオキシソーム病では、肝移植や食事療法、腎移植などが行われることもあります。たとえば、ペルオキーム形成異常症のひとつである乳児型レフサム病に対して、肝移植を行われたという報告例もあります。

また副腎白質ジストロフィーでは、造血幹細胞移植や、Lorenzo’s oilと呼ばれる油を服用することがあります。 ペルオキシソーム病の治療方法は、まだまだ充分とは言える状況ではなく、今後治療方法がさらに進歩することが期待される分野です。