概要
子宮は女性の下腹部に、骨盤に囲まれて存在しています。子宮は、妊娠の成立、胎児の発育、出産に際して重要であり、周期的な月経にも関連しています。
子宮は、大まかに下記の4つの部位に分けられています。
- 子宮底部:子宮のてっぺん部分
- 子宮体部:子宮の本体部分
- 子宮頸部(子宮頸管):子宮の下部
- 子宮腟部:子宮と腟の移行部分
子宮腟部びらんとは、子宮腟部に存在する、もしくは発生したびらんのことです。子宮腟部びらんには、真性びらんと偽性びらんの2種類があります。
真性びらん
異常な状態としてのびらんで、子宮腟部の皮膚の表面が炎症等によって壊されてしまった状態です。
偽性びらん
病的ではなく、生理的なものを指します。思春期から性成熟期の女性にみられ、女性ホルモンの影響によって子宮腟部が赤く見えている状態です。
子宮腟部びらんは、痛みや出血などの自覚症状があまりないケースが多く、多くの場合きちんと診断されていないといわれています。月経がある年代の女性の8割程度の人が、この子宮腟部びらんを有しているとも考えられています。
原因
真性びらん
炎症による表層細胞の破壊が原因であるため、炎症を引き起こすなんらかの要因が考えられます。この要因としては、感染性微生物(細菌やウイルスなど)、物理的刺激(性交や異物など)、化学的刺激(薬剤や精液など)などがあります。
偽性びらん
生理的なメカニズムによるものです。思春期から性成熟期の女性では、体内の女性ホルモンの影響によって、扁平円柱上皮境界(SCJ)という部分が子宮頸管内から子宮腟部側へ露出することで、炎症がなくてもびらんのように赤く見えてしまうのです。ただし、なんらかの原因が加わることで真性びらんが発生することもあり、注意が必要です。
症状
真性びらん
子宮腟部がもろい状態となっているため、おりものの増加や、性交時の不正出血などの症状がみられる場合があります。また、感染から身を守るバリア機能が弱っているために、性交などにより性感染症を発症するリスクが高くなるとも考えられます。
偽性びらん
炎症が起こっているわけではありませんが、人によってはおりものの増加や性交時の不正出血などが起きやすくなっているケースもあります。これは、赤く見えるびらん面が感染や刺激に対して弱くなっているためです。
検査・診断
子宮腟部びらんを診断するために、特別な検査をする必要はありません。真性びらん、偽性びらんのどちらであっても、通常は内診による診察で子宮腟部を注意深く観察すれば判断ができます。
ただし、なんらかの症状がある場合には、おりものを用いた細菌検査や、子宮頸がん検査を行う場合があります。症状としては、おりものの増加や変化、不正出血などが挙げられます。
治療
病的な症状を自覚していなければ、特に治療の必要はありません。
真性びらん
腟内を洗浄して、抗生物質で治療することにより炎症を治すことが可能です。
偽性びらん
一般的には治療を行うことはまれであり、症状がなければ治療はいらないと考えて構いません。
びらんそのものを治療する場合には、電気凝固法やレーザー治療法などでびらん部分を焼いたり切除したりすることで、新たな表層細胞が作られるのを待つ方法もあります。
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