治療
有機リン剤を飲んだ場合や、皮膚に付着した場合は、その量にかかわらず病院を受診しましょう。診察時には、有機リン剤の剤形(乳剤、粒剤)などを医師に伝えることも、適切な治療を選択するための補助になります。
病院では、以下のような処置と拮抗薬の投与、解毒剤の投与が行われます。
催吐
有機リン剤を服用してしまった場合には、胃の内容物を吐かせる処置が行われます。ただし、意識障害やけいれんを起こしているときなど、吐かせてはいけない場合もあります。
胃洗浄
必要に応じて、生理食塩水などを使用した胃洗浄が行われます。胃洗浄の後、毒物と結合する吸着剤や排泄を促す塩化下剤が投与されます。
腸洗浄
毒性が強い有機リン剤を飲んだ場合は、チューブを用いた小腸の洗浄が行われることがあります。
拮抗薬の投与
有機リン剤中毒を起こすと、アセチルコリンの作用(ムスカリン様作用)により、縮瞳や心拍数の低下などの症状が現れることがあります。このムスカリン様作用に対する拮抗薬(抗コリン作用を持つ薬剤)を静脈内に注射し、脈拍や瞳孔の状態の改善を目指します。
症状をみながら徐々に投与量を減らして中止しますが、治療中止後に再び症状が現れることもあるため、一定時間以上、経過観察となります。
解毒剤の投与
有機リン剤中毒解毒剤を静脈内に注射します。解毒剤の投与は服毒後36~48時間以内、特に24時間以内が望ましいとされています。
有機リン剤は、医療用の手袋を浸透して手指の皮膚から吸収されることがあります。また、胃洗浄により排出された有機リン剤を含む液体が揮発し、周囲の医療者に二次被害と考えられる症状がみられた事例もあります。
そのため、治療の際には、対応する医療者や病院内の患者さんに二次被害が及ばないよう、予防を徹底することが重要とされています。
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