概要
消化管異物とは、食べ物以外のもの(異物)が消化管の中に入ってしまった状態です。乳幼児や認知症のある高齢者の方にみられることが多いです。
消化管異物は下記のようなケースにおいてみられます。
- 食べ物だと勘違いして誤って飲み込んでしまった
- 魚の太い骨など、食べ物の一部だが消化ができないものを飲み込んでしまった
- 自分の歯などを誤って飲み込んでしまった
特殊なケースとして、肛門から直腸にかけて意図的に異物を入れてしまって取り出せなくなるケースもみられます(直腸異物)。
消化管異物の症状や治療は、どの位置に物が詰まっているかにより変わります。消化管異物は多くの場合、消化管を通って便と一緒に排出されます。しかし、ときに非常に危険な状態に陥ることがあるため、注意が必要です。
原因
消化管異物の原因は、認知機能が低下している場合と、そうでない場合に分けられます。
よくみられる異物は以下のものです。
- 乳幼児:おはじき、電池、ビー玉、鉄砲玉、お金
- 高齢者:抜けた自分の歯、歯のつめもの、薬の包装(PTP)
誤って飲み込まれてしまいやすいものには、魚の太い骨や食べ物に添えられた飾りが挙げられます。
症状
食道やのど、直腸に異物がある場合、まずは異物感や痛みが生じます。胃や小腸、大腸の中に異物がある場合は、異物感を生じることはなく、ほぼ無症状です。
以下のように、異物が危険な状態を引き起こすこともあります。
ボタン電池を飲み込んだ場合
接触している粘膜を損傷し、消化管が破れる(穿孔:せんこう)ことがあります。この場合、特に胃や十二指腸のような上部消化管では非常に激しい腹痛や吐き気、おう吐といった症状が現れます。
薬の包装、針、魚の太い骨などを飲み込んだ場合
粘膜を傷つけて穿孔を起こすことがあります。
小石のような異物を大量に飲み込んだ場合
食べ物の通り道が塞がってしてしまうため、腸閉塞のような腹痛、吐き気、おう吐といった症状がみられることもあります。そのほかにも、磁石を別々に飲み込んだ場合に危険な状態を引き起こすことがあります。
そのほかにも、磁石を別々に飲み込んだ場合に危険な状態を引き起こすことがあります。
検査・診断
患者さんからの病歴聴取と、異物感のある部位の診察、レントゲン写真撮影やCT撮影を行います。異物感がない場合、意識がはっきりしない場合などには、胸部や腹部のレントゲン写真や全身のCT撮影を行うこともあります。明らかに食道や直腸の辺りに異物があると疑われる場合は、内視鏡を用いて閉塞や粘膜の損傷を確認することもあります。
治療
消化管異物の治療の原則は、異物を取り出すことです。食道や直腸の異物であれば内視鏡で直接観察しながら異物を摘出することができる場合が多いです。胃の中の異物については、丸くて小さなものなどであれば消化管内を通過して便とともに排泄される可能性が高いです。そのため、レントゲン写真撮影により、異物の位置の移動を追跡するだけで十分なケースがほとんどです。
消化管の粘膜損傷を伴っていると考えられる場合などは、異物を摘出するために開腹手術を行うことがあります。
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