概要
無毛症とは、本来は生えるべき場所の毛が生まれつきない状態を指します。先天的な原因により発症する病気です。
同じように先天的な原因により毛が少ない状態を乏毛症といいますが、これは無毛症に類似した概念を含む言葉です。なお、同じく毛が少なくなる状態を表現する言葉として脱毛症があります。脱毛症は、一度は毛が生えてくるものの、その後、後天的な要因で失われる、ということから無毛症とは区別されます。
原因
生まれつきの遺伝子異常を原因として発症することがあります。いくつかの遺伝子が原因として関与することが知られています。たとえば、甲状腺ホルモンやビタミンDの働きにかかわる遺伝子であるhairless (HR)遺伝子における異常が、無毛症と関連しているといわれています。この遺伝子は、同時に毛の発育にも重要な役割を担っています。
この遺伝子に関連した無毛症は、常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとります。つまり、両親のいずれもが病気の保因者(病気の発症者ではありません)である場合に、そのお子さんが無毛症を発症する可能性があります。
また、無毛症は、毛以外の組織にも歯や爪などにも同時に異常がみられる疾患と関連して発症することもあります。そのほか、男性ホルモンの働きが異常を示し、思春期に生えるべき陰毛が正常に生えないことで生じる無毛症もあります。
症状
無毛症では、本来見られるべき部位に毛が完全ない状態となります。たとえば、生まれつき毛髪がみられないこともあります。また、一度は毛が生えた状態で産まれてきても、時間経過と共に毛が失われてしまうこともあります。
毛の失われる部分も毛髪のみであることもあれば、全身の体毛が失われることもあります。陰毛が生える時期に生えてこない、といったタイプの無毛症もあります。
そのほか、毛の生え方以外にも、歯の形や生え方に異常を示すこともあれば、爪の形状が異常を示すこともあります。また、精神発達に遅れがみられることもあります。実際にどのような経過をとるかは、原因によって大きく異なります。
検査・診断
無毛症は遺伝子の異常が原因となり生じる側面があるため、遺伝子を調べる検査が検討されます。毛の失われ方やそのほかの症状を加味しつつ、原因となりうるものを想定して検査が検討されます。
ただし、遺伝子を調べる検査は、どの施設でも行うことができる検査ではないため、経過を確認しながら、慎重に判断することになります。
治療
基本的にはかつらを使用するなどの対症療法が中心になります。毛以外の部分に症状が生じる外胚葉異形成症に関連している場合、全身疾患に対しての対処も考慮する必要が出てきます。
無毛症をはじめ、毛に関する症状が現れる原因は不明な点も多く、診断方法・治療方法も充分確立しているとは言い難いです。そのため、今後さらなる研究分野の発展が期待されています。
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