だつもうしょう

脱毛症

最終更新日:
2024年10月29日
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2024/10/29
更新しました
2017/04/25
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概要

脱毛症とは、何らかの原因によって毛髪がたくさん抜けてしまう状態を指します。病気ではなく、症状の一種として解釈されます。

脱毛症は、大きく「円形脱毛症」、「男性型脱毛症(AGA)/女性型脱毛症」、「そのほかの脱毛症」に分けられます。このうち皮膚科を受診する患者の多くは円形脱毛症と男性型脱毛症です。

なお、日本人男性の約30%は男性型脱毛症を発症しているといわれ、年齢とともにその割合は高まります。

免疫や男性ホルモンの影響、何らかの病気、薬剤の副作用など、さまざまな原因により発症します。また、症状はいずれも毛髪が抜けることですが、毛髪の抜け方は原因や患者によって異なります。

治療は脱毛症の原因によって異なりますが、主に薬物療法が行われます。自家植毛やかつらを用いるという選択肢もあります。

原因

毛髪の成長には成長期(2~6年)、退行期(3週間)、休止期(2~3か月)の3つの周期があり、この一定のサイクル(毛周期)で発毛と脱毛を繰り返しています。休止期の毛髪は正常であれば1日に50~100本程度が抜けますが、さまざまな原因によって突然抜け毛が多くなることがあります。

脱毛はその原因により「円形脱毛症」、「男性型脱毛症/女性型脱毛症」、「そのほかの脱毛症」に大きく分けられます。

なお、精神的なストレスが原因で脱毛症になるといわれることもありますが、精神的ストレスだけで脱毛になるという十分な科学的根拠はありません。

円形脱毛症

円形脱毛症は、毛根部分に炎症が生じて破壊されることで起こります。

発症には免疫(リンパ球)が関係していると考えられています。リンパ球は本来細菌やウイルスなどの病原体を壊すはたらきをしていますが、何らかのきっかけによって病原体ではなく自分自身の正常な毛包(毛を生やす器官)の組織を壊してしまい、その結果として脱毛が生じます。

また、円形脱毛症は血縁者のなかで複数人が発症することも珍しくなく、発症しやすい遺伝的な体質が要因と考えられています。そのほか、アトピー性皮膚炎関節リウマチ、甲状腺の病気とも関連しているといわれています。

男性型脱毛症/女性型脱毛症

男性型脱毛症は、主に男性ホルモンであるジヒドロテストステロンが関係しています。

ジヒドロテストステロンの影響で毛の生え変わりが早くなる(成長期が短くなる)ために、毛包が十分に育つ前に毛髪が繰り返し抜けてしまい、その結果として毛包が小さくなります。これに伴い、うぶ毛のような弱い毛髪となって脱毛します。また、発症には遺伝もある程度関係しているとされています。

女性型脱毛症は、男性型脱毛症とは異なり、原因が複雑で、女性ホルモンの変動などさまざまな要因が関与していると考えられています。ジヒドロテストステロンの影響については、男性型脱毛症ほど明確ではなく、十分に解明されていません。女性の場合、特に更年期に生じることが多いといわれています。

そのほかの脱毛症

毛周期における休止期は毛髪が伸びない時期で、毛髪が抜けやすく、正常であれば毎日50~100本程度抜けます。大きな手術や出産、過度のダイエット、高熱、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどウイルス感染症などが原因となって休止期の毛髪の割合が増え、一時的に頭部全体の脱毛量が増加することがあり、これを「急性休止期脱毛症」といいます。鉄欠乏性貧血亜鉛欠乏症などで「慢性休止期脱毛症」になることもあります。

また、脱毛症は細菌や真菌(カビ)などへの感染、脂漏性皮膚炎など頭皮の皮膚炎栄養不良、抗がん薬などによる薬物療法や放射線治療の副作用、抜毛癖などによっても起こります。まれな例として先天的に薄毛や縮毛がみられることもあります。

症状

脱毛症の種類によって毛髪の抜け方は異なります。

円形脱毛症

典型的な症状としては、硬貨のような円形の脱毛が頭に生じます。重症の場合には脱毛の範囲が徐々に大きくなったり、脱毛箇所が多数できたりすることもあります。さらに重症になると全ての毛髪が抜けてしまうこともあります。

また、円形脱毛症は頭だけでなく、眉毛やまつげ、髭、体毛など、体のどの部分にも起こる可能性があります。

病気などが関連している場合、脱毛以外に微熱や疲れやすさなどの症状がみられることもあります。

男性型脱毛症/女性型脱毛症

男性型脱毛症では、前頭部(おでこ)からM字型もしくは頭頂部(つむじ)から円形に脱毛し、これは次第に進行していきます。

女性型脱毛症では、前頭部の毛髪を残すようにして頭頂部から側頭部にかけて比較的広い範囲が脱毛します。

そのほかの脱毛症

急性休止期脱毛症では、1日に100本以上と多くの毛髪が抜けるようになりますが、頭全体の毛髪が急激に抜けてしまう場合もあります。

病気などによる脱毛症では、原因となる病気により脱毛の仕方が異なります。たとえば頭皮の炎症に伴う脱毛であれば炎症部位の毛髪が抜けますが、薬剤の副作用の場合には頭全体の毛髪が抜けることもあります。

検査・診断

脱毛症の診断は、主に視診や触診、抜毛テスト、抜け毛の観察、トリコスコピー検査、血液検査、組織検査によって行われます。

視診、触診

視診、触診では、脱毛の箇所や範囲、頭皮の状態などを確認します。

抜毛テスト、毛根の確認

抜毛テストは毛髪がどのくらい抜けやすいかや、毛周期別の毛包の割合を確認するために行われます。

毛根が炎症によって壊れている場合には円形脱毛症、傷つき先細りしている場合には薬剤による副作用など、ある程度原因を判別できるため、毛根を確認することも重要です。

トリコスコピー検査:トリコスコピーという拡大鏡で脱毛箇所などの病変を詳しく観察する検査。頭皮の状態である程度診断できる。

血液検査、組織検査

血液検査は脱毛の原因となる病気の有無を確かめるために行われます。

以上のような検査でも診断が難しい場合には組織検査が行われることがあります。

組織検査では脱毛箇所と正常部の皮膚組織をそれぞれ採取して顕微鏡で確認し、外見からでは判断できない細胞の変化を確認します。

治療

脱毛の原因によって治療内容は異なりますが、いずれも薬物療法が中心です。薬物療法の効果が乏しい場合や見た目が気になる場合には、自家植毛やかつらを用いるという選択肢もあります。

円形脱毛症

脱毛範囲が小さく1~2か所程度であれば自然に治癒する場合もありますが、炎症が強く進行している場合には炎症を止めるステロイド薬の塗り薬、局所注射による治療が行われます。

毛髪が全て抜けたり体毛も全て抜けたりする重症例では、局所免疫療法(人工的にかぶれを頭皮に起こして発毛を促す治療)も行われます。ステロイド薬の飲み薬で改善を図ることもあるほか、分子標的薬による治療が行われることもあります。

また、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患を合併している患者には抗ヒスタミン薬が有効な場合があるほか、紫外線療法や液体窒素療法などさまざまな治療法があります。

分子標的薬:タンパク質など、特定の標的とする分子のみに作用する薬剤。

男性型脱毛症/女性型脱毛症

男性型脱毛症の治療には、主に塗り薬による治療、飲み薬による治療、自家植毛があります。

塗り薬としては、発毛に重要な役割をもつ細胞を刺激して発毛を促す薬剤(ミノキシジル、アデノシン)が用いられます。

飲み薬としては、ジヒドロテストステロンが作られる仕組みを妨げる薬剤(フィナステリド、デュタステリド)が用いられます。

自家植毛は一種の手術で、ホルモンの影響を受けにくい後頭部の毛包を、脱毛が生じやすい前頭部や頭頂部に移植します。治療効果は高いですが、ほかの治療法より費用がかかります。

女性型脱毛症の治療には、ミノキシジルなどの塗り薬が用いられるほか、低出力の光やレーザーの照射による治療が行われることもあります。

男性型脱毛症、女性型脱毛症共に薬局で購入可能な塗り薬もありますが、医療機関を受診している場合は、医師の指導と許可の下使用するようにしましょう。

そのほかの脱毛症

大きな手術や出産、過度のダイエット、高熱など、身体的ストレスが原因となる休止期脱毛症は自然に治ることも多く一般的には治療を行いませんが、塗り薬としてミノキシジルが用いられることもあります。

病気が原因の場合にはその病気に対する治療を行います。

セルフケア

頭皮や毛髪の状態を良好に維持するため、適切な頭皮のケアや規則正しい生活習慣を心がけましょう。

毎日か1日おきによく洗髪する、疲れをためず睡眠不足を避ける、喫煙・アルコールを適量にする、バランスのよい食事を摂るなど、生活上の取り組みも大切です。

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