原因
毛髪の成長には成長期(2~6年)、退行期(3週間)、休止期(2~3か月)の3つの周期があり、この一定のサイクル(毛周期)で発毛と脱毛を繰り返しています。休止期の毛髪は正常であれば1日に50~100本程度が抜けますが、さまざまな原因によって突然抜け毛が多くなることがあります。
脱毛はその原因により「円形脱毛症」、「男性型脱毛症/女性型脱毛症」、「そのほかの脱毛症」に大きく分けられます。
なお、精神的なストレスが原因で脱毛症になるといわれることもありますが、精神的ストレスだけで脱毛になるという十分な科学的根拠はありません。
円形脱毛症
円形脱毛症は、毛根部分に炎症が生じて破壊されることで起こります。
発症には免疫(リンパ球)が関係していると考えられています。リンパ球は本来細菌やウイルスなどの病原体を壊すはたらきをしていますが、何らかのきっかけによって病原体ではなく自分自身の正常な毛包(毛を生やす器官)の組織を壊してしまい、その結果として脱毛が生じます。
また、円形脱毛症は血縁者のなかで複数人が発症することも珍しくなく、発症しやすい遺伝的な体質が要因と考えられています。そのほか、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、甲状腺の病気とも関連しているといわれています。
男性型脱毛症/女性型脱毛症
男性型脱毛症は、主に男性ホルモンであるジヒドロテストステロンが関係しています。
ジヒドロテストステロンの影響で毛の生え変わりが早くなる(成長期が短くなる)ために、毛包が十分に育つ前に毛髪が繰り返し抜けてしまい、その結果として毛包が小さくなります。これに伴い、うぶ毛のような弱い毛髪となって脱毛します。また、発症には遺伝もある程度関係しているとされています。
女性型脱毛症は、男性型脱毛症とは異なり、原因が複雑で、女性ホルモンの変動などさまざまな要因が関与していると考えられています。ジヒドロテストステロンの影響については、男性型脱毛症ほど明確ではなく、十分に解明されていません。女性の場合、特に更年期に生じることが多いといわれています。
そのほかの脱毛症
毛周期における休止期は毛髪が伸びない時期で、毛髪が抜けやすく、正常であれば毎日50~100本程度抜けます。大きな手術や出産、過度のダイエット、高熱、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどウイルス感染症などが原因となって休止期の毛髪の割合が増え、一時的に頭部全体の脱毛量が増加することがあり、これを「急性休止期脱毛症」といいます。鉄欠乏性貧血や亜鉛欠乏症などで「慢性休止期脱毛症」になることもあります。
また、脱毛症は細菌や真菌(カビ)などへの感染、脂漏性皮膚炎など頭皮の皮膚炎、栄養不良、抗がん薬などによる薬物療法や放射線治療の副作用、抜毛癖などによっても起こります。まれな例として先天的に薄毛や縮毛がみられることもあります。
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