概要
子宮内から母体外へと移行する新生児期は、呼吸や循環など、身体の様々な面において外界への適応が求められる時期と言えます。外界への適応過程の例の一つとして、生理的黄疸を挙げることができます。新生児期にある程度の黄疸を見ることは、どの赤ちゃんでも見られる自然現象であるため、このことを生理的黄疸と呼びます。また、新生児生理的黄疸と呼ばれることもあります。
黄疸を呈する赤ちゃんの中には、何かしらの病的な誘因が存在するために、異常な黄疸を呈することがあります。病的な黄疸を放置すると、脳性麻痺や難聴などといった重篤な神経系の合併症を呈することになります。したがって、生理的に見られる黄疸であるのか、病的な黄疸であるかを見極めることはとても重要であると言えます。
原因
生理的黄疸は、出生をきっかけに赤ちゃんの血液中に変化が起こり、ビリルビンと呼ばれる物質が増えることで起こります。また、出生直後は肝臓や消化管の機能が未熟であることも、生理的黄疸の原因として挙げられます。
ビリルビンの増加
お腹のなかにいる胎児は、胎盤を通じて母親の血液から酸素を受け取っています。効率よく酸素を受け取るために、胎児のヘモグロビンは成人のヘモグロビンとは異なる構造を持っています。
また、胎児の赤血球は成人の赤血球に比べて数が多く、寿命が短いという特徴があり、分解が活発に行われています。
出生により環境が変化することで、胎児期特有の赤血球は役目を終え、新たに外の世界に適した赤血球が作られます。古くなった赤血球が壊れる過程で、ヘモグロビンからは黄疸の原因であるビリルビンという成分が作られ、血液中に流出します。
肝機能が未成熟
通常、ビリルビンは肝臓で処理され、腎臓を通り尿や便として排泄されます。しかし、出生後間もない赤ちゃんの肝臓や消化管の機能は十分ではなく、多量に作られたビリルビンを処理する作業が追い付かずに、体の中に溜まってしまいます。これにより、皮膚などが黄色くなる黄疸が生じます。
出生後しばらく経つと体内のビリルビン処理は速くなり、生理的黄疸は消えていきます。
症状
体幹(胴体)や手足など、さまざまな部位の皮膚が黄色くなります。また、白目の部分(結膜)が黄色くなることもあります。これら黄疸症状以外の症状は特にありません。
一般的には、生後2~3日頃から皮膚や白目の部分が黄色くなり始め、生後4~6日目にピークを迎えることが多く、生後7日以降になると徐々に引いていきます。
病気を原因としない生理的黄疸は、一般的に2週間以内で消えるとされています。
検査・診断
出生後の入院期間中、基本的にすべての赤ちゃんに対して、黄疸検査が行われます。入院期間中の黄疸検査は、皮膚の上から計測できる経皮的ビリルビン濃度測定計を用いて行われます。
黄疸検査や退院前・後の血液検査で、病的黄疸の可能性が考えられると判断された場合、さらなる診察や検査が行われます。
また、黄疸の出現時期が早い場合や、なかなか消失しない場合、黄疸以外の症状(哺乳力の低下など)がみられる場合にも、血液検査による血中ビリルビン値の測定など、病的黄疸の可能性を考えた検査が行われます。
治療
生理的黄疸は、治療の必要はない黄疸であるとされています。
ただし、現実には病的な原因のない生理的黄疸と判断される場合でも、ビリルビンの排出を促す治療を行う必要がある例もあります。
治療が必要な場合
治療が必要な場合には、ビリルビンの上昇を防ぐことを目的として、交換輸血療法や光線療法、薬物療法などのなかから、一人ひとりに適した治療が選択されます。
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