概要
男性性器とは陰茎、陰嚢、その内容物(主に精巣)の総称です。男性器損傷とは、これらの部位に強い外力が加わり、損傷をきたすことです。
加わる外力の種類によって損傷のタイプも変わります。
- 切り傷
- 裂傷:皮膚が裂けてできる傷。
- 挫傷:ぶつけたときに生じる傷。皮膚は傷つかず、皮膚の下の組織が損傷される。
- 剥皮創:皮膚組織などが剥がされてできる傷。 など
男性性器に特有な損傷には、陰茎折症、陰茎絞扼症、精巣損傷などがあります。精巣をぶつけたときに起こる挫傷は、さまざまな男性性器損傷のなかでも比較的起こる頻度が高い損傷です。
原因
陰茎や陰嚢に大きな外力が加わることが原因です。性行為、落下事故や交通事故、スポーツなど、様々なきっかけで起こります。
陰茎折症
勃起時に、陰茎に曲がるような外力が加わることで起こります。陰茎海綿体という構造物と、それを覆う膜(陰茎海綿体白膜)に断裂を来すことがあります。主な原因は性交、自慰、寝返りなどです。朝立ちしているときに子どもが飛び乗ってきた、といった状況で発生する場合もあります。また、ごくまれに非勃起時にも転落や強力な外力がかかった場合に生ずることがあります。
陰茎絞扼症
陰茎の根元がリング状の異物により長時間締め付けられ、血流が妨げられることにより起こります。原因のひとつとして、勃起の持続や自慰行為を目的に人工物を使用することなどが挙げられます。
精巣損傷
落下事故や交通事故、スポーツ、喧嘩などにより起こります。精巣を覆う精巣白膜が損傷を受けると、精巣の内容物が陰嚢内で飛び出し、精巣破裂に至る場合があります。
症状
陰部に腫れや痛みが生じます。陰茎折症では断裂した白膜周辺の皮膚の血腫と疼痛をみとめます。尿の通り道が損傷を受けると、尿道からの出血や排尿困難などの症状が現れることもあります。陰茎絞扼症では絞扼部より遠位(先)の陰茎浮腫、疼痛が見られます。精巣損傷では陰嚢の腫れ、疼痛、皮下血腫などが見られます。
検査・診断
受傷時の状況と身体診察による所見から診断がなされます。目に見える傷がある場合には、傷の範囲や深さを確認し、大きな出血がないかを注意深く観察します。傷が広範囲に及ぶ場合には、尿道の損傷がないことを確認するために、逆行性尿道造影を行うことがあります。
逆行性尿道造影とは、尿道の出口(外尿道口と言います)から造影剤を注入して尿道を調べる検査です。
精巣損傷では、精巣を覆う膜(精巣白膜)の損傷の有無、陰嚢内の血腫の有無を確認するために超音波検査を行います。
治療
目に見える傷がある場合は、一般的な外傷に対する処置と同じように、以下の治療が行われます。
- 十分な洗浄
- 異物の除去
- 細胞死が進んだ組織の除去
- 止血
- 損傷している組織の修復
- 傷の閉鎖 など
尿道に損傷がある場合、損傷の程度によっては手術による修復や尿の出口の確保が必要となることがあります。尿道が完全に断裂してしまい、尿の出口を確保する必要があるときには、下腹部から膀胱へ尿が通る管を入れる膀胱瘻を造設します。ただし陰茎折症などで尿道損傷を伴うことはごくまれです。陰茎折症や精巣破裂は、多くの場合手術による修復が行われます。
陰茎折症の場合は出血点を探索し確認後、その部位の断裂した白膜を縫合します。精巣損傷では陰嚢を切開し、精巣の出血点を止血、白膜の断裂がある場合には縫合を行いますが損傷がひどく修復不能な場合には精巣を摘出することもあります。
陰茎絞扼症では速やかに陰茎の根元を締め付けている異物を切断し、除去します。
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