概要
尿道が損傷することを尿道損傷といいます。膀胱で貯められた尿は尿道を通り体外へ排出されます。男性は尿道が長いため、ほとんどの場合で男性に起こります。
原因
交通事故、転落などにより会陰部(股の部分)に強い衝撃が加わることで、骨盤が骨折し、合併することが多いです。また、尿道カテーテルや尿道の手術を行ったことによる医原性の場合もあります。まれですが、性交時の陰茎損傷に伴い損傷することがあります。
症状
尿がでない、また尿がでないことにより膀胱に尿が溜まり、下腹部が膨張し、痛みが出ることがあります。また、骨盤骨折や会陰部へ衝撃を受けた際に、外尿道口(尿が出る出口)からの出血がみられた場合は、尿道損傷を疑います。
検査・診断
レントゲン撮影室で外尿道口から造影剤を注入し、尿道を造影します。尿道が損傷されていない場合は、尿道がきれいな曲線に造影され、膀胱まで造影剤が到達します。しかし、尿道損傷がみられる場合は、損傷部位から造影剤が尿道外に漏れるため、尿道外に溜まりのように造影されます。尿道損傷がみられた場合は、以下の3パターンに重症度別に分類されます。
- 尿道挫傷:尿道造影で造影剤の漏れがみられない(正常だが)が,症状や経過から尿道損傷が示唆されるもの
- 部分断裂:尿道造影で造影剤の漏れがみられるが、造影剤が膀胱まで達している場合(尿道に損傷はあるが、膀胱まで繋がっており造影剤は流れている)
- 完全断裂:尿道造影で造影剤の漏れがみられ,膀胱が造影されない場合(尿道が完全に断裂しており、膀胱と繋がっておらず膀胱まで造影剤が流れない)
治療
重症度により、治療方針は異なります。
- 尿道挫傷:尿道カテーテルという管を入れて留置した後に抜去します。これは管を置いておくことにより尿道が自然とくっつくことを期待した治療法です。
- 部分断裂:レントゲン室でリアルタイムでの撮影(透視)を行いながら、造影されている尿道に沿って慎重に尿道カテーテルを挿入・留置し、抜去します。これが困難な場合は、一時的に膀胱瘻(下腹部の皮膚から膀胱に管を入れること)を作り、待機的治療を行います。
- 完全断裂:一時的に膀胱瘻を作り、待機的治療を行います。
待機的治療とは、尿道と尿道を繋ぐ手術や、繋ぐ部分の間が長い場合は血管を足などから取ります。そして、血管を尿道と尿道の間に置いて繋ぐ手術を行います。また、損傷により尿道が狭くなった場合は、尿道からカメラを入れ、狭窄部位を切開することや、バルーンで拡張する手術もあります。
尿道損傷は受傷機転が交通外傷や労災が多いため,弱~壮年者の患者さんが多い傾向にあります。そして治療後も、尿道の再狭窄や失禁、インポテンツといった後遺症が残る可能性もあり、注意が必要です。
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