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幅広い肺がんの患者さんに対応――ロボット支援下手術の実績を積み重ねる国立国際医療センター

幅広い肺がんの患者さんに対応――ロボット支援下手術の実績を積み重ねる国立国際医療センター
長野 匡晃 先生

国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 胸部外科 診療科長

長野 匡晃 先生

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近年、肺がん手術において体への負担が少ないロボット支援下手術が急速に普及しています。患者さんにとっては、どの医療機関で、どのような体制のもと手術を受けるかが重要な選択となります。国立国際医療センターでは、肺がん手術の9割以上をロボット支援下で行う*など実績を積み重ねています。今回は、同院の呼吸器外科 診療科長 長野 匡晃(ながの まさあき)先生に、安全性と質を追求した手術を提供するための体制や、肺がん治療の未来への展望についてお話を伺いました。

*2024年(1月~12月)の肺がんの肺葉切除と区域切除の手術は65件。うち、ロボット支援下手術は60件。

当院では2020年8月から呼吸器外科のロボット支援下手術を開始しました。年々着実に増加し、2024年(1月~12月)は87件でした。2025年8月時点で肺良性疾患なども含めた累計のロボット支援下手術数は300例を超えています*。また、これまでロボット支援下手術から開胸手術に移行した例は一例もありません(2025年8月時点)。

*2020年(8~12月):17件、2021年(1月~12月):44件、2022年(1月~12月):56件、2023年(1月~12月):66件、2024年(1月~12月):87件、2025年(1月~8月):58件

現在、呼吸器外科では手術執刀の資格を持つ医師は4名おり、そのうち私を含め2名は日本呼吸器外科学会認定のロボット支援手術プロクター資格を保有しています(2025年8月時点)。看護師や臨床工学技士もロボット手術に習熟しており、準備から手術まで非常にスムーズに行えるチーム体制を整えています。

当院の強みは、一定の手術件数に加えて、全手術に占めるロボット手術の割合が高いことです。2024年(1月~12月)は、肺がんの標準手術である肺葉切除と区域切除のうち、9割以上をロボット支援下で行っています。この実績は「この病院に来ればロボット支援下手術を受けられるかもしれない」という患者さんの期待に応えることにつながると考えており、非常に重視している点です。

肺の手術は高度な技術が要求されます。これは開胸手術であっても低侵襲手術であっても変わるものではありません。そのうえで、私は、ロボット支援下手術は比較的新しい方法ではあるものの、開胸や胸腔鏡の手術と比べて必ずしもより高度な技術が要求されるものではないと思っています。胸腔鏡と比較すると、必要な技術を習得するためにかかる時間はむしろロボット支援下手術のほうが少ないこともあると思います。直感的に操作できる部分もあり、実機に近い環境で手技をトレーニングできるシミュレーションの機械もあるので、若い世代の医師にとっては習得しやすい側面もあります。また、ダヴィンチには2台の術者コンソールを接続できる“デュアルコンソール”という機能があり、熟練した術者がもう1人の術者に指示を出したり、一部分の難しい手技だけを交代して行ったりすることが容易なので指導も行いやすくなっています。ロボット支援下手術の習熟度を高めるためには、大前提として医師個人の鍛錬が大切ですが、トレーニングや指導がスムーズにできる環境は、開胸手術や胸腔鏡下手術よりも整っていると個人的に感じています。

また、ロボット支援下手術の安全性を担保するためには緊急時への備えも欠かせません。当院ではこれまでロボットの故障などの事態は起きていませんが、こうした緊急事態はいつ起こるか分からないものです。万が一の事態に備え、停止したロボットを速やかに外して開胸手術に切り替える訓練や、停電時の対応の訓練を医師や看護師らで定期的に行っています。

私見ですが、ロボット支援下手術は肺がん領域でものすごい勢いで増えていると思います。2018年に保険適用になり、手術の件数は現在も全国的に増え続けています。ロボットには導入やメンテナンス費用などコスト面の課題はありますが、それでもこれほど普及しているのは、多くの医師たちが技術取得のしやすさや安全性などのメリットを実感しているからだといえるでしょう。

現状ではロボットの導入は手術コストの削減にはつながりにくいという見方もあります。ですが私は、ロボット手術はその発展性の観点からまさに“未来への投資”であると考えています。開胸や胸腔鏡の技術は長年にわたる積み重ねにより、現時点で成熟しており、目立った進歩は起きにくくなっています。それに対してロボット工学の分野はこの先10年、20年と目を見張るような技術の進歩が続いていくと強く感じています。AIの活用や、過疎化が進んだ地域における遠隔治療のほか、それ以外にも我々の想像もつかないような進化を遂げる可能性もあるのではないでしょうか。現在ロボット支援下手術に力を入れているのは、このような未来の医療に自分自身が追いついていきたいという思いが強くあるからです。進化の先にある、患者さんにとってよりよい医療をしっかりと届けていくためにも、日々ノウハウを蓄積しながら未来を担う後進も育てていきたいです。

当院は総合病院であり、研究にも力を入れていますが、大学病院と市中病院の中間的な立ち位置でもあると考えています。総合病院として、膠原病(こうげんびょう)や血液疾患、HIV感染症といったさまざまな併存症がある患者さんに対して各科の医師と緊密に連携しながら治療を提供できることも当院ならではの強みです。

さらに、海外からの受診希望者や日本滞在中の外国人の方に対応する国際診療部を設置し、外国人の患者さんの診療にも力を入れています。JMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)の認証を受けており、通訳体制も整えております。最近ではベトナムの病院にロボット支援下手術の導入協力を行うなど、国際的な貢献も私たちの重要な役割と考えています。

肺がんの疑いがあると告げられ、ご本人もご家族も、計り知れない不安の中にいらっしゃることと思います。しかし、まずお伝えしたいのは、今はさまざまな治療法がどんどん進化しているということです。どのような状況であっても、患者さんにとってよりよい治療法がきっとあるはずです。まずは私たち医師を頼っていただき、一緒に現状を正確に把握することから始めていきましょう。手術の際には外来から一貫してサポートすることで患者さんにより安心感を持って受けていただけるような体制を取っています。

私は、“医師が病気を治す”というよりは“患者さんが病気を治していくのを手助けする”というスタンスのもと、診療を行っています。もちろん、手術を行う際はその責任は全て私が持ちますし、現在は科長という立場から、当科で行われる全ての手術に対する監督責任も負います。しかし、治療全体の主役はあくまで患者さんご自身ですので、丁寧に寄り添いながら一緒によりよい治療を見つけていきたいと思っています。

  • 国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 胸部外科 診療科長

    日本外科学会 外科専門医・指導医日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・評議員・胸腔鏡安全技術認定医・認定ロボット支援手術プロクター(手術指導医)日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・評議員日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(呼吸器外科領域)

    長野 匡晃 先生

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