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肺がんの特徴やリスク――ステージに合わせた治療選択と早期発見の重要性

肺がんの特徴やリスク――ステージに合わせた治療選択と早期発見の重要性
長野 匡晃 先生

国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 胸部外科 診療科長

長野 匡晃 先生

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肺がんは日本人に多くみられるがんの1つです。喫煙者が罹患するものというイメージがありますが、実は喫煙者だけでなく非喫煙者にもリスクがある病気です。しかし、初期症状がほとんどないため早期発見が難しく、その特徴や検査、治療法について正しく知っておくことが大切です。今回は、国立国際医療センター 呼吸器外科 診療科長の長野 匡晃(ながの まさあき)先生に、肺がんの基本的な知識から治療選択、早期発見の重要性についてお話を伺いました。

肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化することで肺の中にできるがんです。主な原因として知られているのは喫煙です。喫煙者は非喫煙者に比べて男性では4.4倍、女性では2.8倍肺がんになりやすくなるというデータがあります。

日本の年間罹患者数は約12万人(2019年時点)です。年齢が上がるほど罹患者数が増える傾向があり、70歳代がピークとなりますが、80~90歳代で肺がんが見つかる方もいらっしゃいます。非喫煙者の肺がんは比較的若い世代にもみられ、20歳代や30歳代で診断される方もいらっしゃいます。

近年は喫煙率の低下に伴い、喫煙に関連したタイプの肺がんは減少傾向にあります。その一方で、たばこを吸わない方に発生する原因不明の肺がんは増えています。CTによる検診の普及により、症状のない非喫煙者の方からがんが見つかるケースもよくあります。

肺がんは、初期症状がほとんどなく進行し、転移(ほかの臓器にがんが広がること)しやすいのが特徴です。肺は全身からたくさんの血管が集まり、リンパ管が張りめぐらされているため、血液やリンパ液の流れに乗って反対側の肺や脳、骨、リンパ節などに転移します。肺がん自体の症状がないまま進行し、脳や骨に転移してから症状が出てきて発見されるケースも少なくありません。たとえば、脳に転移すると頭痛や麻痺など脳卒中のような症状が現れたり、骨に転移した際には肋骨(ろっこつ)や背中などに痛みが現れたりします。

このように肺がんは早期発見がとても難しい病気といえます。肺がんが早期に見つかった場合は、根治性の高い手術治療が第一選択となることが多いですが、年間約12万人が肺がんと診断されるなかで、手術の対象となるのは4万5,000人程度であるのが実情です。その一方で、近年は新たな薬剤が登場するなど、進行した肺がんに対する治療も進歩しており、たとえ手術の適応とならなくても治療成績は向上しています。

肺がんは細かく分けると10種類以上ありますが、治療において最も重要な分類は“非小細胞がん”か“小細胞がん”かです。なぜなら、この分類によって治療方針が大きく異なるからです。簡単に言うと小細胞がんは進行が非常に速いため、手術が適応となるステージが限られます。同じステージ2であっても、非小細胞がんと小細胞がんでは治療法が変わってくることがあります。非小細胞がんはさらに腺がん、扁平上皮がんなどに分けられます。現在は腺がんが50%以上を占めています。

イラスト:PIXTA 加工:メディカルノート

 

胸部X線検査などで肺がんが疑われる場合、まずそれが本当にがんであるかどうか、そしてどの種類なのかを確定させるために、気管支鏡などで組織の一部を採取する“病理検査”を行います。並行して、がんだった場合に備えて、ステージ(進行度)を調べるための画像検査も行います。造影CTはがんの性質やリンパ節転移の有無を確認できます。投与した放射線薬剤の分布を特殊なカメラで画像化するPET検査も行うことで、骨や他の臓器への転移がないか全身にわたって調べていきます。脳は転移が多い場所ですが、PETでは評価が難しいため造影MRIか造影CTで検査します。

がんのステージは国際的な規約(TNM分類)に基づいて決まります。これはT(Tumor:腫瘍(しゅよう)の大きさや広がり)、N(Node:リンパ節への転移)、M(Metastasis:転移)の3つの要素の組み合わせで、基本的にはステージIからIVに分類されます。ステージIは“リンパ節や他臓器への転移がなく、腫瘍が小さい状態”です。ステージIVは遠隔転移がある状態で、ステージII、IIIはその中間の状態となります。

肺がんの治療法は、手術、放射線治療、薬物療法(抗がん薬など)が基本的な3本柱となります。そこから患者さんごとのステージや全身状態、ご希望などを総合的に考慮して、より適したものを選択していきます。手術の適応となるのは、基本的にはステージIIまでです。ステージIIIでは、胸の中ではかなり広がっているものの遠隔転移はない状態なので、手術、放射線治療、化学療法を組み合わせる”集学的治療”の対象となります。ステージIVは遠隔転移がある状態で、薬物療法が治療の中心となります。

薬物療法に関しては日々進化しており、従来の毛が抜けてしまうといったイメージのある抗がん薬だけではなく、分子標的薬*や免疫療法**など新たな治療法も登場しています。

放射線治療はがんに放射線を当てて、がん細胞を死滅させる治療法です。手術と同じ局所療法で、手術と比較して体への負担が少ないため、高齢の患者さんや手術ができない患者さんも治療可能です。

これらの治療を選択する際、当院ではまずは患者さんにとっての標準治療が何かと、そのメリットとデメリットを説明します。標準治療以外に代替治療がある場合はそちらも説明したうえで最終的には患者さん自身が納得される治療法を選んでいただけるようにしています。

*分子標的薬:がんの発生や増殖に関わる分子を標的にして作用する薬

**免疫療法:体がもつ免疫の力でがんを攻撃する治療

肺がんは罹患率も死亡率も低くはない病気です。ですが、抗がん薬をはじめとした薬物療法や手術は日々進化していますので、ぜひ希望を持って治療に臨んでいただければと思います。早期に発見し、手術や放射線治療などの根治的な治療で対応できれば、5年生存率も高くなり、良好な経過が期待できます。

だからこそ、早期発見・早期治療の大切さをより多くの方に知ってもらいたいと思っています。初期症状がない肺がんを早期に発見するためには、定期的な検診がとても有効です。人間ドックでの胸部CT検査も早期発見には有用ですが、少なくとも自治体などで行われる年に一度の胸部X線検査は必ず受けていただければと思います。そこで“要精密検査”と判定されたら、症状がなくても速やかに医療機関を受診し、CT検査を受けてください。症状がないことから、判定を放置して受診を先延ばしにしてしまう方もいらっしゃいますが、結果を受けたらすぐに行動することが何より大切です。

  • 国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 胸部外科 診療科長

    日本外科学会 外科専門医・指導医日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医・評議員・胸腔鏡安全技術認定医・認定ロボット支援手術プロクター(手術指導医)日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医・評議員日本内視鏡外科学会 技術認定取得者(呼吸器外科領域)

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