腰部の痛みや疾患というと、中高年の方に発症するというイメージがあります。「腰椎分離症とは」で腰椎分離症について、10代の成長期の児童に生じること、また激しいスポーツなどによって生じることを解説していただきました。本記事では、引き続き武蔵野赤十字病院整形外科部長の山崎隆志先生に腰椎分離症の治療について解説していただきます。
腰椎分離症は、過度なスポーツなどによって腰部に負担がかかり、椎弓(神経組織を保護している腰椎後部のリング状の構造をしている部分の一部)が分離(骨折)してしまう疾患です。
分離症では上体を後ろに反らした姿勢をとったときに分離部のストレスや炎症が増大し腰痛がおこります。時には分離部が神経根を刺激すると、腰痛や下肢のしびれなどの症状が現れることがあります。若年者が腰椎伸展により腰痛を訴える場合は分離症である可能性が高いです。
初期であれば、激しい運動をやめて硬性コルセットで固定することで分離が癒合し、痛みが消失する可能性があるので、安静とコルセットによる保存療法が推奨されます。
硬性コルセットで固定するのは、他の部位の骨折の際に、ギプスや副木で固定して骨の癒合を待つのと同じ理由です。硬性コルセットで腰部を固定し、約2~3ヶ月間、激しい運動だけでなく体育の授業なども含めた運動を中止し、分離した腰椎の癒合を促します。
一般的には、腰椎を安定させるために骨盤周囲の筋肉を伸ばすストレッチと筋肉の強化を行います。具体的には、大腿部の前後をよくストレッチし、腹筋・臀部の筋肉を強化します。
初期の腰椎分離症の場合、固定とストレッチなどの適切な治療を行った場合は、90%近くのケースで腰椎の癒合が期待できるといわれています。運動を再開する時期としては2~3か月後を目安にし、CTやMRIなどの画像検査で腰椎の癒合を検査して医師の許可を得てから行うようにしてください。運動を中止した場合、1か月程度で腰痛が消失する場合が少なくありませんが、必ずしも椎弓の癒合が完全に終わっているわけではないからです。
腰椎分離症の場合、固定とストレッチによる椎弓の癒合を促す治療を優先します。ただし、コルセットによる固定と安静や、薬物でも痛みが治まらない状態が続く場合は手術を行います。分離を癒合させる手術です。
ただし、腰椎分離症で手術が必要になる例は全体として少数で、硬性のコルセットによる固定と、運動を中止して安静することで治療を行えるケースが大多数です。分離すべり症にまで進行している場合は脊椎固定術をおこないます。
藤枝駅前クリニック 院長
藤枝駅前クリニック 院長
日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医日本整形外科学会 認定脊椎脊髄病医 ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
東京大学医学部を卒業後、東京大学医学部付属病院分院、三楽病院、国立西埼玉病院にて診療に携わる。1995年より武蔵野赤十字病院入職。2002年より同院 整形外科部長、2012年より副院長就任。脊椎疾患で悩む患者の診療に携わり、脊椎手術は3000例を越える。(2015年時点)また、海外の紛争地および被災地での診療経験も多数。多くの国民の健康上の課題の一つとなった骨粗しょう症脊椎対策のエキスパートとして、医師の間からも評価を集めている。
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