コンピュータ支援手術を用いる疾患のひとつに、脊椎分離症があります。脊椎分離症のコンピュータ支援手術や、注意が必要な合併症について三井記念病院 整形外科 部長の星地 亜都司(せいち あつし)先生にお話しいただきました。
脊椎分離症は椎間関節の基部の骨が分離する状態です。腰のひねり運動や曲げ伸ばしを繰り返すことで少しずつ骨の分離が起こる場合や、腰椎の一部が成長期にくっつかずにずれてしまい起こる場合があります。また、骨が成熟していない成長期のこどもに多く発症する傾向にあります。腰から足にかけて伸びる「坐骨神経(ざこつしんけい)」を圧迫・刺激するため、腰から足にかけて痛みやしびれが起こります(坐骨神経痛)。薬物治療や神経ブロックなどでも症状が抑えられない場合、患者さんの日常生活への影響や今後どれほどずれが大きくなるかを予測したうえで、手術を選択する場合があります。
脊椎分離症の手術では、ぐらついて不安定な骨をスクリューで固定します。コンピュータ支援手術を用いると、あらかじめ患者さんに合わせたスクリューのサイズを決めることができるという利点があります。しかし、腰骨は首の骨よりも大きいため、コンピュータ支援手術が必須とは限りません。使わずに手術を行っている施設もあるので、医者と相談して手術を選択されるとよいでしょう。
もっとも注意しなければならない合併症は感染症です。体内に金属片が入っている場合は感染症が治りにくいため、金具を使用する手術の大敵といってもよいでしょう。一度入れた金属片を取り外さなければならないケースも出てくるため、細心の注意を払う必要があります。ほかにも、手術で挿入したスクリューが半年〜2年後に折れてしまう場合や、スクリューで固定した腰椎の隣の腰椎がずれてしまうということが起こる可能性があります。これらの場合、再手術が必要になります。
また、スクリューを挿入する位置がずれて神経や血管を損傷してしまう危険性もあります。この合併症を防ぐために、これまでに述べたコンピュータ支援手術は有用なのです。
一般的に、金属片を用いる手術費用は高額になります。そのため、患者さんには「高額療養費制度」を用いることをお勧めしています。この制度は年齢や所得に応じて、ご本人が支払う医療費の上限が定められており、またいくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みです。
骨がくっついて安定するまでの約半年間はコルセットを装着し、ひどい猫背の姿勢や腰に負担がかかるような動きは控えてもらいます。ウォーキングは推奨されますが、激しい運動やゴルフは控えたほうがよいでしょう。半年後、再度CTで撮影し骨の状態を確認します。問題がない場合、金属片は基本的に取り除かずに経過をみます。また術後に患者さんが気にされることとして、空港の保安検査場での金属探知機が挙げられます。ひっかかる場合はほとんどありませんが、不安な方は医者に診断書を書いてもらうなど、事前に相談されることをお勧めします。
社会福祉法人三井記念病院 副院長/整形外科部長
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