インタビュー

腰痛の専門医が答える、腰部脊柱管狭窄症とは?

腰痛の専門医が答える、腰部脊柱管狭窄症とは?
仲田 和正 先生

西伊豆健育会病院 院長

仲田 和正 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月05日です。

背骨には上から順に頚椎・胸椎・腰椎・仙椎と名前がついており、正式には脊椎(せきつい)と呼ばれます。

脊椎の構造
脊椎の構造

人間は脊椎動物であると学校の理科の時間に習った人も多いと思いますが、脊椎動物は背骨がある生き物の総称です。脊椎は、円盤に楔がついたような形をして連なっていて、中には円形の空洞があるのがわかります。この空洞は脊柱管と呼ばれ、脳から続く神経の束、すなわち脊髄の通り道になります。つまり、脊髄は4本の手足・体幹を司るとても大事な神経なので、外的な力が加わらないように硬い骨にしっかり保護されています。さらに脊髄自体は硬膜という膜に包まれているなど、とても厳重に守られているのがわかります。

このように本来脊髄を保護するはずの脊椎に変形が起こり、脊柱管(すなわち脊髄)を圧迫するようになった状態が「脊柱管狭窄症」です。脊柱管狭窄症は、力のかかる腰部に発症しやすく、「腰部脊柱管狭窄症」と呼ばれることが多いです。

生まれつき脊柱管の狭い人もいますが、多くの場合は加齢とともに起こる腰椎周りの変化のため、中年以降に発症することが多いです。原因は、脊椎に変形が起きていたり、椎間板が盛り上がったり、黄色靭帯が厚くなることと言われます。また、若年でも力仕事などで腰に負担をかけると、発症することもあります。

症状は、腰痛・腰周りの重さ・だるさや張りなどがでることもありますが、それ以上に足に痺れや痛みを伴うことが多い病気です。むしろ、腰痛はでない時もあるので、腰痛がないからといって安心しないことが大切です。足の症状は坐骨神経の通り道に沿ってでます。太ももやふくらはぎ、時には足の裏にも及びますし、脊柱管の圧迫の部位や程度により片足の時も両足の時もあります。

腰部脊柱管狭窄症は、特に、「間欠性跛行」と呼ばれる症状(しばらく歩くうちに徐々に足に痺れや痛みがでるものの、座って休むと速やかに改善する)が特徴的です。これは腰を伸ばした状態より、前かがみの屈強した状態の方が、負担が軽くなるためです。

また、脊髄には様々な神経が通っているため、腰部脊柱管狭窄症では尿がでにくくなることや便秘になることもあります。逆に、歩行すると尿意を感じるといった症状がでることもあるようです。

腰部脊柱管狭窄症の神経障害形式による分類
腰部脊柱管狭窄症の神経障害形式による分類

 
症状が悪化すると、残念ながら保存療法、つまり投薬やリハビリなどの手術以外の方法では根本的な解決にはならないことがほとんどです。足に麻痺が出る場合や、痛みが強く日常生活に支障をきたすような場合、また尿や便に関する症状がでている場合には、基本的には手術が適応されます。また手術の内容は前述の様々な原因に沿って判断されます。

中程度までの症状であれば、保存療法で改善することも多いです。しかし、腰部脊柱管狭窄症は加齢とともに進行する病気なので、自分ひとりで解決せず、整形外科など専門医の下で定期的な診察を受けることが重要になります。

手術は「除圧術」が主に行われることが多いです。この手術は、脊柱管を圧迫している骨や椎間板、靭帯などを摘出し、圧迫を解除してあげる方法です。行う範囲は患者さんの状態に合わせて決まり、「部分除圧術」や「広範除圧術」などと言われます。

さらに脊椎自体が不安定(つまり、グラグラと動くような状態)には、脊椎の固定を同時に行います。これは「除圧固定術」と呼ばれる手術で、固定の際には患者さん自身の骨や人工骨の移植、あるいはプレートやスクリューを用います。
術法は、まず患者さんを仰向けで麻酔にかけた後に腹ばいにし、それから背中に小さくて4~5㎝の皮膚切開を行います。なかでも脊髄の周りを扱う際には顕微鏡を用いて、周囲の大事な血管や神経に影響を与えないように細心の注意を払って手術が施されます。

また現在は内視鏡を用いた、より負担の少ない手術も行われています。手術自体は2~4時間程かかることが多いですが、手術方法や部位によっても大きく変わってくるでしょう。

安全に行えるよう様々な努力がされているものの、手術には当然リスクも伴います。手術の合併症として考えられるのは、神経を損傷や創部の感染が起こること・出血などです。特に神経を損傷してしまうと、足の麻痺や感覚鈍磨、尿や便をする時の異常などが現れてしまうことがあるため、手術には細心の注意が求められています。

術後の経過は患者さんにより異なりますが、手術翌日から翌々日にはコルセットを付けた状態で歩行訓練を開始できるでしょう。手術から退院までは1週間から2週間というケースが多いようです。ただし、コルセットは退院後も1ヶ月は装着することとなります。 

効果が限定的といっても、保存療法が行われることは十分あります。例えば鎮痛薬による症状の軽減や、ストレッチ、リハビリテーションなどが保存療法にあたります。
鎮痛薬は飲み薬のほか、「神経ブロック」といって圧迫されている神経の周りに痛み止めの注射をすることもあります。また、脊髄周りの血液の流れをよくしてくれる薬もよく使われており、これらの投薬により症状を改善することが期待できます。あるいはコルセットを装着し腰部をやや屈曲の姿勢にすることもあります。しかし、この治療法は数時間程度にしなければ脊椎周りの体を支える大事な筋肉が使われなり、筋肉が弱まってしまうため、注意が必要です。

同様に、痛みがひどいからと言って全く運動をしないことも、筋肉を弱くし悪循環に陥ることとなります。適切なリハビリテーションは、腰部脊柱管狭窄症を根治するためにも、非常に重要です。

リハビリテーションをするならば、ウォーキングよりも自転車走行がお勧めです。なぜなら前述の通り、腰を屈曲した状態を保つ方がよいからです。腹筋を鍛えることで腰の過伸展を防ぐ効果も期待できます。自転車に乗れない方には、手押し車で歩行することもお勧めです。

腰部脊柱管狭窄症になってしまえば前かがみの姿勢が楽なのですが、予防のためには正しい姿勢を保つことが重要です。重いものを持つ際にも前かがみになりすぎないように注意しましょう。

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