若い方から年配の方まで、腰痛に悩む方は多くいらっしゃいます。しかし、ひとくちに腰痛といっても、さまざまな種類の腰痛があります。さらに、実は大半の腰痛は原因不明のものなのです。多くの腰痛は命にかかわるようなものでない一方で、注意しなければならない危険な病気の症状として出てくる腰痛もあります。今回の記事では腰痛について、この分野のエキスパートである西伊豆健育会病院院長の仲田和正先生にお話を伺いました。
腰痛の多くは、実は原因不明なのです。70%の腰痛の方が確定診断できていない、つまり原因を断定できていないと言われています。
一方、残り30%の方の原因は
であると言われています。
原因がわからない場合は、「急性腰痛症」と診断されることがありますが、急性腰痛症というのは要するに「原因がわからない」ということを意味しています。実際は急性腰痛症と診断された患者さんのうち、1~2週間で半分の患者さんが治り、2~4週間後には90%が治ってしまうので、あまり大きな問題として扱われない場合があります。
ただし、以下に挙げる9つの症状のいずれかが出た場合は、「化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)」などの重大な病気が潜んでいる恐れがあるため、病院で十分な検査をしたほうがいいでしょう。
前述のように、通常は90%の方が1か月程度で治ってしまうはずです。1か月以上続く痛みは重大な病気である可能性が高いため、注意が必要です。
通常の腰痛は安静にしていれば痛みは抑えられますが、夜に寝ていても痛くて我慢できないような場合は、がんや「強直性脊椎炎」(きょうちょくせいせきついえん)などの炎症を起こしはじめている可能性があります。
50歳以上で腰痛を発症した場合、最悪の状況であればがんの恐れもあり、70歳以上で発症すれば圧迫骨折も疑われます。圧迫骨折とは、椅子に座ったり、バスの揺れや背伸びをしたりすることによって起こる骨折のことです。
このように腰痛は日常の動作や農作業などで起こりうるため、70歳以上の方で腰痛の痛みが激しい場合、転倒や腰の強打といった具体的な要因がなかったとしても、念のため病院に行って診てもらうのがよいでしょう。
背骨を叩いてみたときに背中の一部に痛みを感じる場合は、脊椎圧迫骨折やがんの転移の可能性があるので、精密検査をしたほうがよいでしょう。
「発熱を伴う」「尿の回数が多くなっている」などの場合は、化膿性脊椎炎などを発症しているかもしれません。
おしっこが出にくい、お尻の周りがしびれる場合なども膀胱障害を引き起こしている危険性があるため、注意が必要です。
ステロイドを使っている方は「ステロイド骨粗鬆症」(ステロイドを使用することにより骨粗しょう症になるリスクが高まる)となる確率が高く、骨が脆いために圧迫骨折が起こりやすいので、日常的に気をつけておくことが大切です。
その他「がんにかかったことがある」「体重減少が著しい」などの症状や既往歴がある方も注意したほうがよいでしょう。
このように、発熱や他の症状を伴う腰痛の中には重大な病気が潜んでいる場合があります。現在腰痛に悩んでいて心当たりのある方は、病院に行って精密検査を受けることをお勧めします。
体の異変や隠れた重大な病気は、普段の歩く姿勢から発見することもできます。例えば、腰痛の大半の原因である「急性腰痛症」を患っている方は、腰部分に負担がかかる前屈状態で歩いている場合が多いです。
また、「トレンデレンブルグ徴候」という股関節の症状があります。この症状の方は中殿筋筋力(股関節の外転筋)が弱いため、アヒルのように体を左右に振りながら歩くという特徴があります。
お尻の筋肉である大殿筋が弱く、体を後へそらして歩いている場合は、「筋ジストロフィー」といった難病の危険性もあります。この病気の特徴は、足に痛みがあるときはその足への負荷をかけないようにヒョコヒョコ歩く点です。
また、腰痛椎間板変性がひどい老人の方は前屈姿勢となり、進行すれば手を膝の上に置いて歩かなければならないほどに変形します。軽度のうちは股関節への負担のみですが、進行すると膝関節にまで負担をかけながら背中を後ろへ反らして歩かなければなりません。
このように、歩く際の姿勢に違和感があるようでしたら、腰痛だけではない怖い病気の可能性もあるため、精密検査を受けることをお勧めします。
西伊豆健育会病院 院長
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