インタビュー

若年者の腰痛の原因となる腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?その原因は?

若年者の腰痛の原因となる腰椎椎間板ヘルニアとはどんな病気?その原因は?
仲田 和正 先生

西伊豆健育会病院 院長

仲田 和正 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月10日です。

腰部脊柱管狭窄症のページにもありますが、背骨には上から順に頚椎・胸椎・腰椎・仙椎と名前がついていて、正式には脊椎(せきつい)と呼ばれます。
病院で撮る一般的なレントゲンに写っているのは硬い骨の椎体骨(ついたいこつ)で、その間には椎間板(ついかんばん)と呼ばれる軟骨が挟まれています。

軟骨といっても全体重を支えている背骨の一部とも言えるわけですから、特に外側の線維輪(せんいりん)と呼ばれる場所にはそれなりの硬度があります。

脊椎の内側は髄核(ずいかく)と呼ばれ、線維輪と比べて軟らかめの組織となっています。椎間板の真後ろには脊柱管(せきちゅうかん)と呼ばれる脊髄の通り道があり、その両脇には、脊髄から分岐して体幹・四肢(両手両足)へ向かっていく大事な太い神経が走っています。

あるとき、何らかの原因で椎間板の外側にある線維輪が裂け、中身の髄核(ずいかく)が飛び出してしまうことがあります。その場合、飛び出した方向次第では、脊髄や脊髄から枝分かれした神経を圧迫してしまいます。この状態を「椎間板ヘルニア」といいます。
椎間板ヘルニアは頸部に見られることなどもありますが、大多数は腰部で発症し「腰椎椎間板ヘルニア」と呼ばれます。腰椎椎間板ヘルニアは重いものを持つなどして腰に負担をかけることで起こりやすく、好発年齢は20〜40歳代ですが、高齢の患者も増えてきている印象です。

椎間板ヘルニアの状態
椎間板ヘルニアの状態

症状は圧迫される脊髄や神経の場所により様々です。
脊髄そのものが圧迫される際には、両方の足にしびれや痛みがでることが多いです。なぜなら脊髄は、ここから左右両方の体に神経を分岐させる、神経の大元の束だからです。

症状が細かい部位に関しては、ヘルニア(髄核の飛び出し)が起こっている脊椎の位置によって異なるので一概には言えませんが、ふともも・ふくらはぎ・足など、それぞれに通う神経と症状が対応することがわかっています。

脊髄から分岐した神経が圧迫される際には、左右どちらかに症状が出ることが多いです(ただし、左右両方が圧迫されることもあります)。
特に多いのは「坐骨神経」が圧迫されるケースで、圧迫された側に坐骨神経痛やしびれがでます。坐骨神経とは、脊髄から出たいくつかの神経が束になったものです。症状はヘルニアの部位によりますが、決まって圧迫された神経の通う部位に症状がでます。これはふとももであったり、足やふくらはぎであったり、それらが組み合わさることもあります。

症状の出る部位と圧迫された場所は結びつくので、診察ではこの傾向を逆手にとり、症状の部位から圧迫部位を推測することが可能です。例えば、坐骨神経痛の診断では仰向けになり、真っ直ぐに伸ばした足を何度まで挙上できるかを確認するSLR(straight leg raising)testと呼ばれるものが有名です。

腰椎椎間板ヘルニアの治療でまず行うのは、圧迫された部位に起こった炎症を抑えることとなります。
まずは痛みがでないよう楽な姿勢をとり、安静に努めコルセットを装着するなどの炎症緩和療法をとります。また、患部を湿布などで冷やすことも炎症を改善する手助けになります。

そして、消炎鎮痛薬の内服や病院では「神経ブロック」と呼ばれる、消炎鎮痛薬を直接病変の周囲に注射する治療も行います。一度起こったヘルニアが自然に改善することはまれですが、それにより発症した痛みは、炎症が治りさえすれば対症療法で十分改善できるでしょう。したがって、腰椎椎間板ヘルニアの治療法は基本的には保存療法となります。ちなみに、長期的に患者さんの治療経過を追跡すると、手術療法と保存的治療で成績に差がないこともわかっています。

しかし、注意が必要なのは、症状が膀胱や腸にも及んだときです。万が一、尿失禁してしまった・尿がでない・肛門がしびれた・麻痺がでた等の症状が現れた際には緊急手術が必要です。また、足の症状でも、足の筋肉が衰えた場合や麻痺が出た場合であれば緊急手術が必要となります。その他、日常生活に支障をきたすほど症状が酷い際にも手術を検討してよいでしょう。

腰椎椎間板ヘルニアの手術の方法として主に行われるのが「椎間板切除術」です。麻酔をかけた後に腹這いの体勢になり、背中からメスをいれて手術を行います。

また、最近は内視鏡下で行う手術など、より緻密で術後のダメージが少ない手術も行われています。たとえば内視鏡下の手術では、従来の手術よりも早い手術翌日から歩行を開始できるなど、退院し社会復帰するまでに要する時間を短くすることができます。従来の手術も十分に成績は良好ですが、内視鏡下での手術が可能な施設もあります。

手術の合併症としては、神経や脊髄を傷つけてしまうことが一番問題となるでしょう。これらの組織を傷つけてしまうと、麻痺やしびれが残る恐れがあります。しかし、十分に症例を積んでいる病院、術者であれば大事に至る可能性は低いといってよいでしょう。ちなみに、いずれも術後に月単位の長さで、医師のOKがでるまではコルセットを装着し続ける必要があることは変わりません。

予防のためにできることは、やはり腰に過度な負担をかけないことでしょう。重いものを持つ作業や、不自然に腰を曲げた姿勢を長時間とるなどは腰に大きな負担がかかり良くありません。
また、腰椎椎間板ヘルニアに対する予防、再発予防の双方にいえる重要点は、腰周りの筋肉を鍛えることです。バランスのとれた腹筋、背筋そして強い体幹の筋肉は、腰椎椎間板ヘルニアになる危険性を下げてくれるといえるのではないでしょうか。

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    北里大学北里研究所病院 脊椎センター センター長、北里大学医学部整形外科 准教授

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    医療法人社団 春陽会 参宮橋脊椎外科病院 院長

    おおほり やすお
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