インタビュー

腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアとは
高橋 和久 先生

千葉大学大学院 医学研究院 整形外科 前教授

高橋 和久 先生

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この記事の最終更新は2015年08月12日です。

腰椎椎間板ヘルニアは、20~40歳代の腰痛の原因として有名です。この腰椎椎間板ヘルニアとはどういう病気なのでしょうか。そもそも「腰椎」と「椎間板」とはどの部分であり、どのようにして腰椎椎間板ヘルニアが起きるのでしょうか? 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン委員も務められた、千葉大学整形外科学教室主任教授(当時)・高橋和久先生にお話をお聞きしました。

腰椎椎間板ヘルニアの原因や症状について説明する前に、まずは腰椎と椎間板について説明していきます。
背骨の各部分上から順に頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨となっており、図のようにゆるやかなS字状のカーブを描いています。

脊椎の構造
脊椎の構造

腰椎は、大きな力がかかる位置にあります。ここにかかる大きな力を支えていくのが5つの「椎体」という大きな骨と、間に挟まれたクッションである「椎間板」です。

椎体は「皮質骨」という硬い骨で出来ており、中は蛛の巣状の「海綿骨」からできています。椎間板は先述したようにクッションとしての役割をはたしており、その中には弾力性のある構造物とゼリー状の「髄核」があります。

脊椎の中には「脊柱管」という空間があります。脊柱管の中には「脊髄」や「馬尾」などの神経が入っており、脊椎はこれを守っています。この脊髄からつながる「馬尾」という神経は、腰椎の部分の脊柱管を通っています。これらの神経は坐骨神経や大腿神経となり、足先までつながっていきます。

これらの神経にはさまざまな働きがあります。具体的には運動神経、感覚神経、自律神経に分けられます。運動神経では下肢を動かす働き、感覚神経ではさまざまな感覚を伝える働き、自律神経では排尿や排便をコントロールしています。

では、腰椎に病気があるとどうなるのでしょうか。もちろん、腰痛にもなります。しかし、それだけではありません。さまざまな神経が圧迫される可能性があるため、同時に下肢の痛みや痺れも出てきます。さらにひどくなると運動障害や膀胱直腸障害が出現してきます。神経による症状は非常に多様であり、どこの神経が障害されるかによって、症状の出方が大きく変わります。

先述したように、椎間板は椎体と椎体の間のクッションの役割をしています。椎間板の外側は「線維輪」で、バウムクーヘンのような構造となっています。その線維輪に亀裂が入ると、中心部分にある髄核が飛び出してしまいます。つまり、椎体と椎体の間の椎間板が脊柱管に突出してしまうということです。そうなると、神経根が圧迫されてしまいます。このことを、「腰椎椎間板ヘルニア」と呼ぶのです。

腰椎椎間板ヘルニアの原因は、まずは腰に負担がかかってしまうことです。この背景には職場環境などがあげられます。また、タバコもリスクであることが知られています。さらに素因(ある病気にかかりやすい素質)との関連も指摘されています。つまり、環境と素因が複合的に絡まり、関係しているのです。基本的に、よく発生する年齢は20~40歳です。

つい勘違いしがちな点ですが、腰椎椎間板ヘルニアでは腰痛だけが起こるわけではありません。先述したように、腰椎と神経は密接に関わっています。これにより、腰椎椎間板ヘルニアでは多彩な神経症状が出現します。殿部から大腿、下肢にかけての痛みや痺れ、運動障害、まれには膀胱直腸障害(排尿障害:尿が出づらくなる・排便障害:便が出づらくなる)などが出てきます。

確定診断をするためにはMRI検査をする必要があります。腰椎椎間板ヘルニア以外の病気が隠れていないかどうかも、ここで確認していきます。

  • 千葉大学大学院 医学研究院 整形外科 前教授

    日本整形外科学会 整形外科専門医・認定スポーツ医・認定リウマチ医・認定脊椎脊髄病医日本脊椎脊髄病学会 脊椎脊髄外科指導医

    高橋 和久 先生

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