概要
臍帯巻絡とは、お腹の中で胎児の首、手足、胴体などに臍帯(へその緒)が巻き付いている状態をいいます。決して珍しい状態ではなく、全分娩のおよそ20〜25%にみられることが分かっています。
中でも、へその緒が首に巻き付く“頸部巻絡”の頻度がもっとも高く、臍帯巻絡全体の95%を占めるともいわれています。
臍帯巻絡の多くはへその緒が首などに1周巻き付いた“1回巻絡”で、母子ともに大きなトラブルなく出産できることがほとんどです。しかし、時に2回以上巻き付いた状態も認められ、初産で2回以上、2回目以降の出産で3回以上巻き付いている場合には分娩を慎重に行う必要があります。
原因
臍帯巻絡の主な原因は、通常よりもへその緒が長いことや、お腹の中での胎児の活動が活発なことなどです。
症状
臍帯巻絡が起こっても、母体側には自覚症状はありません。胎児にも特に影響のないことがほとんどですが、分娩中は臍帯が圧迫されることにより、一時的に臍帯血管の血流が悪くなって胎児循環に変化をきたし、胎児の心拍数が一過性(短期間)に低下するなどの変化が起こることがあります。また、臍帯が巻き付いている分短くなるため、分娩時に児頭(赤ちゃんの頭)の下降に時間がかかることがあります。
また、臍帯が強く過剰に巻き付いている場合、子宮内で胎児死亡につながることもありますが、非常にまれなことです。
検査・診断
臍帯巻絡は、妊娠中に新たに巻き付いたり外れたりと変化がみられるため、診断を行うのは妊娠末期です。分娩前に行う検査としては超音波検査が挙げられます。
超音波検査では、臍帯が巻き付いた状態を確認できるほか、カラードップラー法と呼ばれる血流のある部分を色付けして表示する手法を使用すれば、臍帯が巻き付いている回数まで分かる場合があります。
治療
分娩前に臍帯巻絡が発見された場合でも、一般的には特に治療を行わず経過観察とします。分娩中は、胎児の心拍数をモニターでしっかり確認しながら分娩進行を見守ります。
胎児心拍数のパターンから胎児の健康度に問題があると判断された場合には、分娩の進行状況に合わせ、胎児の頭に吸引装置を付着させて引っ張り出す“吸引分娩”、胎児の頭を鉗子で掴んで分娩を促す“鉗子分娩”、緊急帝王切開などが必要になることがあります。
医師の方へ
「臍帯巻絡」を登録すると、新着の情報をお知らせします