概要
過剰歯とは、通常の本数よりも多く形成される歯のことを指します。過剰歯は、通常の歯のように歯茎から生えてくることもありますが、顎の骨の中に埋まった状態のまま生えてこないこともあり、歯科健診などでX線検査を行った際に偶然発見されることも少なくありません。
歯茎から生えてくるケースでは過剰歯に気付きやすく、歯並びなどに影響が出る前に抜歯することも可能です。しかし、顎の骨の中に埋まったままの過剰歯は気付かれないことが多く、放っておくと抜歯が困難な位置に移動してしまうこともあります。
また、過剰歯は正常な歯の生え方に異常をきたす場合もあります。過剰歯は特に上顎の前歯部分に生じることが多く、前歯に隙間ができる“正中離開”の原因となることもあるため注意が必要です。
原因
過剰歯の明確な発症メカニズムは解明されていません。
しかし、現在のところ仮説として、胎生期に何らかの原因で本来ない場所に歯の元となる器官が作られることが原因となる“歯胚・歯堤の過剰形成説”などが挙げられています。
症状
過剰歯は上顎の真ん中部分にもっともできやすく、次いで前から4~5番目の小臼歯部にできやすいとされています。同時に複数の過剰歯がみられることも少なくありません。また、過剰歯は口の中に生えてくるケースもあれば、“埋伏過剰歯”として口の中に生えず顎の骨の中にとどまったままのケースもあります。
口の中に生えてくる場合は、本来は歯がない上顎などに歯が生え、歯並びなどに影響を与えることがあります。一方、埋伏過剰歯は目立った症状がないため、歯科健診などでX線検査を行って偶然発見されるケースが多いとされています。しかし、放っておくと歯並びに影響を与えることもあり、特に上顎の中央部にある場合は前歯の間に隙間が生じやすいことが知られています。また、周囲の正常な永久歯にダメージを与えて歯の根を吸収したり、嚢胞(ふくろ)を形成したりすることもあります。さらに、過剰歯の位置や向いている方向によっては、永久歯の萌出(永久歯が生えること)が遅れることも報告されています。
検査・診断
過剰歯の存在が疑われる場合は、歯科用のX線検査とCT検査による画像検査が必要になります。埋没過剰歯の場合は、目立った自覚症状がないことも多いため、歯科健診などによる画像検査で偶然発見されることが少なくありません。
過剰歯は位置や向きによっては放っておくと抜歯が困難な場所に移動することもあるため、特に歯科用のCT検査による詳細な観察が必要とされています。
治療
過剰歯は口の中に生えてくるタイプと、顎の骨に埋まったままの埋伏過剰歯というタイプがあります。
口の中に生えた過剰歯は抜歯します。一方、埋伏過剰歯は自覚症状がなくても放っておくと歯並びに影響を与えたり、正常な永久歯にダメージを与えたりすることもあります。そのため、歯茎を切開して骨を削って埋伏歯を取り出す手術を行う場合もあります。逆性*の埋伏過剰歯が上顎に生えた場合、年齢が上がると鼻側に移動して抜歯が困難になるケースもあるため、早期に治療を行うことが多く、子どもの理解や年齢によっては全身麻酔での手術が必要になることもあります。
*逆性……歯が上下逆転し、口内から遠ざかる方向に向かって生えること
予防
過剰歯の発症メカニズムは解明されていないため、現状では発生を予防する方法はありません。しかし、過剰歯は放っておくと歯並びなどに影響を与えたり抜歯が困難になったりすることがあるため、過剰歯の存在が分かった場合は放置せずに歯科医師に相談して適切な処置を講じましょう。
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