概要

顎骨骨折(がっこつこっせつ)とは、顎の骨(顎骨)にひびが入ったり、折れたりすることをいいます。顎骨は、口を開けたり、ものを咬んだりするときに動く下顎骨とそれに向かい合う上顎骨で構成されています。

上顎骨の骨折を上顎骨骨折、下顎骨の骨折を下顎骨骨折といい、ときには両方の顎骨や鼻骨、頬骨、まれに頭蓋骨などの隣接した骨まで骨折してしまうこともあります。顎骨を骨折すると、腫れや出血のほか、咬み合わせの異常や口を開きにくくなるなどの症状が現れます。

外部からの力が加わりやすいという構造上、下方に突出している下顎骨のほうが受傷の頻度は高く、顔や顎骨の骨折全体の60~70%を占めるともいわれています。 20歳代、そして男性に多いことが特徴です。

原因

顎骨骨折はそのほとんどが、何かにぶつけるなど外部から強い力が加わったときに生じます。原因として多いものは、交通事故、転倒、スポーツなどが挙げられます。飲酒後の酩酊による転倒やけんかなどで受傷するケースも多いので注意が必要です。

症状

顎骨骨折では、腫れや出血、痛みのほか、咬み合わせの異常や口を開けにくいなどの症状が生じます。骨折の部位によっても症状が異なりますが、顔の変形や目、鼻、耳、脳などにも影響が出ることがあります。また、歯が折れたり、脱落したり、位置がずれたりすることも多くあります。

下顎骨骨折

下顎骨骨折の特徴の1つは、咬み合わせが悪くなることです。また、しびれなど感覚の異常や、口を開きにくくなる、口の開閉時に痛みが生じるといった症状もみられます。さらに、顔が変形したり歯並びに影響を与えたりすることもあります。また、介達骨折(かいたつこっせつ)といってぶつけたところから離れた部位(顎関節など)が骨折することも少なくありません。そのため、適切な診断を受けることが大切です。

上顎骨骨折

上顎骨骨折においても、咬み合わせの異常が生じます。そのほか、口を開きにくくなる、上顎が不安定になる、顔が変形するなどの症状がみられます。

上顎骨は顔の中心にあるため、周囲の骨も共に損傷していることが多くあります。損傷の場所や程度により症状も異なりますが、しびれなど感覚の異常、鼻の変形、目の異常などがみられることがあります。

検査・診断

顎骨骨折が疑われた場合、画像検査が行われます。X線検査やCT検査が主に行われますが、筋肉や神経の状態を確認するためにMRI検査が行われることもあります。

治療

顎骨骨折では、皮膚などの組織からの出血、歯の損傷など、顎骨以外への受傷もみられることが多くあります。多量の出血など、命に関わる症状がある場合はその治療が優先されます。

顎骨骨折に対する治療としては、手術を行わない保存療法、または手術治療のいずれかが選択されます。

保存療法

骨折した顎骨をできるだけ正しい位置に戻すようにして固定します(顎間固定)。ゴムやワイヤーを用いて固定したのち、1か月ほど顎骨の運動を制限し安静にします。

手術治療

手術治療は保存療法では回復が難しいケースに対して行われます。

顎骨骨折に対する手術では、主に口の中からアプローチし、骨折した顎骨をプレートやスクリューなどを用いて固定します。骨折箇所が多かったり、骨のずれが大きかったりした場合などは顔の皮膚を切ることもあります。手術を行った場合でも、術前や術後に保存療法を併せて行うことがほとんどですが、保存療法のみを行う場合に比べて、顎の機能の回復が早い、社会復帰が早いなどのメリットがあります。

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