きょうかいせいぱーそなりてぃしょうがい

境界性パーソナリティ障害

最終更新日:
2021年03月16日
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2021/03/16
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概要

境界性パーソナリティ障害とは、特徴的な考えや感情を持ち、認知や行動の偏りが大きいために対人関係を円滑に築くことが困難となり、時に自殺未遂や薬物の乱用などの衝動的な行為をしてしまう病気のことです。

パーソナリティ障害にはいくつかのパターンがありますが、境界性パーソナリティ障害では、衝動的な行動・過度に情緒的・一貫性の欠如が特徴となります。他者から“見捨てられる”ことを極端に恐れ、常に不安感を抱くと共に、他者の気を引くために常識を逸脱した行動を繰り返し、時には自己を傷つける行為に出ることもあります。また、他者と非常に不安定な関係しか築くことができず、患者が自分の味方だと思う他者に対しては異常なまでの執着を示す一方で、自分の味方でないと認識した途端激しい攻撃に出ることがあります。このため、周囲は患者に振り回され、疲弊する傾向にあります。

男性より女性のほうが発症率は高く、比較的若い世代に多くみられます。境界性パーソナリティ障害は治療が難しいケースが多いですが、中年以降に自然と症状が改善していくことが多いといわれています。

原因

境界性パーソナリティ障害の発症メカニズムは明確には解明されていません。しかし、発症には環境や身体的要因が関与していると考えられています。

環境的要因として多いのは、小児期の虐待体験です。境界性パーソナリティ障害患者さんでは身体的・性的虐待やネグレクトなどを受けていることが多いというデータがあります。また、逆に養育者からの過度な干渉が発症の原因となることも考えられています。

一部のパーソナリティ障害では、ストレスに対する病的な反応性を示す遺伝的な傾向や、衝動的な行動を制御する神経系の機能低下がみられるといった特徴が報告されています。

症状

境界性パーソナリティ障害では、衝動的な行動・常軌を逸した情緒性・一貫性のない行動が見られます。特に、他者から見捨てられることを過剰に恐れ、それゆえに常に不安感を抱き、日々の生活に満足感や幸福感を覚えることが少なくなります。また、他者の注意を自分に向けるように常識的でない行動や言動を繰り返します。場合によっては自殺未遂やアルコールの多飲、薬物乱用、非行、不特定多数との性行為など自身を傷つけるような行為を繰り返すようになります。

また、自身と他者との区別がつかなくなり、他者との適切な距離感を保てなくなることも多々あります。特定の他者に異常な執着を見せ、あたかも崇拝しているかのように振る舞うかと思えば、相手が距離を置こうとしたり自身に否定的な行動を取ったりすると、手の平を返したように激しい怒りや憎しみを抱いて攻撃を開始するようになります。

これらの行動によって他者と円滑な関係を築くことができず、患者は社会生活の中で孤立するようになり抑うつ状態になることも少なくありません。

検査・診断

境界性パーソナリティ障害ではさまざまな心理テストなどが行われ、場合によっては脳の器質的な異常を調べるために頭部CT、MRI検査や脳波検査が行われることもあります。

しかし、これらの検査によっても異常が見られないことが多く、診断には詳細な問診を患者本人だけでなく家族など近しい人から繰り返し聴取する必要があります。そのうえで診断基準に合致したものを境界性パーソナリティ障害と診断します。

代表的な診断基準では以下の9つの項目のうち5つ以上当てはまる場合に境界性パーソナリティ障害に該当すると判断します。

  • 見捨てられる体験を避けようと懸命に努力する
  • 不安定で激しい人間関係が特徴。他者に対する評価が理想化と過小評価の間で激しく変化する
  • 常に自己像(アイデンティティ)や自己感覚の不安定さを持っている(同一性障害)
  • 衝動的に自分を傷つける可能性のある行動をする(薬物乱用や異常な浪費など)
  • 何度も自殺を試みたり、自分の手首を切りつけたりするなどの自傷行為を繰り返す
  • 著しく感情が不安定になる
  • 慢性的に虚しさや退屈を感じる
  • 思い通りにいかない場合などに激しい怒りを感じ、感情のコントロールができなくなる
  • 一時的に妄想や重症の解離症状(自分が自分であることの感覚を失った状態。記憶が抜け落ちてしまう、知らぬまに思わぬ行動をしてしまうなど)を生じる

治療

境界性パーソナリティ障害の治療の主体は精神療法です。自分の考え方や感じ方の特性を自覚し、周囲との関わり方に問題を引き起こすような行動を理解することが大切です。問題の認識を深め、日常生活への対処を積み重ねることで改善が期待できます。

また、精神療法だけでは効果が不十分で、強い症状によって日常生活に支障をきたしているようなケースでは、標的とする症状をしっかり定めたうえで薬物療法が補助療法として行われることがあります。

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