患者さんの治療の選択肢を広げるためにも学び続ける

DOCTOR’S
STORIES

患者さんの治療の選択肢を広げるためにも学び続ける

常に患者さんを第一に考え、一人ひとりに寄り添う長谷川 俊典先生のストーリー

小牧市民病院 副院長 脳神経外科部長 医療の質・安全管理室長
長谷川 俊典 先生

母の病気がきっかけで、医師としての道を歩む決意を

僕は一人っ子だったこともあり、幼い頃は、父が経営していた会社を継ぎたいと考えていました。そうした環境の中で、医師を目指すことを決めたのは、母の病気がきっかけでした。母は僕が13歳の頃、膠原病を発症したのです。また、それだけではなく、脳梗塞を起こし半身不随になりました。そのような母の姿を見たときに、“自分の手で母の病気を治せるようになりたい”と強く思い、医学部へ進むことを決意しました。

脳神経外科を専門にした理由は、医学部在籍当初から、“脳”に興味があったからです。まだまだ未知の部分が多いところに、面白さを感じていました。また、自分で強く意識をしていたわけではありませんが、今振り返ってみると、母が脳梗塞を起こしたことも多少は影響していたのだと思います。こうして僕は、母の病気をきっかけに、医師として、そして脳神経外科医として歩み始めました。

僕がやりたいことではなく、患者さんにとってよいことを考える

僕自身は、今に至るまで、上司に恵まれてきたと感じています。僕が当院に来たときの上司は、小林 達也(こばやしたつや)先生でした。小林先生は、僕の専門領域のひとつである、ガンマナイフという放射線治療機器を当院に導入したまさにその人です。小林先生が僕に教えてくれたのは“患者さんのためにどうしたいのか”“患者さんにとって一番よいことは何なのか”を忘れてはいけない、ということでした。

脳外科医になるからには、どんな難手術も成功させる、いわゆる“神の手”を目指したいという人は珍しくありません。手術の腕を磨くには、経験が必要です。たくさんの命を救うため、自身の手術の腕を磨き、どんな難手術にも果敢に挑むという姿勢は、確かに医師として大切だと思います。ですが、僕は何よりも、患者さんにとってもっともいいアドバイスができる医師でありたいのです。そのため、手術だけにこだわるのではなく、患者さんにあらゆる治療の選択肢を提供するということを大切にしています。

小林先生から受けた「自分のやりたいことではなく、患者さんにとってよいことをやりなさい」という教えは、僕が医師を続けるうえでの核となっています。この教えがあったからこそ、手術の腕を磨くことだけではなく、ガンマナイフによる放射線治療など、治療の幅を広げることに目を向けるようになりました。

目の前の患者さんだけではなく、未来の患者さんも救いたい

アメリカでガンマナイフが最初に導入された、ピッツバーグ大学医療センターへの2年間の留学も僕にとって非常に大きな経験です。そこでの上司はダグラス・コンジョルカという先生でした。コンジョルカ先生からは、とにかくデータを集めて論文を書くように言われ続けました。

どのような治療が患者さんにとってよかったのか、もしくは悪かったのか、ということが、データをまとめることではっきりと見えてくることもあります。さらにそれを論文として発表することで、論文を読んだほかの医師がその知見を得ることができます。コンジョルカ先生は、データを論文という形でまとめることで、目の前の患者さんだけではなく、未来の患者さんや、遠く離れた地にいる患者さんを救えるのだということを教えてくださいました。こうした考え方は、今に非常に生きていると感じます。

スタッフと良好な関係を築くことが、患者さんの命を守ることにつながる

病院のスタッフとは、常に良好な関係を築けるよう努めています。脳神経外科の領域は、対応にスピードを求められる場面が多くあります。だからこそ、ともに働く看護師や研修医には、患者さんの異変や患者さんから得た情報は、どんな些細なことでも教えてほしいと考えています。患者さんにとって、医師には言いづらくても、看護師になら言えることもあるでしょう。そして、その情報があるかないか、いち早く異変を察知できるかどうかが患者さんの命を左右することもあるのです。

患者さんに関するスタッフからの報告がただの杞憂に終わったとき、もしも「なぜこんなことで呼んだんだ」と言ってしまえば、恐らく、次は報告してもらえなくなってしまうでしょう。最悪の場合、それによって対応が遅れて患者さんの死につながってしまうかもしれません。

ですから、日ごろから看護師や研修医には「何かおかしいと思ったら、いつでも呼んで」と声をかけています。医療はチームで行うものですから、スタッフと良好な関係を築くことが、患者さんの命を救うことにつながると考えていますし、後進の指導をする際も、スタッフとの関係構築を大切にするよう伝えています。

あらゆる治療法を実施できるからこそ、学ぶことに終わりがない

医学部在籍時から、脳の未知の部分に面白さを感じていましたが、それは現在も変わりません。さらに、脳の手術は360°あらゆる方向からアプローチすることができます。アプローチの方向によって、同じ病気の手術であっても見え方がまったく変わってきます。そうした点に、脳神経外科領域がまだまだこれから発展していく余地を感じると同時に、医療の発展に置いていかれないよう、向上心を持ち続けなければならないと日々感じています。

また、脳神経外科医は、手術のほかにも放射線治療や内視鏡治療、血管内治療といったあらゆる治療法を実施することができます。幅広い治療法をふまえて、何がその患者さんにとっての最善となるのかを考えることも、脳神経外科医の醍醐味のひとつだと感じています。

脳は人間にとって重要な役割を果たしています。その分、患者さんが治療時に抱える不安が大きくなるのは、仕方のないことだと思います。患者さんが不安を感じたとき、いかに安心感を与えられるような接し方ができるか、自信を持って治療に臨めるだけの知識と技術を習得しておけるかという点には、これからもこだわり続けたいです。

侵襲を最小限にとどめることが、僕が追求したい医療の形

僕は、いかに非侵襲的に患者さんをよくできるかということを大切にしています。極論ではありますが、外科医ながら、薬で病気が治るのであればそれがよいと思っています。ただ、現実はそのように治せる病気ばかりではありません。そうしたなかで、最小限の侵襲で患者さんの病気を治すということが、僕が追求したい医療の形です。その一方で、患者さんにとっての“最善の医療”は生活や価値観によってそれぞれ異なりますから、ひとつの治療法に固執することなく、できる限り多くの選択肢を提示できるようにしています。今後も、患者さんそれぞれにとっての“最善”をそのときどきで提供できるよう、学び続けたいと思います。

この記事を見て受診される場合、

是非メディカルノートを見たとお伝えください!

  • 小牧市民病院 副院長 脳神経外科部長 医療の質・安全管理室長

    長谷川 俊典 先生に受診について相談する

    長谷川 俊典 先生の所属医療機関

    小牧市民病院

      • 内科
      • 血液内科
      • リウマチ科
      • 外科
      • 精神科
      • 神経内科
      • 脳神経外科
      • 呼吸器外科
      • 消化器外科
      • 腎臓内科
      • 心臓血管外科
      • 小児科
      • 整形外科
      • 形成外科
      • 皮膚科
      • 泌尿器科
      • 産婦人科
      • 眼科
      • 耳鼻咽喉科
      • リハビリテーション科
      • 放射線科
      • 歯科口腔外科
      • 麻酔科
      • 乳腺外科
      • 呼吸器内科
      • 循環器内科
      • 緩和ケア内科
      • 消化器内科
      • 糖尿病内科
      • 内分泌内科
      • 脳神経内科
      • 放射線診断科
      • 放射線治療科
      • 頭頸部外科
      • 病理診断科
    • 愛知県小牧市常普請1丁目20
    • 名鉄小牧線「小牧駅」 東口  小牧市民病院経由岩倉駅行き 小牧市民病院下車すぐ(病院内ロータリー)  小牧市役所前経由岩倉駅行き 小牧市民病院北下車 徒歩約5分 バス 名鉄犬山線「岩倉駅」 東口  小牧市民病院経由小牧駅行き 小牧市民病院下車すぐ(病院内ロータリー)  小牧市役所前経由小牧駅行き 小牧市民病院北下車 徒歩約10分 バス
    • 0568-76-4131

医師のストーリー医師には医師のドラマがある

新生児科医としての長い道のりを支えた喜びと使命感

千葉市立海浜病院 新生児科 統括部長

岩松 利至 先生

地域の子どもたちが日常生活を楽しめるようにサポートしたい

千葉市立海浜病院 小児科 部長

小野 真 先生

世界の脳卒中診療の発展を見据え、地域の医療課題の解消を

千葉市立海浜病院 脳神経外科 科長

吉田 陽一 先生

診療は、人と人――患者さんやご家族が“納得”できる医療を提供し...

国立国際医療研究センター病院 心臓...

井上 信幸 先生

他の医師を見る

同じ所属病院の医師

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • <お客様がご相談される疾患について>、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • <受診の際には原則>、紹介状をご用意ください。