DOCTOR’S
STORIES
より良質な手術を提供すべく、ストイックに挑戦を続ける髙井 峻先生のストーリー
私が医師になりたいと思い始めたのは小学校高学年くらいのことです。当時から医師というよりも、外科医になりたいと思っていました。というもの、私は人よりも手先が器用で、裁縫や工作、折り紙が得意な子どもでした。家庭科の授業でも先生に「縫い目が綺麗ね」と褒められたものです。これが手先を器用に扱い手術を行う外科医になりたいと思い始めたきっかけです。
加えて、私は子どもの頃から人体の構造にとても興味がありました。小学5年生のある日突然腹痛に襲われた私は、とっさに持っていたアウトドア本の“体調が悪くなった時の対処法”というページを開きました。そして、そこに書いてあった症状による病気の特定方法から、「右下の腹痛だから、これは虫垂炎に違いない」と自分なりに考えたことがあります。
案の定、腹痛の原因は虫垂炎でした。それ以来、自分で体の仕組みや構造を理解できるようになりたいと思うようになったのも、医師を目指し始めた理由です。小学校の卒業文集にも“将来の夢は医師”と書いています。
大学受験の際にも医学部が第一候補ではありましたが、最後まで悩んだのが理学部や工学部でした。数学や物理が好きだったので、エンジニアや研究者の道もいいなと思っていたのです。しかし最終的には、人を相手にする仕事であるということ、医師という仕事に大きな不確定要素を感じたことが医学部進学の決め手となりました。
医学部在学中も、漠然と「外科医になりたい」と思ってはいたものの、どの診療科に進むべきか、具体的な進路については決めかねていました。
そんななか、泌尿器科に最初に興味を持ったのが大学5年生の臨床実習です。臨床実習でいくつかの診療科を実際に経験するなかで、泌尿器科が外科分野の1つであること、また泌尿器科はほかの診療科に比べて内視鏡手術などの新しい治療法が進んでいることを知りました。そこから私は泌尿器科という診療科に興味を抱き始めました。
転機となったのは大学6年生で行ったアメリカの臨床留学でした。そこで初めてロボット手術を目の当たりにしたのです。
ロボット手術は今や日本でも保険適用になっていますが、当時はまだ日本では行われていませんでしたし、私自身もロボット手術の存在を何となく知っている程度でした。
そんなロボット手術がアメリカではすでに始まっており、留学中にロボット手術を見学する機会を得ました。私は一瞬にしてロボット手術に魅了され、これまで見てきたどの手術とも違うその先進性に衝撃を受けました。そして泌尿器科医になってロボット手術に携われるようになりたいと思い、泌尿器科に進むことに決めたのです。
私が医師になってからまだ十数年ほどですが、その間にも次々と新しい治療薬や機械が登場し、医療は急速に進歩してきました。特にロボット手術の登場は、医療の世界に非常に大きなインパクトをもたらしました。ロボット手術がここまで浸透することを10年前に予想していた医師は少なかったのではないでしょうか。
ロボット手術の登場によって、これまではできなかった手術もできるようになりました。たとえば、開腹手術では1,000mlほど出血してしまうようなケースでも、ロボット手術なら100mlくらいの出血量に抑えられることもあります。また肉眼では見られないような細かな場所も拡大して見ることができたり、人間の手では届かないようなところにもロボットのアームは到達できたりします。ロボット手術の存在価値は、これからもますます高まってくるでしょう。こういったロボット手術に携わることができるのは大きなやりがいです。
手術を行ううえで必ず欠かさないようにしていることが、予習と復習の徹底です。患者さんにとって手術はたった一度きりです。失敗の原因は準備不足でした、という言い訳は絶対に通用しません。
そのため手術前には、手術の流れをシミュレーションする、同じような症例の手術動画を見る、手術書を読み込む、CT所見をしっかり見直すなどの事前準備を毎回徹底するようにしています。患者さんは一人ひとり違うので、術中に予想外の事態が起こることもあります。そのため、考えられる事態を何通りかシミュレーションしておき、万が一の事態にも対応できるようにしています。
また、100%完璧な手術などほとんどないという気持ちで、うまくいったと思うような手術でも「もっとできることはなかったか」ということを術後に振り返り、次の手術に生かすように心がけています。
1例1例、丁寧な手術を心がけた結果、患者さんのがんを根治できたり、他院で腎臓の摘出をすすめられた方の腎臓を温存できる手術ができたりしたときにはとても大きなやりがいを感じます。泌尿器科の手術は10時間以上かかる大がかりな手術も多いのですが、手術をやり切って患者さんが回復されていく様子を見ると、頑張ってよかったと心から実感します。
小牧市民病院に来る前に勤務していた名古屋大学病院で強く印象に残っている患者さんがいます。その方は自宅のある四国から通院している方でした。いくつかの病院で治療を受けたのですがなかなか治らず名古屋大学病院に紹介され、治療をした結果、無事治すことができました。
そんな最中、私が小牧市民病院へ異動することになり、そのことを患者さんに話すと「髙井先生を信頼しているので、これからも先生に診てもらいたい」とおっしゃってくださり、異動後も変わらず四国から小牧市民病院に通院してくれたのです。ほかにも何名か同じように小牧市民病院についてきてくれました。
「病院に通っているのではなく、自分のところに通ってくれているんだな」と、1人の医師としての責任感によりいっそう身が引き締まる思いとなりました。
これからは若手医師の育成にも尽力していきたいと思っています。特に今後さらに需要が高まると考えられるロボット手術ができる若手医師の育成に注力しています。当院で行われるロボット手術には全例立ち会うようにしており、できる限り若手の先生に執刀してもらうようにしています。
しかし、これによって患者さんが不利益を被るようなことがあってはいけません。そのため、まだ難しい手術であると判断した場合には、私が執刀する手術に若手の先生に助手として入ってもらうようにしています。
その際、私が淡々と手術をする様子を見てもらうだけでは、成長の糧にはなりません。そのため手術中には、なぜ今自分がこの操作をしているのか、手技のコツはどこにあるのか、などをできるだけ細かく説明するようにしています。どうすれば若手の先生が実りの多い学びを得ることができるのか考えるようにしています。
医療のなかでも、特に泌尿器科の治療は急速に進歩し続けています。この恩恵を1人でも多くの患者さんが受けられるよう、よいとされている新しい手術方法があれば貪欲に挑戦をしていきたいですし、既存の手術であっても今より改善できるポイントはないか探っていきたいと考えています。
ただし手術は安全性が第一です。患者さんにとって一度きりの手術で、「挑戦してみたけど失敗した」ということなど決してあってはなりません。安全な手術を行うことを第一に、手術のクオリティ向上を目指していきます。
医師になって十年余りが経ちますが、まだまだ学ぶべきこと、覚えるべきことは山ほどあります。医療が進歩すればするほどそれは尽きませんし、まだまだ成長を続けられることをとても喜ばしく思います。これからも医療の進歩に遅れを取らぬよう医師として邁進していきます。
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小牧市民病院
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