埼玉県における脳卒中医療の拡充を目指して~急性期治療からその後のサポートまで尽力する~ 埼玉県立循環器・呼吸器病センター 脳神経センター

DOCTOR’S
STORIES

埼玉県における脳卒中医療の拡充を目指して~急性期治療からその後のサポートまで尽力する~ 埼玉県立循環器・呼吸器病センター 脳神経センター

さまざまな脳神経外科治療に24時間対応できる万全の体制づくり ~脳神経センター設立のストーリー

埼玉県立循環器・呼吸器病センター 脳神経センター長/脳神経外科科長/脳卒中センター長
吉川 雄一郎 先生

2019年4月に脳神経センターを開設

当院は埼玉県の県北エリアに位置しています。われわれのカバーする医療圏には秩父地域や比企地域も含まれ、非常に広範なエリアとなっていますが、病院が少ないことが特徴です。特に、脳血管の病気の1つである心原性脳塞栓症(しんげんせいのうそくせんしょう)に対する急性期治療を24時間行うことができる病院は限られていました。こうした状況を解消するために、当院の脳神経外科を刷新して開設されることになったのが、私がセンター長を務める脳神経センターです。

心原性脳塞栓症というのは、心房細動や不整脈、心臓の機能異常などが原因で心腔内に形成された血栓が、心臓の拍出とともに脳に飛んでいき、脳梗塞(のうこうそく)を引き起こす病気です。発症後、一定の時間内に血栓をカテーテルで取り除く治療(血栓回収療法)ができた場合には、完全に脳梗塞になる前に回復する可能性があるといわれています。そのため治療は時間との勝負になりますが、埼玉県北エリアにおいては24時間対応可能な病院が限られていることや、広範なために搬送に時間がかかることが問題となっていました。

そこで、急性期脳卒中に対する高度治療を常時行うことができる施設を県北に作るという埼玉県のプロジェクトによって、2019 年4月に当院に脳神経センターが設立され、私が初代センター長として埼玉医科大学国際医療センターから赴任しました。

患者さんや救急隊、地域医療機関の認知度向上へ

脳神経センター設立当初、大きな課題がありました。それは、脳神経センターの認知度が低かったことです。私が赴任する前は、救急搬送依頼を断らざるを得ない場合もしばしばありましたし、年間手術件数は40件程度でした。そこでまず、脳神経センター設立を契機としてより多くの患者さんに利用していただけるように、地域の方々の認知度向上に力を尽くしました。

具体的には、救急搬送依頼を100%受け入れることを目指しました。先述したように、脳卒中は、どれだけ迅速に治療を開始できるかが重要です。救急隊員も、患者さんを受け入れてくれる病院にできるだけ早く搬送したいという思いがあります。脳卒中があまり疑わしくないような場合でも、まずは搬送依頼があれば可能な限り受け入れ続けました。

やがて、救急隊に“24時間365日、受け入れ体制を整えている病院である”と認知されるようになり、徐々に搬送患者さんの数は増えていきました。同時に病院の広報活動や市民公開講座によって救急搬送以外の一般の患者さんの外来受診や、近隣の医療機関からの紹介も徐々に増えていきました。

その結果、開設後1年で救急搬送数・手術件数ともに飛躍的に増加しました。また、センター設立前には行っていなかった血管内治療も24時間体制で実施可能になりました。加えて、このような状況変化に対応できるチーム作りのために、院内では繰り返し全職種に向けて勉強会や講演会を開催し、救急患者さんの受け入れ体制の強化に向けた会議を開催することで病院全体の意識改革にも努めました。

充実の診療体制でさまざまな脳神経外科手術に24時間対応

開設からまだ4年ですが、手術用顕微鏡、術中ナビゲーションシステム、神経内視鏡、術中神経モニタリングシステム、術中エコー、ハイブリッド手術室(従来の手術室に血管撮影用透視装置を組み合わせた複合型高機能手術室で、血管内治療と開頭手術を同時に行うことができる)など高度な手術を行うためのほとんどの機器・設備を備えており、開頭手術も血管内治療も24時間体制で行っています。血栓回収療法はもちろんのこと、くも膜下出血や脳出血に対する開頭手術や血管内治療など、ほぼあらゆる脳神経外科手術、脳卒中治療に24時間体制で対応できます。これはわれわれの一番の強みであり、このセンター設立の理念でもあります。さらに当院は、元来埼玉県において循環器疾患と呼吸器疾患を専門とする病院であるため、循環器系や呼吸器系疾患を合併するハイリスク患者さんに対しても、診療科同士の強力な連携により安全性の高い治療を行うことができるのも大きな強みです。

多職種連携によるきめ細かなケアで充実した治療を提供

現在、脳神経センターでは、毎朝、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、管理栄養士が集まってカンファレンス(情報を共有する会議)を行っています。その他にも、医療ソーシャルワーカー、事務職員、薬剤師も加わって入退院支援やリハビリテーションについて検討するカンファレンスや、手術室看護師も参加する術前カンファレンスを実施しています。当センターでは、関わる全ての職員によるカンファレンスを頻繁に行い、スタッフ間での情報共有と連携を重視しながら治療を進めています。

それぞれの専門性を活かした異なる視点からの情報共有を行うことで、医師だけでは気がつきにくい患者さんの状態や変化、治療に対する評価が可能となり、きめ細かいケアが行き届くようになりました。

脳卒中相談窓口で多面的に患者さんをサポート

私たちが特に力を入れている取り組みが“脳卒中相談窓口”です。脳卒中相談窓口は、日本脳卒中学会が認定する”一次脳卒中センターコア施設”に設置が義務付けられており、患者さんとその家族に治療やリハビリ、生活の見通しなどの情報を提供し、不安や再発予防、経済面での心配など、さまざまなことについて相談することができる窓口です。当院でも2021年に開設し、脳卒中に関するさまざまな相談を受け付け、サポートしています。

窓口には、外来の患者さんやご家族、入院中の患者さんなどが直接いらっしゃっても構いませんし、電話でのお問い合わせや、転院先の病院を通しての相談などにも対応しています。窓口は、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職員など多職種で構成されており、きめ細かく幅広いサポートが可能な体制となっています。

脳卒中の急性期だけでなく、治療を終えて退院や転院をされた後も、患者さんに安心して生活していただきたいという思いで、さまざまな相談に応じています。ぜひ遠慮なく“脳卒中相談窓口”をご利用ください。

この記事を見て受診される場合、

是非メディカルノートを見たとお伝えください!

医師のストーリー医師には医師のドラマがある

新生児科医としての長い道のりを支えた喜びと使命感

千葉市立海浜病院 新生児科 統括部長

岩松 利至 先生

地域の子どもたちが日常生活を楽しめるようにサポートしたい

千葉市立海浜病院 小児科 部長

小野 真 先生

世界の脳卒中診療の発展を見据え、地域の医療課題の解消を

千葉市立海浜病院 脳神経外科 科長

吉田 陽一 先生

診療は、人と人――患者さんやご家族が“納得”できる医療を提供し...

国立国際医療研究センター病院 心臓...

井上 信幸 先生

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • <お客様がご相談される疾患について>、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • <受診の際には原則>、紹介状をご用意ください。