新しいことへの探求心で患者さんを助ける

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新しいことへの探求心で患者さんを助ける

コツコツと地道に患者さんのために時間を使う石光俊彦先生のストーリー

宇都宮中央病院 院長
石光 俊彦 先生

生物への興味は父譲り

私が生物に対して興味をもったきっかけは、幼いときに父とやっていた昆虫採集です。父は昆虫採集が趣味で、自宅には父が作った昆虫の標本が数多く並べられていました。そういったものに囲まれて育った私は、物心ついたときには、蝶やカブトムシ、クワガタムシなどの採集をすることが好きになっていました。

捕まえた昆虫を家に持ち帰り、虫かごで飼育しながら、子どもながらに生物の生態を観察します。今考えると、私の生物への興味・関心は、このころに育まれたのかもしれません。

医師になれば確実に人の役に立てる 医学部に入ることを考えた高校時代

医師への入り口である医学部に入学しようと考えたのは、高校生のときです。学校の勉強は理系科目が得意だったため、研究をしたり物を作ったりすることが自分には適しているという意識はもともとありました。そして、そういった意識と共に常に感じていたことは、何か人の役に立つ仕事がしたいということです。    

職業としては、政治家になって活躍したり、会社の事業で成功することによって成果をあげることができ、それは社会においては非常に重要なことだと思います。しかし、そのような仕事が、本当に人の役に立っているのかということは必ずしも確信できないのではないかと思いました。やはり、感謝の言葉を直接いただき、確実に人の役に立っているということを実感することができる仕事がしたい。そんな思いのなか、理系脳の私に向いている仕事は何かと考えたときに、医師という職業が頭に浮かんだのです。

医師としての私の強みは2つ

私には医師としての2つの強みがあると考えています。1つ目は患者さんの立場になって考える力です。

医学部に入学すると決意してからは、それまで以上に勉強に熱をいれました。とはいえ、勉強だけをやっていたというわけでもありませんでした。私は、中学校高校と、全寮制の学校に入っていたので、寮の仲間たちと、遊ぶときは思いっきり遊ぶという青春を過ごしていました。

仲間たちと過ごした寮での生活は、勉強では学べない大切なことを私に教えてくれました。それは、「相手の立場に立って思いやる心が大切」ということです。思いやる心は医師としての私の強みとなっています。

患者さんも医師も、どちらも人間です。ですから、性格が合わなかったり、意思の疎通がうまくいかなかったりと、患者さんの期待に沿えないこともあります。しかし、まず患者さんに信頼していただかないことには、治療も上手くいかなくなってしまいます。

そんなとき、私はまず、患者さんの立場に立って、物事を考えるようにしています。患者さんは何を求めているのか、自分がこのような言動をしたら、患者さんはどのように感じるのか。そう考えることを習慣にしています。

そして、私たちが患者さんのことを一生懸命考えぬき、心をこめて診療し、その結果、病気が快方に向かい感謝の言葉をいただいたときは非常に嬉しいですし、やりがいとなります。猛勉強の合間に寮の仲間たちとの生活で学んだ「相手の立場に立って思いやる心」は、私の大切な財産となっています。

真面目に根気強く続ける

もう1つの私の強みは、真面目に根気強く仕事に取り組む力です。論文を書くにはまず、患者さんから疑問点を見つけ、研究を計画し実行するというプロセスがあります。次に、その結果を論文にまとめるという作業が待っています。後者は特に多くの時間を要し、根気が必要とされます。

時間がかかる作業を苦手とする方は多いかと思いますが、しかし、私は対外的に新しい情報を発信することができ、それが患者さんのためになる可能性があるのであればコツコツと続けることができます。それが自分の興味のある研究であれば、尚更です。獨協医科大学循環器・腎臓内科の教授という立場は、患者さんの診療や研究の他に、教室のマネジメント、学生の教育や病院運営の役務なども担っています。そのため、診療や研究という仕事に十分な時間を割けないという状況ではあります。

ですが私は、最低でも1年にひとつの英語の論文を書き上げるという課題を自分に課しています。今年も論文をひとつ書き上げることができました。さまざまな壁を越えながら論文を書き上げ、新しい情報を世のなかに出すことができたときの達成感は非常に大きなものです。

新しいことへの探求心が大切 留学先の恩師からの教え

私が仕事をするうえで大切にし続けていることは、常に探求心をもって新しい知識を積極的に取り入れていくという姿勢です。私は、1988年から1990年まで、米国のミネソタ大学に留学をしていました。そこで指導を受けた先生が、高血圧の大御所であったLouis Tobian先生です。Tobian先生は当時、酸化ストレスやマクロファージ、血管内皮の障害などの研究に着目されており、私もその研究の手伝いをさせて頂きました。

今では、高血圧とそれらの関係は興味を集めるトピックスとなり多くの研究が行われています。しかし、その当時は、循環器の分野で酸化ストレスやマクロファージなどに関する研究は少なく、学会発表においても非常に新しく斬新なアイディアでした。

そして、Tobian先生の尊敬すべきところは、学会発表の会場では常に1番前の席に座っているという点です。私が国際学会に出席すると、Tobian先生は、いつも1番前の席でメモを取りながら、熱心に発表を聴いていました。常に探求心を持ち、新しい知識を取り入れているからこそ、斬新なアイディアを生み出すことが可能なのだということを先生の姿から学びました。

Tobian先生を見習い、私も常に新しい知識を積極的に取り入れることを大切にしています。新しいことを知りたいという探求心が疾患の謎を解明し、新たな治療法となって患者さんの役にたつことが期待されるのですから。

若者のパワーを感じたい これからの抱負

今後の医師としての抱負は、もっと多くの患者さんの疾患を治せるような研究・診療を行っていくと同時に、若い方々と接する期会を増やしていきたいと考えています。私は現在、大学の部活でメディカルエンジニアリング(ME)部の顧問を担当しています。MEはつまり医療工学ですが、その部活動として、私と部員たちはさまざまなことを計画して行っています。

若い方々は一度やり出すと、ものすごい速度でやりきるというパワーがあります。また、新しく新鮮なアイディアも沢山持っています。今以上に若い方々と一緒に活動することで、私の探求心が刺激され、医師としてさらに成長していけるのではないかと感じています。

 

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  • 宇都宮中央病院 院長

    日本高血圧学会の理事を務める高血圧診療・研究のエキスパート。動脈硬化を基盤として進展する循環器疾患とともに腎不全・透析まで腎臓病を包括した心腎連関の領域を専門とする...

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