流産を繰り返してしまうと大きな悲しみとともに「どうしてこんなことが」という強い疑問も同時に生まれてくるでしょう。その一方で、現代でもまだ分からないことが多い「繰り返す流産≒不育症」についての最前線の知識をお伝えします。
今回は不育症について、国立成育医療研究センター 妊娠免疫科 医長の小澤伸晃先生にお話を伺いました。
不育症とは、妊娠はするけれども流産や死産、新生児死亡(新生児=出生後28日を経過しない乳児)を繰り返し、結果的に子供を持てない病態のことをいいます。
特に流産の割合が高く、流産を2回繰り返した場合を反復流産、3回以上繰り返した場合を習慣流産ともいいます。
流産の定義は妊娠22週未満の娩出(べんしゅつ・胎児を産み出すこと)になりますが、大多数は妊娠12週未満の初期に発生します。
定義に新生児死亡が含まれてはいますが、不育症において主に問題となるのは流産・死産です。新生児死亡も最終的に子供を獲得できないという意味では同じですが、これは主に赤ちゃん自身の問題(=お母さんの問題ではない)で起こり、偶発的な場合が多いです。
自然流産は全妊娠の約15%の頻度で生じますが、高年齢や流産回数が多くなるにつれて、流産の頻度は高くなります。そして流産の6〜7割は胎児側に発生した染色体異常によるものです。
一般的に、反復流産を含む不育症患者は4〜5%、流産を3回以上繰り返す習慣流産患者は1〜2%の頻度で起こります。2015年現在の女性の年齢分布から計算すると、毎年約3万人もの不育症患者が出現していることになります。
不育症と不妊症は異なる病態です。不妊症は「妊娠反応が出ないこと、妊娠できないこと」をいいますが、不育症は「妊娠はするが最終的に子供を授かれないこと」をいいます。最終的に子供を授かれないことの原因に、先ほどお話しした流産や死産があるのです。ただし、染色体異常やホルモン異常など(不育症の原因の記事で説明します)、不妊症・不育症どちらにも関係する要因もあります。
また、不育症の方で体外受精を行っている方、つまり不妊症を合併している方もいます。
ここで注意が必要なのは、不妊症の方が不育症になりやすいというわけではないことです。
実際のところ、不妊症と不育症の区別は難しく、受精から出産までの過程で、どこからどこまでを不妊症とするかは明確に決まっていません。そもそも、受精を妊娠とするか着床(ちゃくしょう)を妊娠とするかという点も、医師によって意見が分かれる部分ではあります。
いずれにせよ、先ほどもお伝えした通り、不妊症の方が不育症になりやすいというわけではないので、たとえば難治性不妊症の方がそれを理由に不育症の検査を受けることは勧められません。「検査の記事」で詳しく説明しますが、あくまでも不育症の検査は不育症の原因を調べるための検査です。
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター妊娠免疫科医長
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