インタビュー

流産の原因は特定がむずかしい――​​流産の基礎知識

流産の原因は特定がむずかしい――​​流産の基礎知識
玉田 さおり 先生

山王病院(東京都) 産婦人科 副部長

玉田 さおり 先生

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この記事の最終更新は2015年08月27日です。

妊娠した喜びと同時に流産についての不安を抱える妊婦さんはとても多いです。また、残念ながら流産してしまったお母さんでご自身のことを強く責めてしまう方も少なくありません。この記事では、流産についてよく外来で聞かれる質問にお答えします。山王病院産婦人科・副部長の玉田さおり先生にうかがいました。

流産とは、妊娠22週未満で妊娠が終わってしまうことです。人工的な中絶手術による流産を人工流産といい、それ以外を自然流産といいます。ここでは主に自然流産についてのご説明をします。
自然流産は、その経過によって以下のように分かれます。

  1. 切迫流産:少量の出血があり、流産発生の恐れがあるが、妊娠継続が可能な状態。
  2. 進行流産:腹痛と共に赤ちゃんが出てきてしまう、流産が進行している状態。
  3. 稽留流産:赤ちゃんは子宮の中にいるが、心拍が確認できない状態。母体に自覚症状なし。

赤ちゃんを含む子宮内容がすべて排出された場合を完全流産、一部の遺残がある場合を不全流産といいます。

流産が起こるケースは全妊娠の10~15%程度といわれており、この数字は年齢と共に上昇します。うち9割を早期流産が占めます。実際に診療をしていても、妊娠初期に流産をしてしまったり、流産歴がある方にお会いすることは珍しくありません。

流産したことが話題にのぼることは少ないため、流産されると「なぜ私だけ」との思いを持たれる方もおられます。しかしこれは決して珍しいことではないのだということを知っておいてください。そして周囲の方も、「決して珍しいことではないが、とても悲しいことだ」ということは忘れずに接してあげてください。

流産はその9割ほどが妊娠12週までに起こるため、妊婦さんの中にも非常に心配される方が多いです。しかし12週までに流産が起こらないように気を付けることで流産のリスクが下がることは、残念ながらほとんどありません。もちろん不正出血があるような場合には、仕事をお休みするなどしてゆっくりと過ごすようにしましょう。

流産されると、その原因はとても気になると思います。ただ、流産の原因を特定するのは容易ではありません。
一般的に初期の流産は胎児側に原因があるとされています。染色体疾患や遺伝子病などの何らかの疾患があるために流産してしまうということです。

一方で流産を繰り返す場合にはお母さんの子宮形態異常や内分泌機能・母児間免疫機能に異常がある場合があるため、精査を考えます。ただし、このような検査によっても原因が特定できない症例が、全体の50%程度となっています。
具体的には、3回以上自然流産を繰り返すことを習慣流産といい、精査についての情報をお伝えすることが多いです。ただ最近では結婚・妊娠年齢が上昇し、治療妊娠の方も多いこともあり、2回の自然流産(反復流産といいます)でも精査を希望される方もいます。

次の記事「流産後の対応について―待機か手術か」では、残念ながら流産と診断されてしまったあとの対応についてご説明します。

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