インタビュー

不育症の原因

不育症の原因
小澤 伸晃 先生

国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター妊娠免疫科医長

小澤 伸晃 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年10月07日です。

前回、「不育症とはなにか」についてご説明しました。まだまだメカニズムが解明されていないことが多い不育症ですが、不育症の方を調べるとよく見られる異常があることが分かってきました。今回は不育症の原因について、国立成育医療研究センター 妊娠免疫科 医長の小澤伸晃先生にお話を伺いました。

不育症については分かっていないことが多く、詳細な検査を行っても約半数は原因が特定できないといわれています。
以下に「不育症の方を調べるとよく見られる異常」を5つ挙げます。ただし、これらは不育症の直接の原因かどうか分かっていないため、「これらの因子があると流産しやすい」という意味で「リスク因子」ともいわれています。

リスク因子には、次のようなものがあります。

これが最も頻度の高い不育症のリスク因子です。体内に抗リン脂質抗体があると、

  • 血栓を起こす(内科的)
  • 流産や死産を起こす(産科的)

といわれています。
しかし、抗リン脂質抗体にはさまざまな種類があり複雑で、流産・死産を起こすメカニズムも解明されていません。
胎盤に血栓ができたため、赤ちゃんへの血液が滞り死産につながるということも考えられますが、妊娠初期(妊娠12週まで)における影響についてはまだよくわかっていません。

双角子宮(そうかくしきゅう)中隔子宮(ちゅうかくしきゅう)のように、子宮の形に異常があると流産しやすいといわれています。しかし、このような方が100%流産をするというわけではありません。妊娠し、子供を授かる方もいます。
流産後の検査で子宮形態の異常が見つかっても、次の機会にはうまく子供を授かることができる可能性もないわけではありません。そのため、近年は異常があってもすぐに手術を行わなかったり、他のリスク因子から優先的に治療する場合もあります。

子宮形態異常

夫婦どちらかの染色体にある種の異常があると、異常な精子や卵子をできやすくなり、異常な精子や卵子で妊娠が成立すると、流産や異常な赤ちゃんを出産する原因になります。
例えば「相互転座(そうごてんざ)」では、染色体の一部が他の染色体の一部と交換されてしまいますが、この場合は流産を繰り返して不育症の原因になることがあります。ただし、染色体異常が見つかっても、妊娠を考えなければご本人自身が今後生きて行く上で問題になるわけではありません。

内分泌(ホルモン)の異常があると、流産しやすいといわれています。甲状腺機能異常には、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症がありますが、どちらも流産の原因になる可能性があります。
また、黄体機能不全は、黄体期に出るプロゲステロンというホルモンの分泌が少なくなることをいいます。それにより妊娠しにくく、流産もしやすくなります。

血液凝固系の異常があると血栓などができやすくなりますが(血が固まりやすい)、流産・死産に関係する可能性もあります。このメカニズムはまだ解明されていません。
抗リン脂質抗体の一部、子宮奇形、夫婦の染色体異常を除いて、他のリスク因子のなかにはまだ不育症への影響に関しては不明なことも多いのが現状です。そのため不育症に対する検査項目を適切に設定することが、今後の課題となっています。

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