インタビュー

脳腫瘍の覚醒下手術について

脳腫瘍の覚醒下手術について
野崎 和彦 先生

滋賀医科大学 医学部脳神経外科学講座 教授

野崎 和彦 先生

この記事の最終更新は2016年04月08日です。

これまで脳卒中について滋賀県全体の傾向を述べてきましたが、やはり大学病院の脳神経外科として症例が多いのは、脳腫瘍で、特に悪性のものです。脳腫瘍の中でも神経膠腫(しんけいこうしゅ:脳内に発生する腫瘍)の手術の最近の事例として、実際に会話能力や手足の動きを確認しながら腫瘍を摘出する「覚醒下脳腫瘍摘出術」について、滋賀医科大学附属病院脳神経外科教授の野崎和彦先生にお話しを伺いました。

脳腫瘍の中でも発症頻度の高い神経膠腫という病気があります。神経膠腫は脳の中に発生し腫瘍と正常領域の境界がわかりにくい腫瘍で、治療として、脳を覆う頭蓋骨を開けて行う手術(開頭手術)が行なわれます。術後に神経症状を悪化させることなく、かつできるだけ多くの病変を取り除くことが重要ですが、とくに、言語野や運動野の領域に近いところにできた腫瘍の摘出においては術後の神経症状の悪化のリスクがさらに高くなります。

そこで当院では、手術中にいったん麻酔から覚めた時点で、患者さんが手足を動かしたり、話せる状態になってから行う「覚醒下手術」を導入しています。これにより、脳の言語野や運動野を実際に傷つけていないかどうかを確認しながら手術をすることが可能になります。

右利きの患者さんの場合、優位半球(右脳と左脳のうち、言語や計算などの機能を司る半球のこと。右利きの人の脳は左脳が優位半球になる)である左前頭葉や側頭葉に生じた腫瘍では、摘出に当たって言語障害、右半身のまひが懸念されるため覚醒下手術を行っています。覚醒下手術中は、医師と開頭した患者が会話をしながら進めていきますので、しゃべっている状態に異変が現れればすぐに確認することができます。脳細胞自体は痛みを感じないため、患者さんが手術中に痛みを感じることはありません。

このように腫瘍を摘出する際には、神経機能を守ることを最優先に考えます。安全かつ的確に手術を行うため、覚醒下手術以外の手術も行っています。たとえば、電気的な刺激による術中神経モニター、術中の脳の中での位置情報を確認するナビゲーションシステム、腫瘍を選択的に蛍光発色させ、腫瘍細胞のある範囲を確認する蛍光ガイドした手術などです

覚醒下脳腫瘍摘出術を行うことができる施設は全国でも限られていますので、手術を希望する際にはあらかじめ担当医に確認しておくことが必要です。

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