目の奥の眼窩と呼ばれる部分にできる腫瘍(眼窩内腫瘍)は発症頻度が少ない疾患のひとつです。そのため専門家も少なく、患者さんはときに不安になることもあるといいます。眼窩内腫瘍と診断されたときの注意点について、飯塚病院脳神経外科部長の名取良弘先生にお話を伺いました。
眼窩内腫瘍は比較的良性のことが多いのですが、悪性だった場合などは、県外から紹介を受けて飯塚病院に来られる患者さんが少なくありません。
よくあるのが「眼球を摘出する必要がある」と言われ、あわててあちこちの病院を探して来られる方です。腫瘍がいくら大きくても、基本的に眼球は取らずに治療することはできます。目がこぼれそうなくらいに飛び出ていて、視力もなくなっているような場合でも同じです。ただ、このような場合は視力が戻ることはないと予測されます。
視力を残せるかどうかの最大の境界線は、「形が見えるかどうか」というところです。明るい・暗いといった明暗しか判別できないレベルまで視力が衰えている場合には、眼球を残しても視力を戻すことはできません。
「形は見えるけれど、すごくかすんできました」という場合は「それでは、治療を急ぎましょう」ということになります。ここが視力を残せるギリギリのラインです。ですから、いくら腫瘍が大きくても、視力が衰えておらずきちんと腫瘍を取り出すことができれば、視力は保持できます。もちろん眼球も残せます。
ただ、悪性の場合には違います。一旦手術で腫瘍の固まりを取った後に、術中の病理診断を行って悪性ということになれば、次のステップとして、眼球も含めて目のなかの筋肉も全てひとかたまりにして取るのか、あるいはそのまま手術を終えるのかという判断をしなければなりません。
悪性だろうが、良性だろうが、腫瘍があるからということで基本的に眼球を取らなければいけないという説明を受けている患者さんが非常に多いようです。先ほどもお話したように、基本的に眼球を摘出する必要はありません。最初から眼球を取り除く手術を計画するのは、よほど悪性であることが確実にわかっているような場合のみです。それ以外において、眼球を取る必要はありません。
眼窩内腫瘍は、それほど頻度の高いものではありません。脳外科医の中には20年以上医師をしていても一度も診たことがない、といわれる先生もおられます。涙腺からできる腫瘍は比較的多いのですが、眼科に受診されています。脳外科医が見ることとなる、目の裏側に有る眼窩内腫瘍はそう多くはないので、経験されたことのない先生も少なくないでしょう。
では、眼窩内腫瘍と診断されたとき、どのような点に注意すればいいのでしょうか。患者さんご本人もご家族も先生の話を聞いていて、不安になるようなときがあることでしょう。そんなときには、実は医師も不安なわけです。そのような際、やはり経験に裏打ちされた医師の自信というのが患者さんへの安心感につながるのだと考えています。
そのため、大切なことは、患者さんが安心できる説明を受けたかどうかということを見極めることです。これは非常に重要なことといえます。具体的には、医師自身が経験はなくても「何かあったら、すぐに専門家に紹介します。知り合いにいますので。でも、今はまだ行ってもらうほどではないですね」などです。それだけでも患者さんは安心することでしょう。それに対して、「私は経験したことがないから様子をみましょう」というのであれば、やはり大丈夫だろうかと心配になります。
「様子をみる」というのにも、二種類あります。先のことがしっかりとわかっていて「経過を診ましょう」と言っている場合と、全く先のことがわからないから、しばらく様子をみて、今の状態と3か月経過した後の結果を比較してみましょうという意味で言っている場合があります。どちらかというと、後者のことが多いとは感じますが、患者さんはそこを見極めなければなりません。そのためには、医師からそのようなことをいわれた際に「様子をみてどうするのですか?」ということを医師に質問されるといいでしょう。
眼窩内腫瘍は発症頻度が少ない疾患です。だからこそ患者さんのニーズと、先生方の経験と持っている技量を最大限に生かした治療が必要になります。
飯塚病院 副院長・脳神経外科部長、九州大学 医学部 臨床教授
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