S414x320 6ea1528f e161 4cc2 b813 3ade59f4cdbe

インタビュー

公開日 : 2016 年 11 月 22 日
更新日 : 2017 年 05 月 08 日

子どもの野球肘を早期発見・予防するために、ご両親や指導者がチェックできる7つのポイント

これまで、子どもの野球肘は「野球をやるから発症する」「進行を防ぐには野球をやめるしかない」と短絡的に片づけられてしまう傾向がありました。しかし、野球肘はすべての球児に発症するものではありません。そのため、今後は「なぜこの患者さんだけが野球肘となったのか」を見極める医療が必要であると、横浜南共済病院スポーツ整形外科部長の山崎哲也先生はおっしゃいます。今回は、ご両親や指導者の方にチェックしていただきたい、野球肘になりやすい子どもの特徴について教えていただきました。

野球肘の原因となる7つの問題点

「肘が痛い」といった症状は、肘への繰り返されるストレスにより生じた結果であり、それだけに目を向けては本質的に治療にはなりませんし、野球肘という慢性的な故障を負う子どもを減らすこともできません。

まずは、なぜ沢山の球児の中からその患者さんのみが野球肘となったのか、原因を見極めることが大切です。

野球肘の原因となる問題点をみつけるためにチェックすべきポイントは、大きく7項目あります。

  • 発育期(成長期)かどうか?
  • 体に左右差や姿勢異常がないか?
  • 動きに「硬さ」や「乱れ」がないか?
  • 筋肉に「弱さ」がないか?
  • 関節に「緩み(ゆるみ)」がないか?
  • 投球フォームは?
  • 練習時間・投球数は?

上記の問題点について、詳しく解説していきましょう。

なぜ、成長期の子どもは野球肘になりやすいのか?

最初の項目には、「発育期(成長期)かどうか?」という点をみる必要があると記しました。これは、簡潔に述べるならば、子どもとは「大人の小型版」ではないからです。

子どもの骨は、大人の骨に比べ柔らかく未熟であり、関節軟骨も脆弱です。そのため、外力などのストレスに弱く、損傷しやすいという特徴があります。

野球肘における大人と子供の骨の違い
大人と子どもの骨の違い 画像提供:山崎哲也先生

大人の場合、上の図のように一本の骨があり、その両端に軟骨というやわらかい結合組織があります。

一方、成長期の子どもの骨には「骨端線(こったんせん)」という軟骨組織があります。軟骨は骨と骨の間にサンドイッチされており、なんらかの外力が加わったとき、この軟骨部分が損傷しやすい構造になっているのです。

野球肘には内側型と外側型がある

たとえば、1960年代に命名された肘の内側型の野球肘である「リトルリーグ肘」は、肘の成長軟骨に起こる成長期特有の問題です(病態の詳細は上腕骨内側上顆下端の骨軟骨障害や骨端線損傷です)。リトルリーグ肘は、肘の内側に引っ張るストレスが加わることで起こります。

これとは逆に、肘の外側が圧迫され、軟骨部分が損傷される野球肘もあり、代表的として「離断性骨軟骨炎」が挙げられます。

離断性骨軟骨炎とは? 100人に野球少年の1~3人の割合で起こる野球肘

離断性骨軟骨炎とは、肘のオーバーユースなど、ストレスが繰り返し加わることが原因で、軟骨やその下の骨(軟骨下骨)が壊死し、脆弱化していく野球肘です。

進行すると軟骨が軟骨下骨とともに離断し、「関節遊離体」となってしまい、この場合は手術も考慮します。この下関節遊離体は、俗に「関節ネズミ」とも呼ばれています。

離断性骨軟骨炎の原因-受動喫煙による血流障害も原因のひとつ

では、離断性骨軟骨炎を防ぐためには投球をしなければよいのかというと、答えは“NO”です。離断性骨軟骨炎の患者さんには投球動作をしないサッカー選手もおり、原因は肘のオーバーユースだけとはいえません。兄弟発生などもみられることから、現在考えられている離断性骨軟骨炎の原因には、以下のようなものがあります。

  • 内的要因
  • 血流障害
  • 遺伝的素因

微小循環での血行障害も離断性骨軟骨炎の原因のひとつと考えられており、指導者の喫煙による「受動喫煙」も問題視されています。

離断性骨軟骨炎は早い段階ならば自然治癒する-野球肘検診の重要性

野球肘検診のためのレントゲンの分類
離断性骨軟骨炎の病期と治療法 画像提供:山崎哲也先生

離断性骨軟骨炎の病期は、上図のように3期に分類することができます。このうち、ステージ1とステージ2の初期であれば、しばらくの期間投球動作をせず肘を休めることで自然治癒する見込みもあります。

しかしながら、自然治癒可能なステージでは「痛み」などの症状が現れず、ほとんどの子どもたちは手術も考慮せねばならない病期に進行した段階で、はじめて病院を受診します。このように早期発見が難しい点が、離断性骨軟骨炎という病期の難しいところであると感じています。

離断性骨軟骨炎は100人に1~3人の割合で起こる病気ですから、私たちの使命の一つはこの1~3人を痛みがない時期に見つけ出すことであると考えます。そのために、実施しなければならないものが「野球肘検診」です。

離断性骨軟骨炎は、大掛かりなレントゲン検査をせずとも、簡便なエコー検査によってみつけることが可能ですので、院外での検診は比較的行いやすいといえます。

しかし、野球肘検診の必要性は現時点では広く理解されてはおらず、また、費用も地域により変動があります。

少子化がすすむ日本の子どもの健康を守るための検診ですから、行政や野球に関わる企業が受診の勧奨を行うのもよいのではないかと考えます。

離断性骨軟骨炎のページへ

連載記事

関連記事