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在宅医療とは?激化する高齢化社会での必要性

在宅医療とは?激化する高齢化社会での必要性
藤井 慶太 先生

栄小磯診療所 院長

藤井 慶太 先生

「人生の最期を迎える場所は病院のベッドの上」という考えが、多くの患者さん、そしてご家族に自然と根付いていると思います。しかし、在宅医療でできる範囲が大きく広がったため、この考え方は徐々に変わりつつあり、実際、在宅での最期を希望される患者さんが増加しています。

栄小磯診療所は横浜市栄区で外来診療を行なっていますが、それと共に在宅医療にも力を注いでいます。今回は、栄小磯診療所院長の藤井慶太先生に、在宅医療とはどのような医療サービスなのか、メリット・デメリット、在宅医療のニーズが増える背景を中心にお話をうかがいました。

?マークを思い浮かべている人

高齢化社会が進むにつれて、老老介護状態(65歳以上の高齢者が高齢者を介護すること)の世帯は増加しています。そういった世帯では、足を悪くしてしまったり、糖尿病高血圧などの慢性疾患が原因で動けなくなってしまうと、病院へのアクセス手段を失ってしまいます。たとえ病院が500m先にあったとしても、その状況下では医療過疎地に住んでいるのと同じ状況だと言えます。

在宅医療とは、このように病院への通院が困難になった患者さんが、自宅でも安心して治療が受けられる医療サービスの総称です。訪問診療や往診、訪問看護などもこれに含まれます。

末期がんの患者さんなどは、最期は自宅で過ごしたいという理由から在宅医療を選択される方もいらっしゃいます。その他、若くして脳に障害を負って歩けなくなってしまった方なども利用しています。

訪問診療では、事前に訪問する回数を決め、計画的に患者さんのご自宅に伺います。たとえば、月に2回、第一火曜日・第三火曜日に訪問するなどをあらかじめ決定し、それに沿って在宅で医療を行います。また、急な容態の変化にも対応できることが一般的で、365日24時間対応している医療機関がほとんどです。

往診とは、訪問診療とは違い突発的に病状が変化した際に、単発で患者さんのご自宅に伺い、診察・治療することです。たとえば患者さんから、現在、38度の熱があり腹痛も伴っている状態なので様子を見に来てくださいといった診療を求めるご連絡が入った場合に、ご自宅を訪問し診察、治療をします。

しかし、訪問診療を行っている医療機関は、救急の連絡に対応しているところが多いため、一般的には往診が含まれていると考えてよいでしょう。

高齢者が自宅でゆっくりとしているようす

栄小磯診療所では、在宅医療を在宅患者訪問診療と在宅がん医療総合診療の2つの種類に分けています。

在宅患者訪問診療は一般的な在宅医療です。栄小磯診療所では、基本的に月2回以上のペースで患者さんのご自宅を訪問し、診療を行っています。容態の安定している患者さんとは、医療の話だけではなく音楽やスポーツの話をしたりと、患者さんができるだけ楽しくリラックスして診療を受けていただけるように工夫しています。

在宅がん医療総合診療では、末期がんの患者さんを対象に、日に日に病状が変化することが予想される患者さんの治療を行っています。週に4回以上ご自宅を医師または看護師が訪問します。点滴が毎日必要な方の場合は連日伺うこともあります。

どちらのサービスでも、大きな病院などでの検査や治療が必要だと判断した場合には、速やかに近隣の病院へと紹介します。

高齢者と家族が笑っているようす

在宅での治療を選択された場合、患者さんのご家族は、患者さんが痛みで苦しんでいる姿や、せん妄(意識障害が起こり、幻覚や妄想を伴う状態)により混乱している状態を目の当たりにします。そのため、ご家族が精神的に負担を感じ、悩んでしまうケースも少なくありません。そういった場合は、患者さんだけでなく、ご家族の話し相手にもなり、不安を和らげる手助けをします。

在宅医療の最大のメリットは、住み慣れた自宅にいながら治療を受けられる点です。病院での入院は多くの場合、集団生活となります。そこで気疲れしてしまった患者さんが、在宅医療を選択されることは多くあります。

また、患者さんの体調が変化した場合、電話すれば365日24時間いつでも対応してもらえるところが多いので、何かが起きた際にも安心です。容態をお聞きし、急を要する場合にはご自宅に駆けつけ、そうでない場合は電話で、どの常備薬を飲むべきかなどのアドバイスを行います。

高齢者の患者さんは、風邪などのちょっとした体調不良でも、命にかかわることがあります。しかし、通院が不可能な患者さんには、市販の薬で我慢するか救急車を呼ぶかの両極端な選択肢しかありません。いつでも電話で相談できることは、極端な選択肢のすき間を埋める役割を果たすと考えています。

在宅医療は保険診療の範囲内で行われます。しかし、その医療費の単価が高く、1割負担としても、月2回程度の在宅医療で、1カ月約6,000円以上の治療費がかかります(保険診療分に加えて、別途交通費等の実費がかかることがあります)。通院だと月2回受診しても1,000円ほどしかかからないため、単純に両者を比較するとその差は大きくなります。

また、患者さんを若干お待たせしてしまうことがある点もデメリットのひとつです。救急車の場合、大体15分以内に来てくれることがほとんどです。しかし、往診の場合は、救急車のように、サイレンを鳴らながら車を走らせることはできません。道路が混雑している場合などは、急いでも30分以上患者さんをお待たせしてしまうこともあります。

藤井慶太先生

現在、亡くなられる方の約8割は、病院で最期を迎えています。しかし、政府は医療費削減のために、病院の病床数を減らす政策を行っており、これからベッド数は今以上に減少していく予定です。

そのため、高齢化が進み、団塊の世代が75歳以上の高齢者となる2025年には、ベッドの数が足りず、急性期の治療を終えた患者さんは、急性期医療を必要としている次の方へ病床を譲らなければならない状態となります。

その結果、長期的に入院できる患者さんの数は減少し、病院では最期を迎えられない方が増加すると思われます。そうなった場合、必然的に在宅医療のニーズが増加していきます。

また、国も、そういった状況になるということを見越して、患者さんが自宅で治療を受け、最期を看取ることのできる在宅医療を推進しています。
 

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