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在宅医療が抱える「社会的な課題」とは?

在宅医療が抱える「社会的な課題」とは?
磯崎 哲男 先生

医療社団法人小磯診療所 理事長

磯崎 哲男 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年03月18日です。

世界でも類をみないスピードで高齢化が進む日本では、「在宅医療」の必要性が高まりつつあります。高齢化が進むことで、疾病を抱える方や介護を必要とする方が増えていくと予想されるなか、住み続けてきた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けていくには、今後さらに「在宅医療」の体制を充実させていくことが求められます。

しかし、こうした世のなかの流れがある一方で、より安定的で充実した「在宅医療」を実現していくためには、さまざまな「社会的課題」が挙げられています。一体どのような課題があるのか、横須賀市の在宅医療推進に力を入れ活動される医療法人社団 小磯診療所の磯崎哲男先生にお話を伺いました。

在宅医療の促進が進められるなか、在宅医療を担う「医師の数」は不足しているといえます。こうした医師の労力が不足しているという問題は、在宅医療が抱える大きな課題だと思います。

こうした課題を解決するには、医師の数を増やすか、医師の労働力を抑えるために周りの医療従事者にサポートをお願いするといった工夫をしなければなりません。たとえば看護師にサポートをお願いし、患者さんからの訪問依頼に応じてもらう機会を増やしていくことで、医師以外の医療従事者によってできる対応を増やすことができます。

そうした医師のサポートにまわる分、看護師の負担が増えてしまいますので、また当院が行っている取り組みとしては、「看護師の患者さん対応」の仕組みの見直しをおこなうこともできます。

我々が採用しているシステムには、主治医制と同じように「主看護師制」というものがあります。これは各在宅患者さんに一人の看護師が担当看護師としてつくシステムです。毎回同じ看護師が訪問診療に同行し、患者さんの情報をしっかり把握しているメリットがあります。夜間の連絡体制は当初私が全て対応していましたが、担当する在宅患者さんが増えるにつれ、医師一人で年中無休の対応は困難となりました。 その時から主看護師にまずは連絡を受けてもらうようにしたのです。こうしてシステムを変えることによって夜間の連絡体制の維持を図りました。さらに現在は、夜間の電話連絡を最初に受ける当番をつくり、患者さんの在宅療養をサポートする看護業務を持続可能な体制へと変化しています。電子カルテ、スマートフォンなどのIT技術が向上したことにより、クリニック外にいても患者さんの情報が医療者同士で共有でき、患者さんの情報をしっかり把握した上で患者さんのところへ向かえるようになりました。

こうした情報を共有しながら効率的な医療従事者の割り振りというのも、在宅医療を維持していくうえでは非常に大切なことだといえるでしょう。

また、在宅医療にかかわるなかで感じるのは、在宅医療を利用される患者さん、そしてそのご家族の方々がもつ「医療」に対するイメージの問題です。

さきほどもお話したように、在宅医療を支える医療従事者の不足が叫ばれる一方で、在宅医療の利用者の方々がもつ「医療に対する要望」は強いと感じています。もちろん、質のよい医療を提供できるよう医療従事者が医療を提供していくことは前提としてありますが、「医療はサービスだから」といってみなさんが自身本位な依頼ばかりをされてしまうと、在宅を支える医療従事者の負担はさらに増大してしまいます。

たとえば在宅医療を利用されている方のご家族の方(息子さん)から電話があり、どうしたのかお伺いすると「母(患者さん)がベッドからずり落ちてしまったので、ベッドに戻してあげるために訪問してほしい」と話されました。

もちろん患者さんがベッドから落ちてしまったことで、患者さんがなにか負傷されていたのであれば大変なことですが、今回の場合がそういった怪我の報告はありません。また、息子さんも患者さんをベッドに戻すための力がないわけではありません。こうした状況は「ご家族の方で十分に対応できるもの」と考えられます。

そうした医療以外の状況による呼び出しに毎回応じていくと、本当に必要な方への医療が足りなくなってしまいます。このような、医師や看護師の力を借りずとも解決できる事態であっても、訪問を要請される患者さんもおり、在宅医療を担う医療従事者の負担の増大につながっている部分もあります。医療は、公共のサービスであり、なにもかもが患者さんやご家族の方々の思い通りに進むものではありません。もっと地域全体で、より質の高い医療を実現していくためにもこうした意識の問題は変えていかなければいけないだろうと感じています。

在宅医療を進めるなかで、とても重要になるのが「多職種連携」です。多職種連携とは、在宅医療にかかわる多くの職種の方々が、密に連携を取ることによって、よりよい医療をつくっていくことです。

在宅医療は、医師、看護師、薬剤師、ケアマネジャー、介護福祉士、地域包括支援センター職員、ヘルパーといった数多くの職種がかかわる医療です。このような多くの職種が連携を取って、地域ごとでしっかりと患者さんを支えていける環境を作ることが重要です。

特に在宅医療では患者さんの生活を地域で支えるために「介護」の部分が非常に大切です。

訪問診療というと基本は「医療」ですが、医療だけですべてが済むという家はほとんどありません。実際の療養現場では、患者さんの入浴や食事のサポートといった「介護」が必ず必要になります。

また、患者さんの治療にあたる際も、多職種の方々との連携が大切です。場なれしたケアマネジャーさんは在宅療養で必要なものをパッと用意していただけるので、医療がスムーズに進みます。

そのため在宅医療・在宅療養では、介護を担っていただく介護福祉士、ヘルパーさんや、地域の在宅ケアシステムをコーディネートしていただくケアマネジャーさんの力がとても重要視されます。こうした方々と医療従事者がどれほど連携体制をとれるかというところは、在宅医療の重要課題であり、地域でしっかりと組み立てていかないといけないところです。

こうした多職種連携は、一般的な病院の病棟で働く医療従事者の方々には未知の領域だと思います。

ですから「多職種連携」と一言にいっても、どうしたら実現できるのか?というところはなかなか掴めず、とくに一般的な病院ではかかわる機会のない「介護職」の方々とどのように連携をとればよいのかということはまだまだわからない部分も多いと思います。

連携の体制をつくっていくにはこうした難しさを知ったうえで、他の職種のことを理解し、歩み寄り、共に課題を解決していく姿勢がとても大切といえます。地域での結びつきをどう作っていくのか、多職種それぞれが同じ方向を向きながら考えていかないといけないでしょう。
 

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