アレルギー性鼻炎のひとつである「花粉症」は、今や誰もが認める国民的な疾患になっていますが、このアレルギー性鼻炎が数ある疾患の中でも経済損失の大きな疾患だといわれていることはご存知でしょうか。命に関わるような重篤な症状が出ることは少ないですが、くしゃみや鼻水といった症状に伴い、意欲の低下などにもつながる深刻な面もあります。この記事ではアレルギー性鼻炎について地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉科 主任部長の川島佳代子先生にお話をお聞きしました。
アレルギー性鼻炎は鼻の粘膜で起こるアレルギー反応で、侵入してきた特定の物質(抗原)を異物と判断した場合、それを無害化して身を守ろうとする反応が起こり、その結果、くしゃみや鼻水などの症状が現れる病気です。
鼻には元々、「加温」「加湿」「防塵」という三つの作用があり、これが鼻の防御作用となっているのですが、アレルギー性鼻炎の場合はこの防御作用が働きすぎてしまっている状態といえます。
アレルギー性鼻炎の代表的な症状として、以下の3つの症状があります。
そのほかにも、これらの症状が続くことで頭痛や頭重・食欲不振、また、耳や喉・目の痒みなど随伴症状が起こることもあり、倦怠感や意欲の低下にもつながります。そのため、アレルギー性鼻炎はQOL(Quality of Life:生活の質)を著しく低下させる病気といわれており、命に関わるような重篤な症状が現れることは少ないですが、社会的な問題となっています。
アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜で起こる「I型アレルギー(即時型)」といわれています。アレルギーには、I型~Ⅳ型まで4つのタイプがあり、それぞれのタイプで反応にかかわる物質や起こる症状に違いがあります。
I型アレルギーは、「IgE抗体」という抗体によって起こるアレルギー反応です。体の中に花粉やダニなどの抗原が入ってくるとIgE抗体が作られ(抗体が作られた状態を「感作」といいます)、その抗体が肥満細胞や好塩基球(白血球の1種)の細胞膜に付着します。
そして、再び同じ抗原が体内に入ると、このIgE抗体に抗原が付着し「抗原抗体反応」を起こします。この反応の際に、付着している細胞が破裂して有害な化学伝達物質(ヒスタミン、ロイコトリエンなど)を放出し、この化学伝達物質が鼻粘膜を刺激することで、くしゃみや鼻水といった症状が起きるのです。
アレルギー性鼻炎には、「通年性」と「季節性(花粉症)」の2種類があります。
それぞれアレルギー反応が起こる抗原に違いがありますが、現れる症状は同じです。
通年性のアレルギー性鼻炎は、ハウスダストなどが原因となるため、季節を問わず症状が現れます。
小さなお子さんにも発症が多く、食物抗原(卵・牛乳など)に加えて吸入抗原(ダニなど)にも感作され、複数の抗原からアレルギー性鼻炎を起こすことが多くなります。
季節性アレルギー鼻炎は、スギやヒノキが代表的な抗原で一般的には「花粉症」と呼ばれているものです。
花粉症に関しても、発症が若年化しているといわれていますが、花粉症の発症が増加した背景には、大量に植えられたスギの開花が始まったこと(スギが植えられてから20年~30年で開花し始めます)が関係しており、患者さんの多くは30代~50代と言われています。
花粉症を含むアレルギー性鼻炎は、青年期~壮年期がメインの患者層であるため、生産年齢(生産活動ができる労働力になる年齢)が侵され、数ある疾患の中でも経済損失が大きい疾患といわれています。また、一度発症すると治らないということも大きな問題のひとつといえるでしょう。
地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 耳鼻咽喉科 主任部長
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