アイカルディ症候群は、脳梁欠損・網脈絡膜裂孔・点頭てんかん(スパズム発作)という3つの症状を特徴とする病気です。アイカルディ症候群を発症していると考えられる場合、病院ではこれらの症状を確認するために検査を行い、診断されます。根本的な治療法は今のところありませんが、てんかん発作や合併症の治療や予防・管理などに取り組んでいくことが大切です。
今回は、アイカルディ症候群の検査、治療、経過について、横浜市立大学医学部の三宅紀子先生にお伺いしました。
アイカルディ症候群は、脳梁欠損・網脈絡膜裂孔・点頭てんかん(スパズム発作)を特徴とする病気です。診断の際は、この3つの症状が併発しているかどうかを調べます。
ただし、脳梁欠損と点頭てんかんはそれぞれ単独で発症する場合や、ほかの病気でもみられることがあります。そこで、個別の症状ではなく三つの症状がそろっていることに注目しなければならないため、診断されるまでに時間がかかることがあります。
脳梁欠損を調べるためには、MRI検査(磁気を使って体の断面を写す検査)などの画像検査が検討されます。
網脈絡膜異常を調べるためには、眼科的なさまざまな検査が検討されます。なかでも網脈絡膜裂孔という症状は、眼底検査で調べる必要があります。眼底検査とは、特殊な目薬により瞳孔を開かせ、目の構造を詳しく観察する検査です。
てんかんの有無を調べるためには、まずは、けいれん発作時の様子が確認されます。また、脳波検査の実施も検討されます。脳波検査とは、頭に電極をつけて脳波を記録し、脳の活動の状態を調べる検査です。
アイカルディ症候群は、多くの場合は小児科で診断されます。そのうえで詳しい検査が必要であれば、設備が整った病院に紹介される場合もあります。そのため、お子さんがアイカルディ症候群ではないかと考えられるときは、最初に小児科を受診するとよいでしょう。
アイカルディ症候群の原因は今のところ判明しておらず、根本的な治療法はありません(2018年6月時点)。そこで、けいれん発作など、実際に現れた症状を緩和する対症療法が主な治療となります。
てんかんの治療では、抗てんかん薬の投与が検討されます。しかし、アイカルディ症候群でみられるてんかんは、治療しても治りにくい(難治性)といわれています。すべての方に効果が現れるとは限らず、発作を繰り返す方が多くみられます。
また、てんかんの治療として手術療法が選択されることもありますが、アイカルディ症候群の治療としてはほとんど実施されていません。
アイカルディ症候群の原因が解明されれば、特有のけいれん発作に対する治療薬の開発などにつながると考えられています。
1965年にはじめて病気が報告されてから、国内外で積極的に研究が行われていますが、残念ながら今のところ原因の解明には至っていません。発症メカニズムについて様々な可能性を想定し、研究が進められています。
アイカルディ症候群は、治療しても治りにくい(難治性の)てんかんがみられます。さまざまな抗てんかん薬を使用しても、完全にはけいれん発作が治まらない方が多いとされています。
発達の遅れについては、重度のことが多いとされていますが、軽度の方もいて、個人差があります。
また、アイカルディ症候群に共通してみられる症状そのものが命に関わるわけではありませんが、長生きするのは難しい病気であると考えられています。しかし、世界では、30代の患者さんや、症状が軽度で40代まで生きている患者さんがいるという報告があります。医療的ケアや管理が向上していることから、少しずつ生存率が改善してきているのではないかと考えられています。
アイカルディ症候群の発症する原因は、今のところは明らかになっていません。しかし、国内でも海外でも原因を明らかにしようとする研究が行われており、日本では実際にアイカルディ症候群の患者さんを診て情報を集め、症例研究に尽力されている先生もいます。
原因が明らかになれば病状の解明が進み、新しい治療法や予防法が開発されることが期待されます。研究者の立場としては、引き続き研究に取り組み、一日も早く病気の原因を明らかにし、診断法と治療法の開発につなげたいと思っています。
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