原因
ウィスコット・オルドリッチ症候群は、WASと呼ばれる遺伝子異常によって発症する病気です。WAS遺伝子は、「WASタンパク」の名称で知られるタンパク質を作るのに重要な遺伝子です。
WASタンパクは、血液中に存在する細胞(赤血球、血小板、白血球)に広く見られるタンパク質です。WASタンパクは、「アクチン」と呼ばれる細胞内タンパク質と強調しながら、細胞の外で起きている情報を細胞の中に伝達するのに重要な役割を果たしています。
白血球は、病原体が体内に入り込んだ際に身を守る役割を担っています。白血球が正常な免疫反応を示すには、いくつものステップが必要です。そもそも病原体が体内に入ったという情報を白血球が受け取る必要があります。さらに病原体がどこにいるのかを認識することも必要なうえ、病原体がいる場所まで白血球が移動をする必要もあります。
こうした一連の情報伝達がうまくいって初めて白血球が免疫機能を発揮することができますが、WASタンパクはこの情報伝達にとても重要な役割を果たしていると考えられています。そのほかにも、血小板や赤血球にも正常に機能をするために外界との間で情報のやり取りをすることが求められますが、WASタンパクがこの点では重要な役割を果たしています。
ウィスコット・オルドリッチ症候群では、WAS遺伝子に異常が生じているため、正常なWASタンパクがつくられなくなります。その結果、血液中の各種細胞が正常活動を果たせなくなり、各細胞の機能障害に関連した症状(主には血小板と白血球)が引き起こされることになります。
ウィスコット・オルドリッチ症候群は、「X連鎖性」と呼ばれる遺伝形式を示します。男女の性別を決定する遺伝子にはX染色体とY染色体の2種類が知られていますが、この組み合わせに応じて性別が決まります。つまり、男性であれば「XY」、女性であれば「XX」です。WAS遺伝子はX染色体の上に存在しているため、X染色体を1本しか持たない男性は、異常な遺伝子を持つと病気が発症します。一方、女性の場合はX染色体を2本持つため、1本が異常なWAS遺伝子を持っていたとしても、もう片方が正常なWAS遺伝子であれば病気を発症しないことがあります。こうした特徴から、男児に発症することが多い病気です。
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