原因
オクシピタル・ホーン症候群は、ATP7Aと呼ばれる遺伝子に異常が存在することで発症します。ATP7A遺伝子は、金属の1種類である銅を体内で正常に保つために必要不可欠な遺伝子です。銅はさまざまな酵素が正常にはたらくために必須な物質であり、細胞が正常に機能するためになくてはなりません。その一方、過剰に存在すると身体に対して毒性を示すことになります。それゆえ、銅は適量で調整されている必要がありますが、ATP7A遺伝子はこの役割の一端を担っています。
オクシピタル・ホーン症候群で見られるATP7A遺伝子異常では、銅の機能調節が完全に障害を受けている訳ではなく、ある程度のレベルで銅の調整をすることが可能です。しかし、それでも銅の代謝には一定の障害は生じており、オクシピタル・ホーン症候群でみられるような症状が引き起こされることになります。オクシピタル・ホーン症候群では、銅の吸収が低下しており、さまざまな酵素障害を通して細胞に影響がおよぶことになります。なお、本遺伝子異常は、同じく銅代謝異常のひとつである「メンケス病」でも同様であり、遺伝子異常の生じ方が異なると考えられています。
ATP7A遺伝子は性染色体の異種類である「X染色体」に存在しており、オクシピタル・ホーン症候群は「X染色体劣性遺伝」と呼ばれる遺伝形式をとります。X染色体は女性では2本持つのが通常ですので、2つのATP7A遺伝子を持ちます。そのため1本にATP7A遺伝子異常を示していても、もう片方のX染色体が正常なATP7A遺伝子を持つことが多いです。それゆえ、女性では多くの場合オクシピタル・ホーン症候群の症状は発症せず、病気の保因者となります。しかし、男性はX染色体を1本しか持っていませんので、ATP7A遺伝子異常を持つと、その異常をカバーする正常なATP7A遺伝子が存在しません。それゆえ、男性の場合はATP7A遺伝子異常を持つことは病気の発症につながります。
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