概要
スタルガルト病(Stargardt病)とは、両眼の黄斑と呼ばれる部分が少しずつ障害され、視力の低下や視野の中心の見えにくさ(中心視野異常)などが進んでいく遺伝性の病気です。黄斑は、眼の奥にある網膜の中心部に存在し、ものを見るうえで最も重要なはたらきを担っています。多くの場合、小児期から青年期にかけて発症するといわれています。
黄斑の障害が年単位でゆっくりと進行する遺伝性の病気は、“黄斑ジストロフィー”と総称されています。スタルガルト病はその代表的な病型の1つです。2026年現在、スタルガルト病を含めた黄斑ジストロフィーの根本的な治療法は確立しておらず、日本では指定難病に認定されています。
スタルガルト病では、見えにくい範囲が中心視野に留まり、その周りの視野は比較的長く保たれる場合もある一方で、見えにくい範囲が拡大する場合もあります。見え方の変化に応じて、ルーペ(拡大鏡)や音声読み上げ機能などの視覚補助具を活用し、生活の質(QOL)の維持・向上を目指すロービジョンケアが検討されます。
原因
スタルガルト病は、特定の遺伝子の変化(変異)によって網膜が障害されることが原因と考えられています。
原因となる主な遺伝子と遺伝形式
スタルガルト病の主な原因は、“ABCA4”と呼ばれる遺伝子の変化です。ヒトは多くの遺伝子を、父親由来と母親由来で1つずつ、対(つい)として持っています。この病気は、対になったABCA4遺伝子の両方に変化があると発症し、どちらか一方だけの変化では発症しません。このような受け継がれ方は、常染色体潜性遺伝(常染色体劣性遺伝)と呼ばれています。片方だけに変化がある場合は発症しないため、遺伝子の変化に気付かないまま過ごしている方も少なくありません。
視力が低下する仕組み
ABCA4遺伝子の変化によって、網膜におけるビタミンAの代謝に異常が生じることがスタルガルト病の発症につながると考えられています。ビタミンAの代謝に異常が生じることにより、有害な代謝産物が産生・蓄積し、網膜が徐々に障害されていきます。
症状
スタルガルト病では、両眼の視力が少しずつ低下していきます。中心視野がぼやけて見えるようになり、文字が読みにくい、人の顔が見分けにくいといった症状のほか、色の見分けにくさ(色覚の異常)や、光を強くまぶしく感じる状態(羞明)などの症状がみられることもあります。
症状の進行速度や重症度には個人差があり、網膜の変化が黄斑を超えて広がる場合には、周囲の空間を把握したり歩いたりするための視野(周辺視野)が障害されることがあります。しかし、完全に失明することはまれといわれています。
見えにくさが続くなど、気になる症状がある場合は自己判断で様子を見ず、早めに眼科で相談するようにしましょう。
検査・診断
スタルガルト病の診断は、眼底検査を中心に、必要に応じて遺伝学的検査などを組み合わせて総合的に判断されます。また、病型や重症度を把握するために、網膜のはたらきを電気的に調べる網膜電図(ERG)が行われることもあります。
視力検査・眼底検査など
まず視力検査や視野検査が行われ、矯正視力(眼鏡などで補正した視力)の低下と、見える範囲を確認します。併せて行われるのが、眼底(眼の奥)の網膜や血管などの様子を観察する眼底検査です。眼底の写真を撮影し、黄斑の萎縮と、その周囲に黄色斑と呼ばれる特徴的な斑点が広がる所見が確認されることがあります。
そのほか、網膜の断面を撮影して構造を調べる光干渉断層計(OCT)や造影剤を用いた眼底写真検査が、診断の参考として行われることもあります。
遺伝学的検査
医師が原因遺伝子を調べる必要があると判断した場合には、遺伝学的な検査が行われることがあります。2023年に保険適用された遺伝子パネル検査を用いて、ABCA4遺伝子の変化を調べて診断や治療につなげることが検討されています。ただし、この検査はどの医療機関でも受けられるわけではなく、遺伝カウンセリングの体制を備えた専門的な施設で行われています。
治療
スタルガルト病に対して、遺伝子治療や薬物療法などの治療法の研究開発が国内外で進められていますが、2026年時点では根本的な治療法は確立されていません。そのため、残された視機能をできるだけ保ち、QOLの維持・向上を目指すロービジョンケアが提供されています。
遮光とロービジョンケア
光をまぶしく感じる場合、遮光眼鏡や日傘などによる遮光が役立つと考えられています。また、見えにくさに対しては、さまざまな補助具やスマートフォン、タブレットPCなどを活用して、学業や仕事での不便を軽くするロービジョンケアが行われます。ロービジョンケアの例としては、眼鏡やルーペ、拡大読書器、照明の工夫、スマートフォン・タブレットPCによる音声読み上げ機能や文字の拡大などがあります。
日常生活上の注意点
スタルガルト病はビタミンAに関連した代謝の異常が背景にあるため、ビタミンAを過剰に取ると網膜への負担が強まる恐れがあるとされています。市販のサプリメントを選ぶときも成分表をよく確認し、判断に迷う場合は医師に相談しましょう。
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