概要
ナルコレプシーI型は、日中の耐え難い眠気や、感情の動きをきっかけとして突然体の力が抜ける情動脱力発作(カタプレキシー)を特徴とする睡眠障害です。食事中や会話中などの場面でも強い眠気が生じるナルコレプシーは、I型とII型に大きく分けられます。I型では情動脱力発作のほか、脳脊髄液中でオレキシン(ヒポクレチン)という日中の覚醒を維持する神経伝達物質の濃度の低下がみられます。対してII型では、情動脱力発作やオレキシン濃度の低下はみられません。
ナルコレプシーI型が疑われる場合、主に日中および夜間の眠気や睡眠の状態を調べる検査が行われます。診断後は、日中の眠気に対して、一般的に中枢神経刺激薬(中枢神経系*を刺激して眠気を抑える薬)による治療が検討されます。規則正しい生活習慣も症状の改善に有効だといわれています。
*中枢神経系:脳と脊髄からなり、全身の神経から得た情報を処理し体の各器官に指令を出す役割を持つ。
原因
ナルコレプシーI型が発症する仕組みは完全には解明されていません。しかしナルコレプシーI型では、脳脊髄液中のオレキシンの量が非常に少ないことが分かっています。オレキシンは、私たちが日中活動的に過ごせるよう、覚醒した状態を安定的に維持する役割を担っている物質です。オレキシンが欠乏することで、睡眠と覚醒を調整する機能のバランスが崩れ、日中の我慢できない眠気や情動脱力発作などの症状が現れると考えられています。
近年では、免疫細胞が誤って自分自身の細胞や組織を攻撃する現象(自己免疫機序)により、オレキシンを作っている神経細胞が破壊されるために症状が生じるという仮説が有力だといわれています。また、白血球にはHLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる血液型があり、そのうちの特定の型がナルコレプシーの発症に関連する可能性もあると考えられています。
症状
ナルコレプシーI型の主な症状として、日中に繰り返し現れる耐え難い眠気と情動脱力発作が挙げられます。睡眠麻痺(金縛り)や、入眠時幻覚などがみられる場合もあります。
睡眠発作
夜間に十分な睡眠をとっていても日中に突然耐え難い眠気が起こり、短時間居眠りする睡眠発作が典型的な症状です。睡眠発作は、食事中や会話中などの通常は眠らないような状況でもみられます。5~15分程度眠った後、すっきりとした感覚で目覚める傾向があります。
情動脱力発作
喜び、笑いなど強く陽性の感情が動いたときに体の一部が脱力します。主に膝や腰などで生じ、ほとんどの場合は数秒程度で治まるといわれています。ナルコレプシーI型に特徴的な症状です。
そのほかの症状
就寝中に体が動かせなくなる睡眠麻痺(金縛り)や、幻視・幻聴のような鮮明な夢が生じる入眠時幻覚などが、眠るとき、あるいは睡眠から目覚めるときに現れることがあります。また、夜間の眠りを長時間維持できなくなり、頻繁に目が覚める熟眠障害が生じる場合もあるといわれています。
検査・診断
ナルコレプシーI型の検査には、主に終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と反復睡眠潜時検査(MSLT)があります。また、補助診断として脳脊髄液中のオレキシン濃度測定検査やHLA検査が検討される場合もあります(いずれも2025年時点では保険未収載)。睡眠発作が3か月以上ほとんど毎日続き、さらに情動脱力発作の症状がある場合は、検査結果と併せて総合的に検討されたうえでナルコレプシーI型と診断されます。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)
終夜睡眠ポリグラフ検査は、脳波、眼球運動、筋電図、鼻と口の気流、心電図、酸素飽和度、胸部と腹部の呼吸運動などを測定する検査です。検査は一晩にわたって実施され、睡眠の状態や睡眠時無呼吸症の有無を調べます。通常、1泊2日程度の入院が必要です。
反復睡眠潜時検査(MSLT)
日中の眠気の程度や入眠の状態を調べる検査で、終夜睡眠ポリグラフ検査の実施後に続けて行います。暗く静かな室内で朝から2時間おきに4~5回行われ、眠りに入るまでの時間や入眠15分以内のレム睡眠*の出現回数を測定します。
*レム睡眠:しばしば夢をみる眠りのやや浅い状態。睡眠中、眠りの深い状態(ノンレム睡眠)と交互に出現する。
脳脊髄液中のオレキシン濃度測定検査
脳脊髄液を採取し、オレキシンの濃度を測定します。ナルコレプシーI型では、脳脊髄液中のオレキシンの濃度が非常に低い値を示すことが分かっています。
HLA検査
白血球のHLAを調べる検査です。ナルコレプシーはHLAの特定の型が発症に関連すると考えられ、特に日本人の場合、発症者のほとんどがDRB1*1501やDQB1*0602という組み合わせの型を持っています。ただし、同様の型はナルコレプシーでない人にも10%程度存在するため、この検査だけで確実にナルコレプシーの診断ができるわけではありません。
治療
現在、ナルコレプシーI型では対症療法として、主に薬物療法が行われています。睡眠発作に対しては、日中の眠気を抑える中枢神経刺激薬が用いられます。情動脱力発作に対しては、抗うつ薬の使用が検討されることもあります。近年では、ナルコレプシーI型そのものの治療薬として、オレキシン濃度の低下に対処するオレキシン受容体作動薬の開発も進められています。
薬物療法に加えて、規則正しい生活を送ることも大切です。夜間に十分な睡眠をとることや、可能な範囲で計画的に仮眠の時間を確保することが推奨されます。
以前は精神科疾患に区分されていましたが、オレキシンの機能低下が原因と分かり、脳神経内科への区分を経て、現在は睡眠・覚醒障害の区分に変わりました。そのため精神科疾患が主な対象である自立支援医療制度からは除外され、医療費の助成を受けられない心配が出てきています。
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