概要
リンパ管炎とは、主に感染症によってリンパ管に生じた炎症を指します。足や腕などの皮膚から病原体が侵入し、蜂窩織炎などの皮膚感染症に合併する形で発症します。リンパ管炎は細菌性(細菌による感染症)が代表的で、特に溶血性連鎖球菌によるものが多いです。
リンパ管炎を発症すると、皮膚の発赤や痛み、発熱などの症状が生じます。またリンパ管とつながっているリンパ節の腫れを起こすことも多いです。細菌感染症によるものが多いため、細菌(特に溶血性連鎖球菌)に対して効果のある抗生物質による治療が中心となります。リンパ管炎を発症した際には早期に医療機関を受診し、適切な診断にもとづいた治療が重要です。
原因
血液は心臓から拍出された後、動脈、毛細血管、静脈を介して全身へと運ばれます。一部の血液成分は毛細血管を中心に、細胞の間に沁み渡る構造になっています。細胞の間に滲み出た液体成分はリンパ管へと戻る仕組みになっており、全身の血液循環へと還流されます。リンパ管は皮膚の深く、静脈の近くを並走しています。滲み出た液体成分はリンパ管に入り込んだ後、支配領域に属するリンパ節へと運ばれ、最終的には胸管と呼ばれる管を通して血管内へと戻ります。
皮膚は細菌を体内に侵入させないバリアとしての機能を持っています。傷口があると細菌の侵入が生じやすくなるため、リンパ管炎を発症することがあります。またリンパ管は全身の血管や血液成分との往来があるため、別部位で生じた感染症がきっかけとなりリンパ管炎を発症することもあります。
リンパ管炎を引き起こす病原体としては溶血性連鎖球菌がよく知られていますが、他にも黄色ブドウ球菌、リケッチア、ノカルジア、ヘルペスウイルス、リーシュマニア、非定型抗酸菌、Burkholderiaなどによるものもあります。リンパ浮腫を伴っているとリンパ液の流れが停滞しがちなため、リンパ管炎発症のリスクにつながります。
症状
リンパ管炎を発症すると、炎症が生じているリンパ管の走行に一致してスジ状に皮膚の発赤や痛み、腫脹が生じるにようになります。
また、リンパ管は末梢から中枢に向かう途中でリンパ節を経由するため、炎症が生じている領域に一致するリンパ節が腫れることもあります。特に特に鼠径部(太ももの付け根)や腋窩などのリンパ節の腫れを確認することが多いです。
リンパ管炎では、皮膚感染症のひとつである蜂窩織炎や皮膚潰瘍、壊死などに至ることもあります。またリンパ管炎が慢性化すると、炎症部位が硬くなります。リンパ管炎ではこうした皮膚症状以外にも、全身性の炎症性反応を反映して発熱や悪寒、全身倦怠感などを見ることもあります。またリンパ管炎では病原体が全身に広がるため敗血症を合併することもあります。
検査・診断
リンパ管炎が疑われる場合には、リンパ管に並走する形で発赤などの異常や鼠径部などリンパ節に腫れがないかなどを観察します。また、リンパ管炎では炎症反応が生じているため、血液検査を実施して白血球やCRPなどの炎症所見を調べることもあります。
治療
リンパ管炎は溶血性連鎖球菌によって引き起こされることが多いため、基本的には本細菌に効果のある抗生物質(ペニシリン系やセフェム系など)で治療します。しかし抗生物質を使用しても症状が改善されない場合には、溶血性連鎖球菌以外の可能性を考え再度検査等を実施して原因を特定します。
炎症部位を動かすと病態の悪化につながるため、なるべく安静にする以外にも患部を冷やすなど炎症を抑える処置が重要です。また、皮膚の傷をきっかけとしてリンパ管炎が発症することも多いため、怪我をしていればその処置も行います。
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