治療
リンパ管腫症に対する標準的治療は、まだ確立されていません。そのため、各病変に対する対症療法が行われます。具体的な対症療法として、手術、薬物療法、放射線療法などが挙げられます。
リンパ管病変が一部分の場合は手術による切除や硬化療法(リンパ管内に薬剤を注入して内腔を固め、病変を縮小させる治療)が行われますが、多くの場合全身に病変が生じるため、根治が難しいのが現状です。
手術が困難な病変に対しては薬物療法や放射線療法が行われます。薬物療法においては、これまでインターフェロン、プロプラノロール、ステロイド、抗がん薬(ビンクリスチン)などが使用されてきましたが、効果が限定的で保険適用外でした。しかし、2021年に日本において、シロリムスが新規治療薬として世界で初めて保険適用となり、大きな注目を集めています。
放射線療法では、放射線を照射してリンパ管病変の増殖を抑える治療が実施されます。しかし、治療効果は限定的であり、特に小児での晩期合併症(治療終了後に年月が経過してから現れる合併症)が懸念されるため推奨されていません。
そのほか、リンパ液の漏出による栄養(アルブミン)や免疫グロブリン(抗体)の欠乏に対しては、アルブミン製剤やガンマグロブリン製剤の補充、高たんぱく食の摂取、高カロリー輸液の点滴などによる栄養療法が行われることがあります。
種々の治療によって根治した症例は少なからずありますが、一般的に治癒率は低く、ほとんどの場合長期にわたって診療が必要です。また、乳び胸(リンパ液が胸腔内に貯留する状態)や心嚢水(心臓を包む心膜腔に液体が貯留する状態)などの胸部病変があると予後はあまりよくないといわれています。
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