概要
上腕骨内顆骨折とは、肘の関節の内側に位置する上腕骨内顆と呼ばれる部位に生じた骨折で、まれな骨折です。
上腕骨内顆骨折は、転倒などで肘に対して直接的な外力がかかった場合や、肘を過度に使用した場合などに起こることがあります。治療では、骨のずれがあまり大きくない場合には、徒手的に整復を行った後に局所の固定を行います。
原因
上腕骨内顆骨折は、主に二つの受傷起点をきっかけとして発症します。
一つ目は、転倒などで肘に対して直接的な外力がかかる場合です。急激な外力をきっかけとして発症する骨折という観点からは、肘を伸ばした状態で手をついたときにも、上腕骨内顆骨折が生じやすいです。
二つ目は、肘を過度に使用した場合です。上腕骨の内顆に対しては多くの筋肉が付着しており、腕や手首の動作に関連して大きな力がかかりやすい構造になっています。そのため、野球や体操競技などで手首を曲げる動作を何度も繰り返すと、上腕骨内顆に大きな力がかかり、結果として上腕骨内顆骨折の発症に至ることがあります。
上腕骨内顆には、さまざまな筋肉や腱などが付着しているため、骨折が生じたときに骨折片がひっぱられてしまい肘関節の脱臼を生じることもあります。
症状
上腕骨内顆骨折を生じると、骨折部位に一致した痛みを生じるようになります。肘関節を動かすと痛みが増強するため、運動が制限されます。痛み以外の症状として、局所の腫れや皮下出血などもみられます。
上腕骨内顆骨折では、肘関節の脱臼を合併することもあります。また、骨折で生じたかけらが、ときに関節の中に入り込んでしまうこともあります。この際には、肘関節の可動性が著しく障害を受けることになります。神経障害を合併して、手のしびれや運動障害をみることもあります。
骨折の経過中に、内反肘と呼ばれる肘関節の変形を来すこともあります。軽い変形程度であれば特に大きな支障はありませんが、変形が強い場合には曲げ伸ばしが大きく障害されて日常生活にも影響を生じることがあります。
検査・診断
上腕骨内顆骨折が疑われる場合には、局所(痛みなどの症状が生じている部分)のレントゲン写真を撮影します。レントゲン写真を撮影することで、骨のずれや関節の脱臼などを同時に評価します。上腕骨内顆骨折では、骨のずれの程度により手術の要否などの治療方針が決定されるため、診断のみでなくこれらを評価することは大切です。
治療
上腕骨内顆骨折では、骨のずれを中心に評価し治療方針を決定します。骨のずれがあまり大きくない場合には、徒手的に整復を行った後に局所の固定を行います。経過にもよりますが、1か月程度局所を固定すること になります。
骨のずれが大きく徒手的な整復が困難な場合には、手術にて治療することになります。経過中に内反肘を生じて支障が生じている場合にも、手術的な治療介入を行うことになります。
骨折の治癒過程においては、筋力の低下や肘関節の可動域制限が出てくることも懸念されます。治療経過をみつつ、適切なタイミングでリハビリテーションを行うことも大切です。この際、自己流のリハビリテーションをすることで治療が遅れてしまったり、不要な合併症を来したりすることもあります。そのため、専門家の指示のもと、治療に当たることが大切です。
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