概要
上腕骨顆上骨折とは、上腕骨の遠位部において生じる肘の骨折の一つを指します。上腕骨顆上骨折は子どもに起きやすい骨折ですが、成人でも交通外傷やスポーツなどで生じることもあります。
上腕骨顆上骨折では患部近隣を走る神経や血管も損傷してしまう可能性があるほか、適切な治療が施行されない場合、骨が変形したまま癒合することもあります。骨折転位の程度に応じて保存的療法か手術で治療するかを決定します。
原因
肘関節は、上腕骨の遠位部、前腕の尺骨、橈骨で構成されています。上腕骨の骨折のタイプはいくつかありますが、上腕骨顆上骨折は上腕骨の遠位部、関節包の外で生じるものを指します。
上腕骨顆上骨折は子供に多い骨折です。これは、子どもは動きが活発なものの運動機能が完全に発達していないため、転んだとき肘を延ばしたまま地面に手を着いたり、鉄棒や雲梯などから転倒・落下したりする機会があるためと考えられています。
大人が上腕骨顆上骨折を起こす原因としては、交通事故、高所からの転落などがあります。また近年ではスノーボード中の転倒によるものも増加しています。高齢化によって骨粗しょう症の方の割合が増えたため、階段や段差につまずいて転倒したことで骨を折ってしまう方も増えています。
症状
上腕骨顆上骨折を起こすと、強い肘の痛みや腫れのほか、骨が折れた部分に変形やアザなどの変化が生じます。
骨折による腫れが強い場合、局所の循環障害を引き起こし、前腕部の筋肉への血液が障害され、指が変形して固まってしまうフォルクマン拘縮を合併することがあります。骨を正常な位置に戻さないまま治癒してしまうと、前腕部が外向きに変形する外反肘や、内向きに曲がった内反肘となり、骨折する前よりも肘関節の動きが制限されてしまいます。
また、このような変形には尺骨神経障害も合併することがあります。
検査・診断
肘の痛みやアザなどにより上腕骨顆上骨折が疑われる場合、単純レントゲン写真を撮影して問診結果などを考慮したうえで総合的に判断します。子どもの上腕骨顆上骨折は肘内障という肘の病気と間違えられやすいですが、これは腫れの程度や痛みの持続時間,単純レントゲンや超音波検査といった画像検査の結果によって鑑別します。
治療
上腕骨顆上骨折では、発生直後の応急処置として
- Rest:安静
- Icing:冷やす
- Compression:圧迫
- Elevation:挙上(骨折部位をなるべく心臓より高く上げること)の4点が重要になります。
特に子どもは患部がひどく腫れてしまうため、骨折かもしれないと思ったら患部を冷やして痛がらない範囲で腕を心臓より高く上げるようにしましょう。骨がそれほどずれておらず血管や神経の損傷がない場合には、保存的療法を選択します。骨のずれが中程度なら、徒手整復(手を使い皮膚の上から骨や関節を整復する手法)をした後にギブスなどで固定して患部の安静を保ち、骨が癒合するまで経過観察を行います。
血管損傷がある場合や変形の程度が強いなど重症の場合には、血行再建術や鋼線を用いて骨を正しい位置に固定する手術が必要です。
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